ヨコハマグランドインターコンチネンタルホテル宿泊記2021(2)・秋深まるクラブルーム、新しいラウンジと変わっていくもの

  • 2021年11月19日
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ある日の昼、今日は大きな会議があるようで随分と混み合っているホテルのロビー。紀尾井町のホテルニューオータニ。オールデイダイニングのSATSUKIでパートナーと待ち合わせて昼食を取っていました。お互いに午後の仕事前のランチタイム。八穀米に合わせた豆乳ベースに薬膳の入った少し辛めのルゥをかけた新東京カレー。悩ましいことは尽きないけれども、束の間の息抜きのひととき。

今日は僕は横浜に泊まることにするよ。今度はきっと一緒に泊まりに行こう。そんなことを話してからやや足早にニューオータニをあとにして、横浜へと車を走らせます。桜木町を過ぎたあたりで、夏に彼女と一緒に泊まりにきたときのことを思い出していました。夏から秋にかけて、我々はお互いにちょっとした心の距離が生まれましたが、少しずつあのときの感覚を取り戻してきているような気がします。

みなとみらいの街も段々と最終的な完成形に近づいてきました。ホテルに限定すれば、来年にウェスティンができて、そのあとにフォーシーズンズと向かい側にヒルトンができたところでひと段落でしょうか。昭和、平成から令和へと30年以上の時間をかけてゆっくりと大きくなってきたこの街。色々な思い出がここには織り込まれています。

本日の滞在先であるヨコハマグランドインターコンチネンタルホテルに到着。クラシカルな出立ちのバレーパーキングのスタッフに鍵を預けてチェックイン。このホテルの開業以来のイタリア料理店「ラ・ヴェラ」が閉店し、新しいクラブラウンジとなっていました。外光が差し込む大きな窓から同じ系列のPier8や大きな観覧車コスモクロックも見えて、それなりに多くのゲストで賑わっていました。

雰囲気は決して悪くはありませんが、個人的には以前の狭いラウンジが隠れ家的な感じがしてとても好きだったので、ちょっと名残惜しい気もしました。ホテルも変化していくものです。ウェルカムドリンクのトニックウォーターとりんごを使ったモクテルを頂いて、数分でラウンジをあとに客室に向かいました。

今日の部屋はクラブインターコンチネンタルルーム。深い青と濃い色の木目という落ち着いた雰囲気に、客船での船旅を連想させられる雰囲気をもった客室です。個人的にはひとりで泊まるときに最も落ち着くサイズ感です。デスクライトが中途半端で使いにくいことと夜の照明がやや暗いことを除けば特に不満はありません。

午後の日差しが差し込んできて眩しかったのでカーテンは閉じておきました。外出して、ターンダウンが終わったこの部屋のカーテンを開ける瞬間が好きなのです。

今日は夕方から関内の方で仕事。少し資料を整理したいと思っていたところで、ふと思いついたのが、28階の旧クラブラウンジ。いまはフリースペースとして使われていました。誰もいない静かな空間。以前フードプレゼンテーションに使われていたところにはコーヒーマシンが置かれていました。コーヒーを片手にしばらく持ち込んだPCで作業していました。

こちらの方がクラブルームとのインテリアの雰囲気もあっていて、やはり好きだな、、と回想します。

そうこうするうちに陽も傾きかけてきました。本当に日が短くなったものだとしみじみ思います。今日はカクテルタイムはパス。クイーンズスクエアを抜けて、みなとみらい線で関内方面に向かいました。

ホテルに戻る途中にふと夜風に触れながら歩きたくなって、外に出るとみなとみらいはクリスマス前のイルミネーション。街路を歩くカップルの姿が目立ちます。スーツ姿の私は浮いていたかもしれません。なんだか幸福なあたたかい雰囲気と、吹いてくる秋の夜の海風の組み合わせが私を淡い気持ちにさせて、切なさと心地よさが奇妙に合わさったような感覚になります。

チェックインしたときには賑わっていたホテルのロビーも夜はとても静か。この静寂の雰囲気が好きです。幼い頃によくここに泊まりにきたときのことを思い出しながら、ロビーを少し歩いて部屋に戻ります。クラシカルともコンテンポラリーとも違うバブル期独特の重厚感ある豊かな雰囲気。このような空間にはクリスマスツリーがよく映えるように思います。

部屋に戻って、濃青色のカーテンを開いて…コスモクロックとみなとみらいの夜景。やはり私は横浜の街並みが好きです。この部屋から眺めるのは特に良いものです。惜しむらくはこの感動を共有する人が今夜はいないということ。先ほど通ってきたイルミネーションのきらきらした通りが冷えた窓の下の方に見えました。

バスルームはさすがに古さを隠せません。しかしこの部屋タイプにはシャワーブースが付いています。インターコンチネンタルではお馴染みのアグラリアの上品で爽やかな香り。そして忘れてはならないのが、このホテルのマリンノートのバスソルト。綺麗な水色のバスソルトを湯船にさっと入れると、ウェットエリアに広がる懐かしい匂い。

海のそばのこのホテルに泊まるのはいつも楽しみでした。遊び疲れてお風呂に入るときに、このバスソルトを入れると、非日常の良い匂いがして、なんだかとてもうきうきしたものです。今日も仕事から疲れて帰ってきて、あの日と同じ海の匂いを感じています。

シャワーを浴びて、きりっと冷やしたミネラルウォーターを飲みながら再び外を眺めます。そうそう、あの頃は、コスモクロックがもっと大きく見えたものでした。それは私が今よりも小さかったせいもありますが、もうひとつは距離の問題。以前この大きな観覧車は現在のベイホテル東急(当時はパンパシフィック)の正面にあったのでした。

私のある知人が「パンパシのスイートに泊まるとコスモクロックの客と目が合ったんだよね」と言っていたことを思い出しました。北仲エリアも新港地区も随分と変わったものです。

明日も朝は早い。イルミネーションが消えてしばらくして、私も部屋の明かりを消して寝ることにしました。

ひとりで泊まるときはカーテンを開けて寝ることが多いのです。今朝は雲の帯がならんだ美しい朝焼けに目を覚ましました。なんだか横浜にちなんだ夢を見たような気がしましたが、身支度を整え終えることにはすっかり忘れてしまっていました。

朝食はクラブラウンジにて。ブリオッシュフレンチトーストにバニラアイスを添えたものいただきます。朝一番だったので人数はまばらでしたが、徐々にゲストの数も増えてきたようでした。港の朝の光景をコーヒーを飲みながらゆったりと眺めることができる。そのことだけでもここに泊まる価値があるように思えました。

桜木町あたりで今日の仕事を済ませて、ホテルに戻ってきました。部屋に戻る前にふと思い立ってエレベーターホールの後方にある通路から外を眺めてみました。あぁ、まだこの空間は残ってたんだ。妙に過去の記憶がよみがえってくる滞在です。そう、この場所にはかつて屋外プールがあったのでした。海に面していることもあって、潮の匂いと石油の匂いが混ざったような独特の港の匂いや音。それを感じながら熱い日差しの下で泳ぐのはなんとも気持ちのよいものでした。今ではこのホテルを模したオブジェが置かれているだけになってしまいましたが、なんとなく当時の面影を感じることができました。

夕方くらいにチェックアウト。バレーパーキングの車の出庫を待つ間に少しだけホテルの裏側へ。桟橋に浮いているピア21は昔のままでした。車で来てなかったらここから船で横浜駅に向かうのもまた楽しいものです。

今回はひとりだったこともあり、過去のさまざまな思い出と出会う滞在となりました。変わっていくみなとみらいの街の中で、このホテルも徐々に変わってきて、これからも変わっていくこと、それをとても強く感じた滞在でもありました。しかし注意深く見てみるならば、変わらないものもきっとあることでしょう。

あたたかい記憶を心にあれこれと浮かべながら、横浜をあとにしました。車の窓を開いたらどこかで船の汽笛の音が聞こえました。

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