インターコンチネンタル横浜Pier8 宿泊記〜潮風感じるベイビュールームとハンマーヘッドからのシティビュー

  • 2020年2月11日
  • 2020年6月24日
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海に近いホテルというのは数多くありますが、潮風を全身に感じられるようなホテルといえば、おそらく海岸やビーチに面したリゾートホテルを想像されるのではないでしょうか。都会というのは、えてして、雑然としていて(それが魅力でもありますが)、およそ開放感とはかけ離れた場所のように思われます。しかしここインターコンチネンタル横浜Pier8(ピア8)は、その矛盾するような条件を見事に調和させている珍しいホテルだと思います。

雑然とした都市の景観と潮風の開放感。その両立を実現しているのは、このホテルの立地。

そう、このホテルは埠頭の上に立地しているのです。もともと港湾機能を担っていた埠頭、特にその客船ターミナルとしての機能を残しつつ、そこに高級ホテルを入れてしまうという発想。横浜のみなとみらい地区からも程近い新港ふ頭に新しくオープンした客船ターミナル「横浜ハンマーヘッド」の中には、ローカルなお店と並んで、IHG系の上位ブランドである「インターコンチネンタル」が入居することになりました。今回はまだ開業して日の浅いこのホテルのリポートをしてまいりましょう。

ちなみにこの「ハンマーヘッド」の名前の由来は、この埠頭の先端に位置する場所にある、昔ながらのカンチレバークレーンの形状から取っています。1914年製のこの旧式の大型クレーンは土木遺産にも登録されているので、それを見学がてら、海の向こうへの旅を想像しながら散策するのもまたよいものです。

チェックイン

今回はJR桜木町駅から徒歩でホテルに向かいました。みなとみらいの街並みを眺めながら、約15分くらい歩くと、新港ふ頭地区にたどり着けます。ちなみにホテルまで桜木町駅前からシャトルバスも出ています。また自動車利用の場合にはバレットパーキングのサービス(¥2,000)もありました。

もっとマニアックなチェックインをしたい場合は、横浜駅から水上バス「シーバス」を利用して、赤レンガ倉庫まで乗船。そこから数分歩くのも悪くありません。

エントランスはこじんまりとして地味です。さらに入場するためにはこのエントランスでロックを解錠しなければならず、セキュリティが確保されているという安心感があります。手前側にはベルデスクのスタッフが常駐しており、日中はゲストが近くとにこやかにドアを開けてくれます。

どこのホテルでもベルデスクは「顔」になりますし、ホテルで最初に出会う人である可能性が高いものですが、ここインターコンチネンタル横浜ピア8のベルスタッフのレベルは非常に高く感じました。

エントランスから入るとこのような螺旋階段。地味なエントランスとは対照的な非常に躍動感のあるダイナミックなデザインだと思います。この上にはロビー・フロントエリアがあり、エレベーターで上がることもできますが、このモダンでダイナミックな階段を眺めてみて頂きたい。インターコンチネンタル別府にIndigo箱根などリゾートの開業。そして都市型のキンプトンを新宿に開業させる計画もあるIHGですが、近年の尖ったデザインセンスを垣間見られ、このホテルチェーンの今後の展開に対する意気込みを感じ取れることでしょう。

ロビーエリアにはこのホテルのメインダイニング・バーの「Larboard」があります。ウッディな床材にシーリングファン。カバーがかかってしまってるのがやや残念ですがピアノも置かれており、全体的なインテリアコードは「航海」を感じさせるものになっています。

このような世界観の作り方が非常にうまく、感心してしまいました。個人的には、ホテルブランドには「W」や「リッツカールトン」を抱えるマリオット系がこうした独特の世界観を作りあげていくのに長けている印象があり、IHGはどちらかというと、良くも悪くも質実剛健なホテルデザインというイメージがありましたが、近年の同系列のホテルを見ていると、その印象も過去のものになりつつある気がします。

さてチェックインは、奥の方にある海の見えるソファーに座って行います。このあたりも非常に落ち着けて良いものです。奥にシーサイドデッキもあり、温暖な季節であれば気持ちよさそうです。

インターコンチネンタルアンバサダー特典

なお私はこのロビーに入る前までは、IHGのロイヤルティプログラムである「インターコンチネンタルアンバサダー」を更新(約¥20,000)するかどうか迷っていたのですが、このチェックインまでの一連の流れの中で心が決まりました…おそらく今年は昨年よりももう少しIHG系列のホテルに滞在する機会が増えるでしょう。

インターコンチネンタル横浜Pier8のアンバサダー特典

  • 1ランク上の客室へのアップグレード(確約)
  • 16:00までのレイトチェックアウト
  • ¥2,000分のホテル内飲食クレジット

この内容をみるだけでも、なかなかの充実度だと思います。なお私は今回、最もスタンダードな客室である「デラックスベイビュー」だったので、アップグレード対象の客室は「デラックスガーデンサイド」ということになります。しかしフロントのスタッフに聞いてみると、「ガーデンサイド」は部屋はかなり広いのだけれど、眺望は人工庭園なので、あまり面白くないかもしれない、とのこと。そこで私はアップグレードを断って、元々予約していた客室にしてもらいました。

その代わりとして、フロントのスタッフから「IHGリワード10,000ポイント」か「¥5,000分の追加の飲食クレジット」のどちらかをプレゼントするとの提案をもらいました。私は後者を選びました。さらに客室についても、カテゴリーは同じだけれど、眺望が抜群によい部屋をアサインしてくれました。こちらの要望以上のことをしてくれるということは、ホテルの側の善意(それゆえあえて望むことはない)によるものですが、このような歓待を受けると、やはりそのホテルのことを好きにならずにはいられないものです。

客室:デラックスベイビューダブル

このホテルはハンマーヘッドの客船ターミナルの上層階部分を一周するように作られていて、4方向に面した客室があります。今回は海に面していて、さらにみなとみらい側の景色も眺められる客室にアサインしてもらえました。

リビング・ベッドエリアはこのような雰囲気。ロビー・フロントエリアとも共通する「航海」を感じさせるインテリアコードになっています。球体のルームランプがアクセントを添えます。照明の数も十分にあり、夜でも十分な明るさが確保されているところも好ましいところです。

なおビジネスデスクはありませんが、中央に置かれた円形のテーブルは大きさもそれなりにあり、使い勝手は悪くありません。テレビも大型のものが設置されていて、ブルーレイプレーヤーなどの貸し出しも行っています。そのほかにインルームダイニングやハウスキーピングの要望もテレビ画面上で行えるようになっていました(ただし細かい注文は電話で行う方が良いでしょう)。

またベッドに関しても、柔らかすぎず硬すぎずというバランス感覚に優れたものであり、寝心地はそれなりに良いものでした。

この部屋の奥の方はこのようになっています。フルハイトウインドウの向こう側には海とみなとみらいの景色が展開します。またこの窓は両側に全開にすることができるため、ここの部分をベランダのようにして利用することもできます。潮風を感じながら、横長のソファに座って寛ぐ時間というのは非常に贅沢なものだと思います。

右側のトランク風のデザインがしゃれているアーモアの中にはコーヒーメーカーや紅茶セットなどのほかに冷蔵庫が設置されています。

ミネラルウォーターやコーヒーなどがコンプリメンタリーなのは一般的ですが、こちらのホテルではこれらソフトドリンクも無料で提供されています。このようなサービスはとても嬉しいものです。先ほどの海に面した窓辺に座り、お風呂上がりに海風にあたりながら、みなとみらいのネオンを背景にトニックウォーターを飲むというのは、まさにこのホテルならではの楽しみ方ではないかと思います。

ベイシンエリアまでも全体的なインテリアコードは貫徹されています。タイル調の壁にかけられた鏡がなんともおしゃれです。またバスタオルのかけ方も大胆かつ機能的なものです。シンクはひとつだけですが、使い勝手はなかなか良好だと思いました。

バスルームは独立式となっていて、レインシャワーとハンドシャワーもしっかり備え付けられています。このあたりも最新の高級ホテルの文法に則っていると言っていいでしょう。また窓ガラスで仕切られているため、遠くに見える景色をみたり、テレビや映画をみたりしながら、バスタイムを楽しむこともできるようになっています。もちろんスイッチひとつで曇りガラスにすることもできます。水圧についても特に申し分のない十分なものとなっていました。

なおバスアメニティはインターコンチネンタルではおなじみの「アグラリア」のものです。レモンヴァーベナの爽やかな香り。個人的にはここのハンド&ボディーローションの香りは、嫌いではないけれど好きではないという程度ですが、使用感は悪くないと思っています。

最後にエントランス付近ですが、ここに開放式のクローゼットスペースがあります。このような配置になっているのは、例えばハイアット系列だと、「ハイアットセントリック銀座東京」などがそうですが、近年のブティックホテルなどには比較的多い形式かもしれません。

ちなみにこのホテルの難点のひとつとしては、クリーニングサービスの時間帯設定があまり柔軟ではないということです。これもハイアット系列の例えですが、時間帯に限らずにエクスプレスサービスを利用すると概ね4時間程度でランドリー・ドライクリーニングを行ってもらえます。しかしこちらのホテルではクリーニングの時間帯が決まってしまっているため、例えば、夜に帰ってきて、朝一で仕上げて欲しいというような要望には応じられないようです。もちろんこれは些細な点であり、気にならないといえば気にならない程度のことですが、私はビジネス利用だったために若干の不便を感じました。

ただ、もっとも、このホテルがどこまでビジネス需要があるのかというのは気になる点ではあります。もしかしたら客室にビジネスデスクが置かれていないことからも、どちらかというと、観光利用が主眼に置かれているのかもしれません。

ホテルを堪能する

せっかくなので、空いている時間にこのホテルの中をもう少し散策してみることにしました。

エレベーターのところに「Rooftop」と書いてあったので、なにがあるのかと思って、上がってみました。するとこのようにベイブリッジに面して座席が置かれている空間がありました。ちょうど夕暮れの時間帯だったのですが、非常に綺麗な景色を眺めることができました。

奥の方にはこのようなソファ席もありました。いまはまだこのスペースの用途を模索しているところなのかもしれません。というのも、このルーフトップのラウンジみたいな部分の手前側のところに、スタッフが常駐できそうなカウンターが準備されていたからです。将来的にはここのスペースをルーフトップバーなどとして利用するのかもしれません。

だんだんと日が暮れてきましたが、反対側の方の景色です。私の滞在している客室とも反対側の景色となっていますが、これはこれで「港町・横浜」らしさを感じられていいと思います。すぐ手前には赤レンガ倉庫があり、クイーンやキングの塔、大さん橋、山下公園や関内の街並みがそのうしろにあり、さらに遠くにはベイブリッジも見える。本当にいい場所にできているホテルだと改めて感じます。

フィットネス施設

再びエレベーターで下の階に降りていきます。3階から中庭に出ることができますが、隠れ家のように寿司屋の「かたばみ」がここにはあります。そしてその手前側にはスパとフィットネスがあります。今回は残念ながらスパは利用しませんでしたが、高級ホテルにしては、比較的リーズナブルなトリートメントのコースがいくつかあるようでした。

また非常にコンパクトですが、フィットネス施設も完備しています。カーディオマシンのほかにはヨガマットが敷かれたコーナーがありました。私が行ったときを含めて、あまり利用者はいないようでした。

レストラン「Larboard」で簡単な夕食を

横浜港のトワイライトタイムは、ひとりで滞在するにはあまりにもロマンティックなものでした。そろそろ夜も近づいてきたところで簡単な食事を取ることにしました。翌日の早朝からの仕事もあり、またそのための準備もあったため、あまり満腹にしてしまうと、眠気を催してしまうという危惧もあったため、ほどよく満たされるものを食べたいと思っていました。

そんなときに私は「クラブハウスサンドイッチ」をオーダーすることが多いのです。このクラブハウスサンドイッチというのも、本当にホテルによって味わいが違い、シンプルなようでありながら、結構個性が出てくるものです。

インターコンチネンタルのものは「正統的においしい」という印象を持っていたのですが、ここ「Larboard」のものも、それに当てはまる美味しさでした。トマトの酸味とターキーの香ばしさ、そして野菜の鮮度の高さのバランスが絶妙に取れていて素晴らしいものです。フレンチフライはあくまでも付け合わせなのでケチャップはなし。またピクルスも酸味の強いもの。

せっかくなので好きなモクテルの「ヴァージンモヒート」と合わせてもらいました。こちらもまた甘さ控えめのさっぱりとした味わい。当初の目的よりも満腹感がありましたが、それ以上に満足感の高いクラブハウスサンドイッチでした(さらにいえばアンバサダー特典のクレジットが利用できて嬉しかった)。

みなとみらいの夜景と共に

客室に戻って外を眺めます。

昼は青さが際立つ客室からの景色。夜には空も海も黒くなり、みなとみらいの煌びやかな街並みを映し出していました。私は仕事を片付けつつも、ときどき外を眺めて、思い出の滲む夜の海の香りをききました。

そうこうするうちに夜も更けてきました。窓をあけていればおそらく潮騒が聞こえるはず。しかし最新式のフルハイトウインドウはあくまでも静かな室内を実現し、うつらうつらとするうち、いつのまにか眠ってしまいました。

朝食

夜が明けました。

夜から打って変わって、すっかり青さを取り戻したみなとみらいを横にみる目覚めのとき。身を整えてから朝食に向かいます。朝食もメインダイニングの「Larboard」で取るものと思って、ロビー階に行ったのですが、いまのところは5階のクラブラウンジで提供していると案内されました。

クラブラウンジはベイブリッジ側に面しています。こちらのインテリアコードもホテル全体と共通していました。私の行ったときには人もほとんどいなかったためにゆとりある朝の時間を過ごせました。しかし多くのホテルがそうであるように、8時をすぎたあたりから徐々に人の数も増えてきます。

基本的にはブッフェ形式で用意されており、卵料理に関しては個別に注文を聞きにきてくれました。料理の種類も豊富かつ質もかなり高いものだったので、満足度は高いものです。なおこちらのラウンジのスタッフも感じの良い人が揃っていて、非常に気持ちのよい対応をしてもらうことができました。

チェックアウト

客室は16時まで利用可能でしたが、次の予定も控えていたので早めにチェックアウトしました。最後の最後まで気持ちのよい滞在をすることができました。

駅まで歩く途中で振り返るとホテルの先端に「ハンマーヘッドクレーン」も見ることができました。

赤レンガ倉庫方面から見ると、並んで立つように見える横浜のふたつのインターコンチネンタル。どちらも個性的で魅力あるホテルですが、この地に開業する予定のカハラやハイアット、あるいはウエスティンといったライバルに対して、どのようなプレゼンスを持つのでしょう。今後の展開が楽しみです。

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