大阪は今日も晴れ。東京の冬に吹いてくるからっ風とは少し違う湿度を帯びた風が雲を遠くへと流していくような日。妹と弟を連れて成田空港から飛行機で関西空港へ降り立ち、南海電車の急行電車で難波駅へと向かっていました。たまには3人で大阪に行こう。そういう何気ないきっかけ。せっかくだったら大阪らしさのつまったホテルに泊まろうとW大阪を予約したのでした。
弟の仕事が終わるのに合わせて成田空港で待ち合わせ。もろもろの都合で久々に乗ったLCC。いつも以上に閑散とした関空。そして「ラピート」も「はるか」も来ていない昼の駅。かつて訪ねたときの賑わいとのコントラストがなんとももの寂しい気がしました。
Wを冠したきわめて抽象的なパープルのツリー。そして明るいスタッフに出迎えられて、ここはいつものように華やかに着飾った人たちでさざめいていました。この明るい雰囲気はやはり好きです。小さなミラーボールがたくさん並べられている半円形のソファで妹と弟がポーズを取っていました。空港は閑散としていたけれど、難波の駅も、そこから乗ったタクシーの車窓からも人の波が見えて、ああ、ここが明るい大阪。きっとこの明るさは過去・現在・未来と変わらずに引き継がれてきていくものなのでしょうね。
少し早い到着でしたが、もう部屋の準備が整っているということでさっそく部屋に向かいました。普段ホテルステイをしないし、泊まる場所にさほどのこだわりのなかった妹と弟(もっとも妹は最近プリンスホテルに目覚めたようですが)は、想像していたホテル像とはかなり違った世界観に触れて、あちらこちらをきょろきょろと見回していました。
本日はファンタスティックスイート。前回滞在したスペクタキュラールームよりも全体に落ち着いた雰囲気を感じる低層の部屋。バーカウンターと大型のテレビを備えたリビングルームの斜めになっているベッドルームの仕切りは動かせるようになっています。本来であれば高揚感のある部屋のデザインなのですが、私はなぜか妙な落ち着きを覚えるのです。それは家族と来ているということ以上に、このホテル全体がもつ雰囲気が効いているような気がするのです。
ベッドルームの側もあたたかみのある木目。そして低くてかたい椅子(あるいはオブジェ?)や、剣玉などのさりげない玩具。そうした要素が落ち着く雰囲気を醸成しているように思いました。この感覚はいったなんだろう?童心に帰れる雰囲気とでもいいましょうか。
ふと私の意識は幼い頃に行った駄菓子屋さんに飛びました。東京の下町。小さな子どもたちで賑わっているあの雰囲気、色合い、楽しさ。銭湯の文化が大阪と東京で異なるように、もしかしたら駄菓子屋の流儀も異なるのかもしれませんが、おもちゃがあり、お菓子がある、あの小さな楽しさがいっぱい詰めこまれた空間にときめく感覚は変わらないものでしょう。このホテルが、ぎらついていて、はなやかで、ポップで、しかしどこかあたたかい感覚になるのは、そういう原体験を連想させられるからなのかもしれません。もちろんスタイリッシュなのは言うまでもありませんが。
バスルームはスペクタキュラールームを知っているとやや閉塞感を感じるかもしれません。ただ、私の弟などは洞窟みたいで落ち着くと言っていました。言われてみれば、ストーンの雰囲気や奥まったシャワーブースなどはまさにそうした雰囲気に似ているような気がします。しかし洞窟で落ち着く弟の普段の生活はどのようなものなのでしょうか。知らない間に屋久島で山登りしてきた話。インドア派だと思っていた弟が、知らない間に、いつの間にか…同じ東京に住んでいて、さほど遠く離れていないとはいえ、生活を共にしていないあいだにどんどんお互いの世界は知らないものになっていく。そんなことを期せずして思った瞬間でした。
今回の滞在は2連泊。今日はホテルで食事せずに外で食べよう。この季節の夜の御堂筋を歩くのは楽しいものです。銀杏の黄色。イルミネーションの紫やピンク。ビルの明かり。あたたかい光を投げかける電燈。Wの名前も誇らしく聳える真っ黒なホテル。街行く人の歩調も、せっかちだったり、のんびりだったり、様々な人が入り混じっていて、都会の懐の深さを感じさせられます。思えば、こうして3人でWホテルに泊まるのもなんだか変な感じがします。でも、そんなこともどうでもよくなってしまうような大阪の夜でした。