短い宿泊記〜2023年3月、春の東海道を旅する。

春は出逢いと別れの季節である。そんな言葉がここのところ私の心のうちをめぐっています。なにかにつけてそれが意識の上に浮かんできては口をついて出てくるような気がします。実際に色々な別れがありました。そしてそのぶん新しい出逢いに対する期待や喜びもあります。

ここのところ様々な用事で東海道を往来する機会が多かったのですが、これまでにもこのブログに書いてきたホテルばかりに泊まっているのであえて個別の宿泊記にするまでのことでもない…半分くらいは怠惰な自分への言い訳、他方で、小さな別れと出逢いをホテルの記憶とともにここに改めて書き綴っておきたい。そんな想いと共に簡単に最近のホテルステイを振り返ってみたいと思います。

名古屋マリオットアソシアホテル

名古屋に滞在しました。高齢の家族がいたこともあって、利便性を重視するとここになる。私の家族にとって「名古屋といえばあそこ」という定宿になっています。なお私がこのホテルで最も好きなのはどういうわけかこのエレベーターホール。たくさんのエレベーターが並んでいて、昼でも夜でもひっきりなしに人々が行き交う。この活気こそがグランドホテル。新しいホテルという印象があったけれど、開業年を思い返せば2000年ということで、もう20年以上もこうして人々を迎え入れてきたのだと考えるとちょっと感慨深いものがあります。どうもこの2000年あたりを境にして、日本のホテルの世界観の多様化が一気に進み始めたような気がしているのですが、その過渡期にできた空間とも言える気がする。このエレベーターホールの少しクラシカルな雰囲気はそれをいつも連想させるのです。

セントレジス大阪

瀟洒な邸宅のような雰囲気に惹かれてまた泊まりにきたセントレジス大阪。今回は家族も同伴していたので藤スイートへの宿泊となりました。とても広くて雰囲気のよいリビングルームの居心地のよさは特筆すべきことでしょう。

率直な感想を言ってしまえば、ベッドルームはやや手狭な印象を受けたのですが、それはリビングルームの広さとの対比でそう思ってしまうのか、あるいは本当に狭いのか…もっともその狭さが逆に落ち着くと言えなくもありません。

個人的に今回の滞在でもっとも感心したのは、バトラーやラ・ベデュータのスタッフが一様に気持ちのよい対応だったことです。これまで私がこのホテルに泊まるのはだいたい本町周辺に用事があるときでした。しかしお世話になっている人が大阪から故郷に帰ることになり、この場所に泊まりにくる積極的な意義がなくなってしまうこともあって、セントレジスも疎遠になるかもしれないと思っていました。今回の滞在はそうした意味でひとつの区切りとも思っていたのですが、このホテルの魅力に改めて触れたこともあって、ここを目的地としてもいいような想いになりながらチェックアウトしました。

ウェスティンホテル横浜

この日も横浜でまたひとつの別れ。送別会の会場に最も近いウェスティンに泊まりました。もっとも会場が近くなくてもここに泊まったかもしれません。私の中でここが横浜の定宿になりつつあります。客室の機能全体がとても使いやすく、居心地のよさを感じているせいでもあります。みなとみらい地区にありながら特筆すべき景色に恵まれているわけでもなく、水色の印象の強い横浜にあってどこかボタニカルな雰囲気なのも面白いところです。ちなみにちょうどスイーツメニューが「桜」へと移り変わる日に滞在したこともあって、期せずして新しい季節を感じさせられたのでした。

新しい環境。新しい人間関係。去っていく人の幸せを願うと共に、私自身もまた新しい環境へ。また社会全体もまた新しいなにかへと移っていく。色々なところにそんなことを感じた滞在でした。

パークハイアット京都

少し久しぶりの滞在でした。宿泊費もすっかり高騰したし、周辺の人の数も増えていて、驚くべきはチェックインのときに本日はほぼ満室です、と伝えられたことでしょう。国内外の観光客が戻ってきた春の京都の混雑おそるべし、と思わされた瞬間でした。当然レイトチェックアウトもできません。開業直後もそんな感じで混雑していたことを思い出しました。しかし重要な点は、開業直後と違って、このホテルのスタッフの対応が非常に高い水準であったことでしょう。実に快適な滞在でした。

滞在したのはパークスイート。庭に面した落ち着いた雰囲気とダイナミックなデザインの融合がじつにパークハイアットらしい京都の表現でやはり素晴らしいですね。

今回の滞在は天気に恵まれました。鉄板焼きの八坂で夕食を取ったのですが、その横に五重塔と京都の街を見渡せるスペースがあり、およそ京都と聞いて連想するような美しい景色を眺めることができました。もうこれだけでもこのホテルに滞在した価値があるというものです。

また混雑が少し落ち着くだろう夏くらいに来よう。そう心に決めてホテルをあとにしました。

今回はどこもこれまで滞在したことのあるホテルということで写真に語りの多くを任せて、言葉は最小限の記録に留めました。今さらホテルの詳細についてリポートしても重複することが多いように思ったためでもあります。ふと思い立って数えてみたらこれまでに書いた宿泊記の数も200を超えました。私の宿泊記の平均が5000字なので、大雑把に1,000,000字近くもホテルについて語ってきたのですね。本当にいつも読んでくださる皆様、そしてホテルの話題を通じて交流してくださる皆様に心より感謝申し上げます。どうもありがとうございます。旅の記憶はその都度積み重ねられていくし、どんなホテルにも大小さまざまな出逢いがある。そんなことを胸に抱きながらまた私は明日からもホテルに泊まり、旅を続け、心が向けばさらに言葉を綴っていくのでしょう。まだ春は始まったばかりです。

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