アロフト大阪堂島宿泊記2021・コーナールームにひとり佇んだ夜だった

大阪に泊まる。ひとりで泊まる。せっかくだったら景色の良いコーナールームに泊まりたい。もしひとりで泊まるなら、景色の良い部屋から人々の営みが交錯する街並みを眺めているのが好き。少なくともこの日はそういう気分でした。

西梅田の喧騒を抜けて、辿り着いたのがアロフト大阪堂島。かつてはルネサンス様式風な建物に音楽にこだわった客室サービスで知られた堂島ホテルがここにはありましたが、その外観にはそのときの名残を感じさせられるものがありました。しかしエントランスに来たところでその印象は拭い去られることになりました。青にはじまり青に終わる。途中に挟まる明るい赤や黄色や橙色といった色合い。ここはまさしくアロフトの空間。

過去の面影のなかに、アロフトらしいテクノロジー優れし未来感を連想させられる雰囲気が合わさったホテル。それは長旅を終えて、仕事を済ませて、そうしてひとりでここにたどり着いた私には、なんだか現実から遊離したような世界に思えました。

天井にはきらきらとディスプレイに表示される抽象的、そしてときに具体的な大阪のイメージ。スケートボードや三輪トラックなども。銀座のアロフトでも感じたことですが、乗り物やテクノロジーは(最近の)アロフトの共通モティーフなのでしょうか?

先日滞在したW大阪のことをふと思い出していました。ラグジュアリーで尖っていて、なにより大阪らしかった。こちらのホテルはラグジュアリーでこそないかもしれませんが、やはりどこか共通する雰囲気があるようにも思いました。なおこちらのスタッフもあちらに負けず劣らず対応がフランクで、それでいて親身であったこともここに付しておきたいところです。

部屋はコーナータイプ。広い通りを駆け抜けていく車のランプを夜通し眺めることができます。北を向いているため、大阪駅方面の喧騒も見て取れます。なおこちらはバスタブがなくシャワーブースだけのシンプルな構成。しかし、このホテルらしい要素がたくさん散りばめられた楽しい気持ちになる客室でもあると思いました。

シャワーを浴びよう。バスアメニティはPHARMACOPIAの黄色いやつ。ハイアットにあまり滞在しない方には馴染みが薄いかもしれませんが、個人的にはハイアットリージェンシーを連想させます。京都で、箱根で、そして西新宿の茶色い方で…いまは紫色のPHARMACOPIAになりましたが、私の多くのリージェンジーの思い出は、この黄色い方に結びついています。まさか大阪のアロフトで、シャワーを浴びながら、そんな思い出たちと対面することになろうとは思ってもみませんでした。そういえば数年前にリージェンシーブランドにやたらとはまってしまって、ずっと国内のハイアットリージェンシーをひとりで渡り歩いたこともあったっけ…まだこのブログを始める前の、切なさと気楽さが適度に混ざり合ったちょっと前の懐かしい思い出です。

北米のダイナーにありそうなメタルテーブル、そして、窓に面したソファの上にThe MonkeesのLP盤を見つけました。この部屋にはプレーヤーがなかったけれど、なんだかShades Of Grayを聞きたい気分になったのは、社会のせいか、私の心模様のせいなのか。光も影もなく、白も黒もなく、そこにはただ灰色の影があるだけ…しかしこの部屋はこの曲を聴くには明るすぎるような気がします。

やはりコーナールームでよかった。PHARMACOPIAの強めの柑橘系の残り香を感じながら、ベッドで横になって、カーテンを開けたまま電気を消すと、ちょうど良い明るさが心地よく感じられました。そうしてそのまま寝てしまえたのでした。

想像するよりもずっと明るい曇天の朝に目を覚ましました。この部屋もまた違った表情に見えてくるものでした。オレンジジュースとコーヒーと、そして自分でブレンドするシリアルの簡単な朝食を済ませて、しばらくしたらチェックアウトする時間です。

思えばひとりでの滞在も久しぶりでした。それは仕事の終わりの異世界へのトリップであると同時に、いやそれ以上に、以前ひとりで滞在していたときの自分の心情との対面でありました。かつての堂島ホテル、いまは現代的なアロフト大阪堂島。このホテルから見える景色もこれからもっと変わっていくのだろうな…そのとき改めてこの場所に滞在したとしたらどんな気持ちになるのだろう。そんなことを思いながら、大阪をあとにしました。

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