リッツカールトン東京宿泊記・重厚感とモダニズム、クリスマスシーズンの華やかさ

華やかなホテルに行きたい、それも普段とはまったく違った感じの!

ホテルステイを趣味として、毎週のようにホテルに滞在していると、だんだん、自分のなかでのスタンダードというべきホテルのイメージが出来上がってくるように思うのです。少し言葉を変えるならば、そこが好きで、さらにいつ行ってもほっと落ち着けるような安心感のあるホテルとでも言いましょうか。自分にとってのスタンダードなホテルであれば、その滞在のスタイルもある程度確立しているし、パブリックスペースでも部屋でも心置きなくゆっくり出来ます。自分にとってのスタンダードなホテルというのは、人によって異なるし、その人がホテルに対して求めるものや抱いているイメージが端的に現れているような気がします。そんなわけで、私はホテル好きな人と話す機会などがあれば、是非ともその人のスタンダードを聞いてみたくなる思いがあります。

さて、そういう私にとってのスタンダードなホテルはどこなのか、と問われるならば、私はしばし迷いながら、やはり東京の3つのハイアットホテル(パークハイアット/グランドハイアット/アンダーズ)を挙げるでしょう。もちろん様々な理由はありますが、そのことについてはまたいずれ。ではなぜ冒頭からこんな話題を出したのかといえば、スタンダードなホテルがあると、ついそちらに足を運びがちだということを言いたかったからです。

六本木や赤坂あたりのクリスマスシーズンで華やかなホテルというと、私の感覚では、六本木ヒルズにあるグランドハイアット東京をまず連想します。それゆえに、六本木ヒルズからも至近の東京ミッドタウンに位置するラグジュアリーホテル、ザ・リッツ・カールトン東京にはこれまであまり意識が向いてこなかったのでした。

固定された意識から脱却して、いつもと違ったホテルの華やかさに出逢いたい。

かくしてリッツカールトン東京への滞在が決まったのでした。

バレーパーキングのために車寄せへ。真っ黒な山高帽子に外套というクラシカルな出立ちのベルスタッフに鍵を渡して、チェックインへと進みます。観音開きの扉がリッツカールトンらしい重厚感を漂わせながら、同時に、メタリックで現代的な雰囲気も同居していました。このクラシカルかつモダンな組み合わせの巧みさはこのホテルを彩るひとつのテーマかもしれません。

エレベーターで45階まで一気に上がる。大理石調にやや明るいウッドの壁、重厚感がありながらも現代的な絨毯。そそりたつ大きなクリスマスツリーを眺めていると、豊かな気持ちになります。さりげなく上品なアロマの香りをきくと、ここがリッツカールトンなのだという事実が感性に訴えかけてくるような気がします。

そうそう、こういう圧倒的にわかりやすい高級感を求めていたのです。こういう豊かなクリスマスの雰囲気が欲しかったのです。

ラウンジではジャズが演奏されていました。ビートルズのアレンジ。スタンダードナンバーでも、セロニアス・モンクなどではないところが絶妙にこのホテルらしいところなどと思いながらチェックインに進みます。

スタッフの説明は丁寧で、応対も感じの良いものでした。

今回ホテルに着いたのは昼過ぎだったのですが、チェックアウトの人たちもいました。隣に真っ赤な薔薇の花束をもった人が手続きをしていました。昨日は素敵な夜を過ごしたのでしょうか。

はじめて泊まるホテルにチェックインする瞬間というのはいつもある種の緊張感と期待が混在しているものです。この感覚はどんなに色々なホテルに泊まってもきっと褪せないものでしょう。

今回の部屋はデラックスルーム。このホテルで最もスタンダードな部屋です。扉を開くと、落ち着くインテリアコードの客室が待っていました。ベッドの高さは少し高くてふわりと柔らかい。向かい合わせになっているアームチェアの座り心地もとてもよく、眺望も申し分ないものです。

言ってみれば標準的なホテルの文法通りの客室。それにもかかわらずとても質が高い。そんな第一印象を持ちました。

ウェットエリアは個性的な配置のダブルシンク。独立式のバスルームではなくて、バスタブとシャワーブースとトイレがそれぞれあるという作りです。

メープルウッドと大理石というわかりやすい高級感の演出。このわかりやすさはじつは意外と難しいもののような気がします。ひとつ間違うと、むしろ安易な印象を与えて、古臭いとか面白みがないということになりかねません。しかしそれをあえて採用しているところにリッツカールトンのラグジュアリーホテルとしての矜持を感じずにはいられません。

ミッドタウンを気楽に散歩。そして部屋に戻ってきてからひと仕事。すっかり日の短くなった窓の外の空模様が刻一刻と変化していく様子がデスクからもよく見えました。

冬の東京の夕暮れの空は乾いていて、ときに切ないほどの青い。遠くには富士山のシルエットも見えました。あっという間に夜へ。黒い空の下に青山や渋谷のきらきらした灯りが輝く景色へと変化していきました。

今日のディナーは和食を。45階にある「ひのきざか」で会席料理を頂くことにしましょう。

パートナーと私は夜景に正対するカウンター席に案内されました。手元には繊細な味付けの料理の数々。そして顔を上げれば、副都心の輝かしい夜景がよく見えます。左には美味しそうに食事を楽しんでいる彼女。

先付、焼物、揚物…季節の食材を生かした料理の質は高く、スタッフもとても親切でした。

気を利かせてくれたスタッフのはからいで、デザートは二面がフルハイトウインドウになっているとても開放的な席で頂くことができました。綺麗に盛り付けられた季節のフルーツやわらび餅。寒々しくも美しい冬の夜景。この部屋で甘いものを堪能している頃には、すっかりこのホテルに魅了されてしまっていました。

食後に乾杯!高級なワインでも注ぐかのように恭しくスタッフが注いでくれたのは緑茶と烏龍茶。厳選された茶葉を使用したとても清涼感ある香りが特徴的でした。

私のなかで、リッツカールトンというと「洋」のイメージが強いのですが、なんだか「和」もとても素敵。あくまでもホテル全体の世界観のなかに違和感なく溶け込んでいて、そして、とても満ち足りた食事の時間を過ごせたのです。

部屋に戻ってきたら、とても静かでした。このホテルはこのあたりで最も静かな場所かもしれません。お風呂に入って、ベルガモットを中心とした気品あるアスプレイのパープルウォーターの香りに包まれながら、ふわりと柔らかいベッドに横になります。遠くには無数の散りばめられたような光が見えます。リッツカールトン東京の世界観に浸って、よりその魅力を識る…そんな夜でした。

目が覚めたら朝食へ。にぎやかで華やかな夜の雰囲気とは一転して、静謐な朝のロビーラウンジ。クリスマスツリーも日光を浴びて、ひそやかに輝いていました。冬の朝の清々しさのなかで、今日はなにをしよう?などと考えていました。

こんなとき、やはりホテルは朝だな、という気持ちになります。

チョコレートやマカロンで知られるラ・ブティックの横を通って、コンテンポラリーグリルの「タワーズ」で朝食を。セットメニューでの提供となっていて、メイン料理を2種類お願いすることができるようになっていました。

私はタワーズオムレツとクロワッサン生地のワッフルをお願いしました。オムレツにはシトラスフレーバーの胡椒をかけて。そしてワッフルにはたっぷりのシロップとクリームを。しばしば活力を与える朝食という言葉を聞きますが、ここの朝食はまさにその名の通りの内容だと思います。

レストラン自体の規模はさほど大きくなく、やや混み合っている印象。客の年齢層もさまざまでした。

ひとりで泊まっていたらプールなどに行っていたかもしれません。でも今日はふたり。部屋でゆっくりしようか?それとも近くの美術館にでも行ってみようか?そんなことを考えているうちに時間は過ぎていってしまいました。ふたりでホテルステイをするとき、時間の流れが妙に早いと感じることが多々ありますが、今日もまた早い。

そうこうするあいだに昼前になりました。スパイシーなものを食べたくなった我々は、近くにあるタイ料理のお店からカオマンガイとトムヤムヌードルをテイクアウト。それからすっかり好物になったステーキハウス「ベンジャミン」のキーライムパイも。あそこのお店に行ったのはつい最近のことのような気がしていましたが、もう数ヶ月前。時間が経つのは早いですね。

ジンジャークッキーとアラザンとチョコレートを積み重ねて、ふたりでクッキークリスマスツリーを作ります。ここは静かですが、窓の向こうにはは今日も忙しく動いている東京の街。

チェックアウト前のひととき。このホテルの魅力について語り合っていました。

泊まらなくてもそのホテルの魅力を見つけ出すことはもちろんできますが、やはり泊まることで見えてくる魅力というのは大きいものだと思います。明確な高級感あるムードに酔いしれて、豊かな気分で東京の夜と朝を過ごす。リッツカールトン東京のクリスマスシーズンの華やかな魅力について語り尽くすことは簡単ではありません。年内はもうマリオット系列のホテルに泊まることはないと思いますが、本当に良いホテルステイでした。ブランド数の多さもそうですが、やはりこういう素晴らしいホテルに恵まれていることも魅力的なホテルチェーンだなと改めて思うものです。

もうそろそろ大好きな馴染みのホテルに戻りましょう。そこで過ごすとき、今日の滞在や、今年泊まった色々なホテルのことなどをふたりで語り合って、また訪れたいという気持ちをあたためることになるのでしょう。

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