なんかボタニカルガーデンでも眺めているみたいだね…そう言ったか言わなかったか。ぼんやりとした初夏の暑さを感じながら、午後に家を出て、那覇空港からタクシーでホテルに着いたときには、雲間に見える薄黄色の空とじとっと重たい湿気。荷物をベルスタッフに預けて、エアコンがキリッと効いたホテルのロビーの窓には水滴がついて、気温と湿度の高さを端的に表しているようでした。
亜熱帯の沖縄。その特徴的な植生を生かした天井の高いエントランス。インテリアの全体的な雰囲気には、同じ系列のハイアットリージェンシー横浜にも近いものを感じますが、そこかしこに沖縄らしいアイデンティティを散りばめた空間。久々にこのホテルに戻ってきました。ちょっとした所用があり、せっかくだから、少し滞在期間を伸ばしてホテルステイもしようとパートナーと共に訪れた沖縄。眠い目を擦りながら早朝の飛行機で向かうくらいならば、いっそのこと所用の前日に那覇まで来てしまおうということで、急遽こちらのホテルに予約を入れたのでした。
外と中の気温と湿度のコントラストをじっくり眺める間もなく、スタッフに案内されて、チェックインに向かいます。エレベーターで階上に向かい、クラブラウンジで手続きを行います。
数年ぶりの滞在ですね。そんなことを話しながらスムーズにチェックインは完了。飛行機の中で簡単な食事をしたのに加えて、これから外の店に食事に行くのもやや面倒。そこでちょうどクラブラウンジはカクテルタイムの時間帯であったので、飲み物と軽食をいただきながら、ゆっくりすることにしました。軽食とはいうものの、ここのラウンジの充実度はなかなかのもので、沖縄料理もいくつか用意されているほか、ローストビーフやヌードルなどもあり、ここだけで十分といえるほどでした。グアバジュースとノンアルコールのオリオンビールで乾杯。
なだらかな稜線と白いコンクリート造りの家並みがいかにも沖縄らしい景色。周辺に高層ビルがあまりないこともあって、抜けた景色が見えます。暑い雲に覆われた那覇の街並みでしたが、いくつかの層になっている雲のそれぞれが風に乗って動いている様子も見て取れました。沖縄の天気は変わりやすい。それを実感する瞬間でもありました。
カクテルタイムが終わると、さっきまでいた人たちはみな部屋に戻ってしまって、我々だけになりました。クラブラウンジの入口にはスナック菓子とアルコール飲料を含むドリンクが用意されていて、おそらく部屋で談笑の続きなどをしているのでしょう。我々もほどなくして、ふたりしてちょっと気に入ったお菓子を持って、部屋に向かうことにしました。
今日の部屋はクラブデラックスツイン。部屋のつくり自体はおそらくスタンダードフロアのデラックスツインルームと変わらないのかと思います。全体に明るいインテリアコードに、ベッド側の壁には琉球ガラスのアートワーク。大きめの窓からは牧志の高台からの那覇の街並みが見渡せるようになっていました。いわゆる高級な雰囲気ではありませんが、最近のすっきりとしたハイアットリージェンシーらしい雰囲気ですね。
デラックスツインルームがデラックスたる所以は、おそらくこの独立式のバスルームにあるのでしょう。ウェットエリアの広さは特筆するほどではなく、華やかさもそれほどありませんが、十分快適に利用することができるように思います。ただひとつ難点を言うとすれば、水圧が弱いことでしょうか。主観的な問題ですが、やはりホテルのあのやや強い水圧でざっと流す感覚は心地よいと私は思ってしまうのです。
バスアメニティはACCA KAPPA。ホワイトモスの個性的な香り。トップがじめっとした梅雨の沖縄に妙にマッチしているように思いましたが、最終的にはすっきりとした匂いへと収斂していきました。
バスタイムを終えて、外を見渡すとしとしとと雨が降り始めていました。粒子の細かい雨。那覇の街の明かりをぼんやりと際立たせていました。人口密度の高い都市らしい所狭しと並んだビルや住宅。見知らぬ街のこういう景色はやっぱり好きだなと思います。
最近我々がホテルでよくすることは、一緒にテレビを見ること。思い返せばホテルステイのときにテレビを付けることって、これまでほとんどなかったのですが、どちらからともなく、テレビをつけて、意外と同じような番組を見ているということに改めて気づきます。でも見方がお互いに微妙に違うところもあるかと思えば、笑いどころが同じだったりもして、ささやかではあるものの、こうして同じものを見ているということっていいな、と思います。
夜のニュースを見終えたら、テレビを消して、部屋を暗くして、でも、カーテンは開けたままで。那覇の夜景を眺めているうちに寝ていました。夜中に一度雷が鳴って、激しく叩きつけるような雨が降っていて、一度目を覚ましたのですが、それからほどなくしてまた眠りました。
目が覚めると雨は止んでいました。朝食は2階のレストラン「sakurazaka」にて。沖縄県産の食材をふんだんにつかったブッフェ。昨日のクラブラウンジといい、このホテルのブッフェの充実度はかなりのものだと思いました。パートナーは美味しそうにマンゴーを食べていました。私は黒糖をつかったワッフルやパンケーキなどを堪能。すっかり満腹となり、腹ごなしを兼ねて、朝の壺屋通りや牧志周辺をふらりと散歩しました。直射日光がささなくともむっとする湿気や街の空気の匂いの違いを感じながら。
所用をこなすために、それからほどなくして午前中にチェックアウト。予約したレンタカーを受け取りに向かいました。今回はあまりゆっくりできなかったけれど、那覇の街の魅力にたくさん触れられる場所に立地していて、なおかつ快適に過ごせるこちらのホテルの魅力を再発見した思いです。私はついつい沖縄本島の中部や北部のホテルの方に足が向いてしまいがちですが、敢えてこちらに泊まるという選択肢も大いに検討されて然るべきだな…いつかまた、今度はもう少しゆっくり訪れよう。そんなことを考えながらこのホテルをあとにしました。