ザ・ひらまつホテルズ&リゾーツ宜野座宿泊記2021・沖縄本島東部は雷嵐、別荘のような空間での味わう美食

早朝に那覇を出発し、所用を済ませた我々は古宇利島を回りながら、名護市から宜野座村に至る道を走っていました。わずかに晴れ間が見えたかと思えば、だんだんと暑い雲が集中してきて、ときどき小雨がぱらついたりすることもありました。今日は以前から行ってみたかった「ひらまつ宜野座」に滞在。

本当だったら、湿気で肌がべたつくあの沖縄特有の空気のなかで、プールに入るなどしてみたい心地がするものでしたが、それは断念せざるをえません。しかしそのぶんもゆっくりとホテルでくつろぐことにしましょう…今回はそんなリポートです。

チェックイン

ほとんど人の気配のない海沿い(といっても海はあまり見えない)の道を進んで、突然見えてくる馴染みのマーク。その表示にしたがって車を進めます。

整えられた敷地の道を抜けて、エントランスに借りた車を横付けすると、スタッフが建物内まで案内してくれました。チェックインの手続きに進むのかと思っていたところ、ここでカートに乗り換えて、メインの建物へと移動するということでした。

パートナーとふたり。やや遠くに見える海を眺めながら、開け放たれた窓からほのかにする松の香りを感じていました。

ホテルに到着して、そこにもうひとつ段階があることで、外の世界からの断絶を経て、そのホテルが持つ世界観の中に没入していく。この体験性の面白さもまたひらまつらしいところでしょうか。しばらくして、にこやかな笑顔のスタッフが我々をカートで迎えに来てくれました。ベンチの置かれた小径を抜けると、レストラン棟とフロント棟に至ります。

白を基調にしたすっきりとした色合いに、ところどころ沖縄らしい意匠を組み込んだインテリアが心地よい。坂の途中に位置していて、降りきったところには海が見える。松の香りを乗せて抜けていく風に、エアコンの涼しさが混じり合って、湿度の高さゆえの心地よさのある涼しさ。ウェルカムドリンクの冷たいさんぴん茶のグラスにもたくさんの細かな水滴が見えました。

このときすでに夕方近い時間だったのですが、このホテルではこれくらいの時間になると「まーさんタイム」(沖縄の言葉で「まーさん=おいしい」の意味)という軽食とお茶のサービスがあります。

部屋に行く前にちょっとだけやっていく?

そんな「一杯やってく?」のような変な言葉のチョイスをした私をからかいながら、せっかくだからテラス席に移動しようと促すパートナー。彼女と出会ってから部屋の外で食事することの楽しさを知ったような気がします。

スタッフが持ってきてくれたのは月桃茶とショコラがけの塩ちんすこう。ほのかな塩味のあとにとろける甘さのショコラとややしっとりしたちんすこう。少しぴりっとした香りのお茶とよく合います。外は小雨がぱらついたり、止んだり、天気はとにかく安定しません。

今日は海岸に降りるのもパスしよう。インフィニティプールも。ただそんなふうに話ながら、お互いに、またいつかリベンジしよう、と示し合わせたように話していました。我々はすでにエントランスからこの「まーさんタイム」までの間に、すっかりひらまつ宜野座の持つ雰囲気に魅せられ始めていたのだと思います。

客室

ゆったりとした「まーさんタイム」を終えた我々は、スタッフにエスコートしてもらいながら部屋に向かいました。今回は最もスタンダードなタイプの客室にチェックイン。

扉を開けるやいなや、彼女の表情がぱっと明るくなったのを覚えています。段差のついた個性的な配置に、落ち着いていながらかわいらしいインテリア。私のパートナーの好みにぴったり合ったようです。もちろん私自身も、とても好きな雰囲気の、快適で気分が高まる部屋だと思いました。ベッドの硬さはひらまつらしくふわふわしたもの。ベッドの奥に横長のライティングデスクがあります。もっとも私はここで仕事をしようという気分にはならないだろうと思いましたが、その需要は十分に満たせそうな気はしました。

エアコンを入れて、シーリングファンをまわして、しばらくパートナーと部屋の雰囲気の素敵なところを興奮気味に語り合っていました。

ウェットエリアは使いやすい分離されたダブルシンク。バスタブも十分なサイズがあり、独立したシャワーブースもあります。取り立てて大きな特徴はないもののラグジュアリー感もしっかりあり、不足のない空間だと思います。バスアメニティはBVLGARIの「オ・パフメ・オー・テ・ブルー」が用意されていました。お茶のニュアンスを強く出したシリーズで、先日滞在したホテルニューグランドのスイートルームのものは、緑茶の香りを基調としていましたが、こちらはどこかマリンノートを感じさせます。使用感も悪くありません。

この客室のもうひとつの無視できない特徴としては、この広めのテラスがあることです。テーブルセットにデイベッド。そして水着の着用が必要ですが、ジャクジーも着いています。残念ながら雨で濡れていてあまり使えませんでしたが、それでも夜にはお湯を張って、星空を(想像で)眺めながら入ることにしました。

ひらまつ宜野座で過ごす

しばらくして降っていた雨が止んだので、ちょっと敷地内を散策してみることにしました。

相変わらず空には分厚い雲が浮かんでいて、海もやや燻んだ色に見えます。しかし沖縄らしい白い石垣や芝生の緑、赤い琉球瓦…さまざまな色を眺めながらふらふらとふたりで歩きます。素敵なインフィニティプールも今日は静か。ときどき鳥のさえずりが聞こえます。途中でフロント棟の階下にあるカフェスペースに立ち寄りました。そこでは宿泊ゲストに向けてコンプリメンタリーの軽食や飲み物が用意されているのですが、我々はディナーの時間が近かったこともあって、アイスクリームとお茶だけをもらって、しばし談笑。

とても社交的なスタッフがこのホテルについて色々と語ってくれました。私の勝手な印象ですが、ひらまつはホテルのストーリーをあれこれ語ってくれるスタッフが多いような気がしています。ひらまつ京都で偶然ファーストゲストになったときに雄弁だったスタッフの姿を思い起こします。

さっきエントランスで感じた松の香り。どうやらホテルの敷地に隣接した林から運ばれてくる匂いのようで、その林もこのホテルの土地とのことです。周辺に建物が立ってしまってこの静かな世界観が壊れないようにしたい。エクスクルーシブな体験を大切にする。そういう想いがあるとのことです。

日が暮れて、ディナータイムに。いつもだったら、ひらまつに泊まるとなれば、レストランでコース料理を選ぶことにしますが、今日はあえてルームサービスにしてみました。沖縄料理が大好きなふたり。ゴーヤチャンプルーは苦瓜特有の苦さや青臭さを上手に飛ばしつつ、上品な余韻へと昇華させていて、豆腐や卵がとろりとした香ばしさを生み出す絶品。ジューシーも素材の旨みがしっかりとした食感のごはんに染み込んでいました。そして爽やかな青みとほのかな磯の香りが塩味のあっさりしたスープとよく合うアーサ汁。どれも素晴らしい。

しかしパートナーが最も気に入ったのは、地産の生もずくとからすみを使ったパスタ。素材のよさを極限まで高めた味わいの深さがクセになります。我々はお互いの注文したものを小皿に取り分け合いながら堪能しました。落ち着いた雰囲気の部屋のなかで、こうして土地の味を堪能するのは素晴らしいもの。今度はコース料理も食べてみたいものですね。

食後しばらくはふたりでテレビを見ながらくつろいでいました。いや、むしろ、満腹になってしまって、しばらく動きたくないような心地でした。食事をしているときに降っていた雨は止んで、ぽたぽたと雨粒が屋根から落ちている様子が見えました。

そろそろお湯張ろうか?そう言ってジャクジーにお湯を溜めました。雨は降っていない。

妖しく光る青いライトをつけて、ゆっくり入浴することにしましょう。真っ暗な空を見上げても星はまったく見えないけれど、おそらく快晴であったならば綺麗に見えることでしょう。今日はしかし外から虫の鳴き声と湿度の高い夜風、そして雨後の松の香りが心地よい。それもまた良さでしょうか。ジャクジーから上がったら部屋のシャワーブースで頭と体を洗って、すっきり。あとはゆっくり眠るだけ。

夜はものすごい雷雨でした。じゅわーという音を立てて激しく打ちつける雨と瞬間に爆発的な音と光を放つ雷。おかげであまり眠れなかった我々。朝には雷は収まっていたもののまだ雨が強く降っていました。眠い目をこすりながら身支度を整えて朝食へ。しかしそこはやはり美食のホテルの朝。とろりとしたミネストローネやふわりと優しく小麦の香りのするパン。丁寧に淹れられたコーヒーが睡魔を緩くどこかに連れ去っていきます。
美味しい料理を締めるのが、トロピカルフルーツを乗せたクリーミーなヨーグルト。南城市のイギリス人チーズ職人のジョンさんの手がけるものとのことですが、じつに個性的でしっかりとした食感のあるヨーグルトでした。冷えたミネラルウォーターを一杯。これでしっかり目が覚めました。
宜野座に滞在して、やっぱりひらまつのホテルは素晴らしいという思いになった我々。レストランをあとにして、部屋でしばらくゆっくりしてからチェックアウトに向かいます。天気予報を確認しながら次の目的地に向かいます。雨の中で傘を差して、エントランスに横付けした車にひとりひとり案内しながらスタッフが我々を見送ってくれました。規模が大きすぎず、ひとりひとりのゲストとの距離が近いことの魅力。
いつかまた来ます。そういって車に乗り込み、手で合図を送って、このホテルをあとにしました。チェックインしたときよりも、心なしかお腹も心もより満たされた気持ち。素晴らしいホテルに特有の「泊後感」を抱えながら、彼女とお互いに再訪を誓い合っていました。
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