【ハイアットリージェンシー箱根宿泊記2021】新緑を眺めに、和室付きのスイートで

情勢にさほどの変化は見られないけれど、季節はたしかに変わっている。桜吹雪が終わり、梅雨までのしばしの新緑のひととき、我々もその心地よい5月の風を感じられる場所にドライブしたいと思いはじめていました。都心からさほど苦労することなく車で移動できて、緑豊かな場所に行くとなると、ある程度の候補が考えられました。北関東に足を伸ばすか、甲州か、あるいは東海道、伊豆方面か。

決断まではさほど時間がかかりませんでした。私が3つほど気になる候補を挙げて、パートナーが最も行きたいという場所を選んでもらう。そのようにして、我々の行き先がハイアットリージェンシー箱根と決まりました。昨年の10月の下旬以来の訪問となり、緑の美しさが印象的だった滞在…今回はそのときの様子についてリポートしてまいりましょう。

チェックイン〜少し静かな森の道を抜けて

ゴールデンウィークは混雑していた東名高速も、今日はさほど混んでいないね。そんなことを話しながら一路目指すのは箱根。いつも混んでいる大和トンネル付近も今日は停止することなくスムーズな流れでした。どういうわけか、我々は箱根というと、昼に蕎麦を食べるのです。よく立ち寄る蕎麦屋を出たら、御殿場を経由してから本日の滞在先であるハイアットリージェンシー箱根に到着しました。

途中の道も空いていたけれど、ホテルもかなり空いている。時間を問わずそれなりに人のいる印象の「リビングルーム」も今日はとても静か。曇り空でも窓の向こうに見える新緑の萌黄色がとても綺麗でした。

チェックインを担当したスタッフは若い笑顔を満点にして、「山の景色のよく見えるお部屋か、眺望は劣りますが、和室付きのスイートルームもご用意できます」と言いました。もともとマウンテンビューの部屋を想像していたのですが、パートナーと顔を見合わせて、せっかくだからまだ泊まったことない部屋にしようか。そして部屋の準備ができるまでのあいだ、しばらくリビングルームで待つことになりました。

パートナーは久々にスパークリングワインを、そして私はペリエにライムを入れたものを。

いつ以来だろう?前に来たときはここに薪が焼べられていたけど、いまはないね。でも、今日もほんのりと木の匂い…

そうこうするうちに部屋の準備が整ったようです。

和室付きのスイートルームに

印象的な渡り廊下を抜けて、東側の建物へ。この建物にはドッグフレンドリールームや、温泉施設izumiがありますが、今日の部屋はその最上階の最も奥に位置していました。

部屋に入ると暖かみのある色合いのインテリア。ハイアットリージェンシーらしい低めのベッド。そしてなによりもこの部屋の特徴と言えるのが、畳敷きの和室スペースでしょうか。8畳分の広さはそれなりにゆとりがあり、また全体にモダンな雰囲気のこの客室に違和感なく溶け込んでいます。奥の方にはテラスがあり、山の空気をめいっぱい吸い込むことができるようになっています。

ウェットエリアもかなりゆとりのあるつくりとなっています。ダブルシンクのベイシン。そしてブロアーバスのついた独立式のバスルームがあります。高級感はやや乏しく、無駄に広いと言えなくもないのですが、すっきりとしたシンプルなインテリアが好ましいです。このあたりの味付けはハイアットリージェンシーらしいところと言えましょうか。なおバスアメニティは最近おなじみの「紫」のファーマコピアでした。

部屋でしばらくだらだらと過ごします。少し早めの時間に夕食の席を予約していたこともあり、特にどこかに出かけることもなく、またラウンジのカクテルタイムもパス。代わりにしばし温泉でゆっくりすることにしました。じつは前にふたりで滞在したときにはこのホテルの温泉に結局一度も入らなかったので、彼女にとっては初めてのハイアットでの温泉。

すっきりとしたインテリアが印象的なスパIzumiの温泉には、やや熱めの褐色のお湯が張られていました。これは私だけかもしれませんが、ここの温泉に入ると、いつもなんだか眠気を誘うように体がくたっとする気がします。もっともこれはホテル全体のゆったりとした雰囲気がそれを助長するせいもあるかもしれません。

夜、寿司と森の緑とオセロと

好きな寿司を好きなだけ食べよう。しばらくのところ、胃の調子が悪かったパートナーもようやく以前と同じようにしっかり食事が出来るようになりました。そこで今日はお好みで握ってもらうことにしました。

数点のおつまみを仕立ててもらってから、握りを。満腹になるまで食べました。ここは程よく肩肘張らない雰囲気があって、リラックスした気分で寿司を頂けるのも魅力のひとつだと思います。
デザートにはたい焼きとアイスクリームを…と、同じハイアットでも、我々がグランドハイアット東京の旬房ですっかり有名となっている組み合わせを食べたくなりました。そう、Twitterで交流のあるMASAさんがやっているのを見て、すっかり我々もはまってしまったあのセット。この滞在の翌日にちょうど会う予定があったこともあって、パートナーとふたりで話していたら、板前さんも興味深そうに話を聞いていました。
そして…アイスクリームをもなかの皮で挟んで出してくれました。さくさくのあとのもちっとしたあの食感と、抹茶のアイスクリームの組み合わせ。たい焼きとは違うけれど、このシンプルな美味しさも好みでした。
夕食のあとにはリビングルームに出ると、パティオの植栽に光が当てられていて、その緑色がとても綺麗に見えました。我々の他には誰もおらず、静けさの向こうにホテルのスタッフが食器を片付けたり、フロントで業務をこなす音がします。その音が妙に頼もしく、ホテルが生きている感じがしたものでした。
リビングルームには長居せず、パートナーと私のどちらからともなく「部屋に戻って、例のあれ、やろうか?」と、提案します。前回ここに滞在したときにもふたりで「オセロゲーム」で遊んだのですが、今夜もひと勝負しようと話し合っていたのでした。
部屋に戻るとターンダウンが終わり、縦長の枠の障子が閉まっていました。行燈のぼんやりとした明かりが、いかにも和の空間の趣ですが、部屋は全体的にはモダンな雰囲気。そのコントラストが面白いところです。しばらくすると、スタッフがオセロゲームを持ってきてくれました。
単純なルールのゲームながら、ふたりとも、さながら真剣勝負のように熟考してしまい、気づいたら1時間近くやっていました。さて結果は、前回の滞在に続いて、今回も私の負け。小さい頃によく遊んだものですが、大人になって改めて遊んでみると意外と楽しいものですね。すっかりこのホテルでの恒例の時間になっています。
健闘を讃えあって、お風呂の時間。さっき温泉に行きましたが、今度は部屋のブロアーバスでゆっくりしました。消灯すると真っ暗な山の夜。静かな森の中にふくろうらしき声も聞こえていました。

山の新緑を眺める朝、そしてクラシックホテルのアップルパイ

翌朝も快晴とは行きませんでしたが、山の稜線が美しい箱根の朝。ささっと準備を済ませて、朝食に向かいましょう。

スーパーポテトデザインのクリアーな魅力ある空間を抜けて、煉瓦で囲まれたプライベート感のある席に案内されました。前回来た時はセットメニューだったけれど、今回はブッフェが復活していました。洋食も和食もともに種類が豊富にあり、何を取ってこようかとあれこれ迷います。私は普段洋食がほとんどですが、ふと和食の組み合わせも少しだけ食べたくなって、ごはんと一緒に小分けにされた温玉や明太子などをブッフェから取ってきました。

コーヒーを飲みながら、山の緑は私の背後に。じつにゆったりとした時間の流れる朝でした。

このホテルの東館と西館をつないでいる緩やかに湾曲したこの渡り廊下。さりげないのですが、朝の明るい光と新緑がまぶしく、なんとも清々しい気持ちになります。チェックアウトまで部屋に戻って読書でもしようか。今日はお互いに貸し借りしていた本をお互いが持ち寄っていました。詩集と小説。ときどき昼寝もしながら、圧倒的に静かなホテルの昼。

なんだかアップルパイが食べたい、とパートナー。そして我々が思いついたのが、先日リオープンしたばかりの日本を代表するクラシックホテルのひとつ「富士屋ホテル」のラウンジに行くことでした。幼少期から何度も箱根を訪れていながら、いつも宮ノ下のこのホテルは素通りしていたのですが、ずっと気になっていたホテルでもありました。

そこで少し早くチェックアウトして、富士屋ホテルでティータイムにしようということになりました。ホテルを出るときに、またどうやら今回で私はこのホテルの10回目の滞在だったとのことでちょっとした記念品を貰いました。随分たくさん泊まってきたのだなという気持ちと、もっとたくさん泊まっていたような錯覚を引き摺りながら、我々の名前を覚えてくれているスタッフたちにあたたかく見守られてこのホテルをあとにしました。

空いている山道をしばらく走って、宮ノ下地区に到着。御殿のような壮麗な建物とロマンあふれる白亜の建物が見えると、そこが富士屋ホテル。車で坂を登っていくと、スタッフに誘導されて駐車場へ。裏口の回転扉から館内に入ります。単にクラシカルという言葉だけでは表現したくないほどに、空気感までも異なる歴史の重みあるホテルがそこにはありました。
階段を登っていったところにあるラウンジも、昔ながらの意匠をしっかりと残しながら、センスよくリニューアルがなされていました。その圧倒的な重厚感の中に身を置くと時間旅行をしているかのような感覚になってきます…いや、しかしいまはまだ、多くは語りたくありません。このホテルに足を踏み入れたその瞬間からすっかりその魅力に取りつかれてしまいました。このホテルを語るのは改めてゆっくり泊まりに来たときに。それはパートナーも私も同じ想いだったようで、写真を撮る手を止めて(それゆえ我々にはめずらしくほとんど写真がありません)、その第一印象をおもいっきり刷り込み、ふたりで興奮気味にいつか泊まりにこようと話し合っていました。
なおアップルパイの味わいが特筆すべきものであったことは強調しておきたいところです。冷製と温製のふたつから選ぶことができるのですが、シナモンとレモンがしっかり香り、しっとりとしたパイの生地と瑞々しいりんごの味わいが絶妙な調和を実現していました。私は冷製をア・ラ・モードにしてもらったのですが、温製の方がよかったかもしれません。濃厚というよりはちょっとさっぱりしたバニラアイスもまた良いアクセント。
その歴史性のみならず、料理もホスピタリティも実質を伴う素晴らしいホテルという印象を持ちました。思いがけない出会いだけれど、すっかりこのホテルの魅力に惚れ込んでしまった我々でした。
モダンなホテルもいいけれど、クラシックホテルもやっぱりいいよね…ハイアットリージェンシーも富士屋ホテルも、時代を超えて、ここ箱根には魅力的なホテルがたくさんあるということの幸せを感じます。またそう遠くない未来にも楽しみなホテルの新規開業も控えています。世相は相変わらずですが、こうしたホテルの数々がしっかり存続していくことを願ってやみません。空いている帰路をドライブしながらそんなことを感じていました。
フォローお待ちしています