セントレジスといえば、創業者のジョン・ジェイコブ・アスターがニューヨークに開いた超高級ホテルとして知られています。また現在ではマリオット傘下となった、シェラトンやウェスティンといったブランドを有するスターウッドの最上位ブランドとして世界中の主要な都市やリゾート地に系列ホテルがあります。
前回はこのホテルのオーバービューとデラックスキングルームをご紹介しましたが、今回はセントレジス大阪のサービス水準や朝食の印象などについてリポートしてまいりましょう。
バトラーサービス
セントレジスといえば、もちろん優雅で上質な空間もそうなのですが、全客室にバトラーサービスをつけているということも大きな特徴のひとつといえましょう。もともとはフラッグシップにあたるセントレジスニューヨークで1世紀以上の昔から行われてきた伝統のサービスであるとのことです。
具体的には以下のようなサービスを標準メニューとして用意してありました。
- 荷造りサービス
- ドリンクサービス
- 衣類のプレスサービス
荷造りサービスとは要望があれば、荷ほどき・荷造りをバトラーが行ってくれるというものです。私は今回はあまり荷物もなかったので特にお願いはしませんでしたが、長期滞在のときなどは重宝しそうです。同じく衣類のプレスサービスもありますが、こちらは2着まで無料というものです。それ以上になると、通常のランドリーサービスにお願いすることになります。
そしてドリンクサービスは、ホテルに到着した時や朝の目覚め時に飲み物(コーヒー・紅茶・ジュース)を持ってきてもらえるというものです。もちろんホテルラウンジなどでも同様のサービスを受けることができますが、客室にバトラーが飲み物を運んでくれるというのも、ふっとゆっくりできて良いものだと思いました。
私も今回の滞在は朝早く起きることになっていたので、前日の夜にモーニングコールをお願いしました。すると「飲み物もお持ちします」とのことで、コーヒーをお願いしました。
このときの電話の応対は気が利いていて感心したのですが、まずは目覚ましの電話をして、その5分後にコーヒーを届けるように手配してくれました。朝早く目を覚ますとしばしぼーっとする時間が嬉しいものですが、ほどよく眠気が抜け始めた絶妙なタイミングでのコーヒーサービス。きわめて心地よい目覚めとなりました。
評価: 4.5バトラーの方はみなさんとても丁寧な対応で好感が持てました。ただしやや意地悪な見方をすると、同レベルの高級ホテルであれば、「バトラーサービス」と名乗らなくても実質的には同じようなサービスを提供しているホテルも数多く、あまりセントレジスのバトラーとしてのオリジナリティは感じられませんでした。おそらくサービスがリクエストベースになっているあたりもこうした印象を与える原因になっているのではないかと思います。もし最高水準を追求するのであれば、もう少しバトラーの側が積極的にサービス内容を提案されたら(例えば、私はプレスサービスがあることはホテル到着後に調べてはじめて知りました)と感じました。
ホテルのスタッフの方々も一部やや不親切に感じる方がいたものの、ほとんどの方は柔らかく笑顔で恭しいもてなしを提供されていて、気持ちのよいものでした。
朝食とルームサービスと
今回の宿泊はアメックスプラチナのファイン・ホテル・アンド・リゾート(FHR)を通しての宿泊だったので、その特典として無料の朝食がついていました。
ホテルのフロントもある12階「ラ・ベデュータ」にてブッフェ形式の朝食が用意されています。ここも天井が非常に高く開放感があります。シャンデリアもシンプルなデザインながら、かなり大きなもので迫力があります。今回は早朝だったので他に誰もいないので、非常にゆったりとした朝食を取ることができました。
コールドミールは隣接するメインバーである「セントレジスバー」のカウンターに用意されています。ラインナップは必要なものは一通りあるという印象です。またチーズの質がなかなか優れていたのも印象的です。
オープンキッチンに沿って、ホットミールが並びます。雰囲気から洋食が中心かと思いきや、和朝食に点心なども用意されていました。パンの質も悪くありません。
ブッフェのラインナップとは別にエッグベネディクトなどの卵料理やパンケーキなどを注文することができます。私はフレンチトーストを持ってきてもらうことにしました。熱々しっとりのフレンチトーストに、ベリーコンポートとメープルシロップを合わせる。思ったほど甘過ぎることもなく、上品な仕上がりでした。
ルームサービスも利用してみましょう
セントレジス大阪のアメックスプラチナのFHR特典には100USドル分の食事代クレジットが含まれています。これはルームサービスにも利用できます。せっかく大阪にいるので「関西風」を謳っているものが欲しくなってしまいます。
そこでお願いしたのが、この「関西風肉うどん」…見た目の通り、かなり牛肉のボリュームがあります。
しっかりと取られた出汁と薄口醤油が決め手となっている、まさにシンプルながら奥の深い味わい。うどんもコシがつよすぎず、たまねぎの甘味と牛肉のコクがよく絡み合うようになっています。付け合わせの温泉卵がまろやかな口当たりをもたらし、単調になることなく最後までおいしさを堪能することができました。
夕暮れのセントレジスバーでくつろぐことにしましょう
同じくアメックスプラチナのFHR特典はバーでも利用できます。私はお酒を飲まないのですが、モクテルが好きなので仕事を終えてホテルに戻ったら、喉が乾いていたので、メインバーの「セントレジスバー」でなにかすっきりするものを頂くことにしました。
こちら「セントレジスバー」の奥には「安土桃山時代」をイメージした大きな絵画が飾ってあります。極めて西洋的なニュアンスの強いホテルですが、同時に「ジャポニズム」など欧米の19世紀の日本趣味のようなものを感じさせられるところもあります。あるいは新しい和洋折衷の形といえましょうか。ジャパニーズモダンとも異なる、ともすると下品になってしまったり、安っぽくなってしまいがちな「絢爛豪華な日本」をこういう形で示しているのはセンスの高さを感じます。
奥にはマントルピースも見えますね。このときはあまり他の客もいなくて静かな時間が流れていました。
私が注文したのはバージンモヒート。これがあるとつい頼んでしまいます。モクテルとはいえ、バーによってレシピが異なり、レモンジュースやアップルジュースをベースにするものがあったり、シンプルにサイダーとライムだけでつくるものがあったり…なお大阪のセントレジスバーのバージンモヒートはサイダーをベースにしながら酸味控えめ、黒糖の甘さが心地よくもミントですっきりする、というものでした。満足度は高いです。
まもなく開業から10年になるセントレジス大阪ですが、現在でもハード・ソフトの両面で大阪を代表する高級ホテルと言ってもいいレベルを保っています。プールや専属のスパなどがなく、やや設備面での不足感も感じなくはないですが、センスのよい空間構成やバトラーをはじめとする恭しいサービスは魅力的。しかし最近のコンラッド大阪やインターコンチネンタル大阪の開業などライバルの出現も気になるところです。また近いうちに同じくマリオット系列のW大阪なども開業する予定となっており、そうした流れのなかで、どのような立ち位置を保っていくのかは注目すべきといえましょう。