純然たるホテルレビューをしてまいります。冒頭にいきなりこのような宣言をするのは、何を隠そう今回のステイは一切の特典なしの宿泊だったからです。
今回は東京にあるプリンスホテル系列の最高級ホテルである、ザ・プリンスギャラリー東京紀尾井町の宿泊期です。こちらのホテルはスターウッド系列の高級ブティックホテルである【ラグジュアリーコレクション】にも登録されています。ラグジュアリーコレクションとしては日本で京都・翠嵐に続いて2番目。もちろんマリオット+SPGの各種の特典の適用対象となっており、上級会員であれば、客室のアップグレードや朝食やラウンジの利用などがついてきます。ちなみに私はといえばマリオット+SPGの会員ではないので、こうした特典の恩恵を得ることはできません。
他方でこちらはプリンスホテル系列としても、これまでのフラッグシップである【ザ・プリンス】を超えた最上位のホテルとして位置づけられています。かつて一世を風靡した「赤プリ」こと「グランドプリンスホテル赤坂」のあとに完成したラグジュアリーモダンなホテル…果たしてその実力はどれほどのものなのでしょうか。
ホテルの第一印象
エントランスから入り、エレベーターで最上階まで向かいましょう。
こうしてたどり着くのがこのロビーラウンジです。かつて完成予想図が公開されたときに、どのような雰囲気になるのだろうと思っていたのですが、ほぼその予想図のままになっていて驚きました。これは現在ある東京のホテルのロビーのなかでも際立って前衛的で印象に残るロビーといえましょう。なお階段の下にはラウンジ&バーがあります。
こちらがホテルのフロントです。ロビーラウンジがダークな中にネオンが光る「黒」の空間だったのに対して、こちらは「白」に暖色系のカーペットが明るく落ち着いた雰囲気です。コントラストを強調したインテリアのうまさには思わず唸りました。
ホテルは複合施設である【東京ガーデンテラス】に位置しており、いくつかのレストランやコンビニエンスストアなどへも簡単にアクセスできます。なお敷地の中にはかつてここが「赤プリ」だった当時から保全されている旧李王家邸を改装した「赤坂プリンスクラシックハウス」もあり、現在はレストランや結婚式場として利用されています。
早速チェックインといきましょう。ちょうど我々が到着したときは、満室に近い稼働状況だったらしく、ロビーにもかなり多くの人がいました。フロントのスタッフの方々はなるべく素早い対応を心がけようとしていました。しかしここでちょっと不満だったのが、今回利用した宿泊プランには朝食が含まれているかどうかの説明や、チェックアウト時間の確認などをすっかり飛ばして、部屋まで案内されたこと。もちろん絶対に必要なサービスではないにしても、ラグジュアリーホテルの対応としてはちょっと詰めが甘い感じがしました。
朝食
このホテルの朝食は36Fにある「オアシスガーデン」でブッフェ形式で取ることができます。
なおレストラン全体の写真は人が多かったので割愛。
朝食は洋食を中心としてバリエーションは豊富です。フォアグラオムレツやトリュフスクランブルエッグなどのこだわりの卵料理もオーダー式で作ってもらえます。ただし個人邸にトリュフスクランブルの風味については疑問符がつきましたが…。
パンケーキなどもふんわりとした仕上がりのものが用意されており、朝食のメニューには力を入れていることを感じさせられました。ただしフロントの対応についても上で述べましたが、こちらについてもオペレーションに難があるという印象を持ちました。というのも、レストランのエントランスにちょっとした行列ができており、そこでしばらく待たなければならず、他方で黙ってぼーっと立っているスタッフの方がいるという状況でした。さらにとにかく注文したものが出てくるのが遅い…
もしかしたら混雑しているときに偶然当たってしまっただけかもしれないので、過度に一般化はできないのですが、もう開業してしばらく経っていることに加え、いやしくもプリンスホテルの最上級のラグジュアリーホテルであることを考えると、少々この対応は好ましくありませんでした。
【客室編】デラックスキング
気を取り直して客室をみてまいりましょう。今回我々が宿泊したのはデラックスキングという部屋のタイプです。
部屋に入ってまず感じたのは、とにかく部屋が「明るい」ということです。窓の大きさもそうですが、インテリアが全体として白やあたたかさを感じる色のもので取り揃えられており、部屋全体が明るいのです。ホテルにありがちなムードのある雰囲気とは一線を画す感じで好印象です。
テレビもかなりの大画面ですが、部屋の雰囲気を壊さないように工夫されており、圧迫感はまったく感じることはありません。明るい色合いの壁やカーペットに合わせた、淡い色合いのウッドデスクや白いデスクチェアもセンスの良さを感じます。良い意味でプリンスホテルらしさがない気がします。どちらかといえば、先日宿泊したW台北の客室の雰囲気にも似ていると思いました。
ガラスのテーブルの上には無料のミネラルウォーターとチョコレートのサービス。
バスルームは一面ガラスばりでベッドルームから中が丸見えになっています。もちろんガラスはスイッチひとつですりガラスにすることができます。こうした工夫によってさらに客室の開放度が増していました。
なおヘアケア・ボディケア・ボディローションはREMEDE(ルメードゥ)のもの。ウッディ系のさわやかな香りなのですが、なぜかやや重ためな余韻を残します。また洗い上がりの感じはややごわつきを感じます。
トイレは独立式。最新型のものが備え付けられており快適です。
ベイシンはこのような感じです。上下の色が逆になっているグラスがおしゃれです。ウォッシュスポンジやマウスウォッシュの用意などもあり、アメニティは申し分ないほどに充実しています。
ホテルの評価
今回は混雑しているなかで宿泊したためかもしれませんが、ソフト面ではかなり対応の粗さが目立ってしまったように思います。とりわけチェックインの際の余裕のない対応や、レストランのオペレーションの悪さ(上には書きませんでしたが、ディナーに行ったモダン和食の「蒼天」でもこれは際立っていました)は、あまりラグジュアリーホテルとしては評価できないものでした。
もっともスタッフによっては極めて丁寧かつフレンドリーに対応していただける方もいたので、このあたりは個人差がかなりあるのかもしれません。もちろんどのようなホテルであっても、大なり小なりこうした問題は出てきますが、素晴らしいホテルというのは、そうした欠点を補って余りあるだけの魅力を兼ね備えているものです。今回は残念ながらそのような魅力ある対応やリカバリーに出逢えなかったのだと思います。
他方でハード面は、東京に数あるラグジュアリーホテルと比べても遜色ないほどに充実していたと思います。開放的で明るいインテリアの客室や、コントラストの効いた前衛的なロビーの雰囲気など個性的な空間デザインがなされていると感じました。
交通アクセスについても赤坂見附の駅から徒歩5分程度と近く、ビジネスや観光にも便利かと思います。車でのアクセスも駐車場に加えて、バレーパーキングも行われており、快適に利用できます。
周辺でライバルとなるようなホテルといえば、ホテルニューオータニ東京でしょうか。しかし【ニューオータニ】が幅広い客層に開かれつつ、古き良き日本の老舗グランドホテルの趣を強く持っているのに対して、【ザ・プリンスギャラリー東京紀尾井町】は最先端の設備かつライトな雰囲気であることから、客層の住み分けはできているのではないかと思います。ソフト面での粗さも目立ってしまいましたが、かつての「赤プリ」が持っていたライトでトレンディな趣がこのホテルにはいまもなお息づいていると思います。