大阪梅田からアクセスの良い最高級ホテルというと、私の中ではリッツカールトンが不動の地位を占めていました。この評価についてはいまもって揺るがないものですが、近年の最高級ホテルの開業ラッシュの中で、ここ大阪にも気になるホテルがたくさんできていることもまた事実です。
インターコンチネンタルは、東京や横浜ではすっかり馴染み深いホテルとなっていますが、別府にリゾートホテルを開業させて話題となっていました。また同ブランドの属するIHG系は、もともと日本全国にクラウンプラザを展開させるなどの規模の大きさに加えて、箱根や犬山にIndigoを、そして東京・新宿にKimptonを開業させる予定があり、まさに注目すべきホテルチェーンのひとつといえましょう。
さてインターコンチネンタルについて、私の中では、サービス水準にある程度のむらがあるものの、総体的にはバランスの取れたホテルが多いイメージがありました。ただ最高級ホテルとして見た場合にはやや物足りなさを覚える…ミドルクラスホテルの水準よりは上だけれど、かといって、例えばパークハイアットのようなレベルまでは要求できない、そのかわりにコストパフォーマンスには優れている…そういうイメージもありました。
大阪のインターコンチネンタルについては、勝手にそうしたイメージの延長で見ていました。ただ写真などをみる限りは、東京にあるインターコンチネンタルのホテルよりも質感が高い印象を受けていました。たまたま今回は梅田近くに用事があったこともあり、またレートがリッツカールトンよりもよかったために、せっかくだから滞在をしてみようということになりました。
チェックイン
今回は鉄道で延々と時間をかけて大阪まで来たので荷物も身軽。大阪駅から歩いてホテルまで来ることになりました。駅からはペデストリアンデッキとグランフロント大阪の中を歩いてくれば、雨風に関係なく快適にホテルまで行くことができます。ちなみに徒歩5分くらい。
近年開発された多くのホテルと同じく、1階は簡単なレセプションとエレベーターホールがあるのみ。階上にフロントがあります。
エレベーターを降りるとこのようにロビーが広がっており、ストーン調の床とダークウッドの壁で重厚感がある雰囲気かと思いきや、ビビットカラーの仕切りがあったり、ブルーのシャンデリアがあったり…個人的な印象としては、高級指向に振りたいのか、それともポップな路線に振りたいのか、少し戸惑うところです。ただインターコンチネンタルらしいといえば、まさにそういう雰囲気で、ラグジュアリーの堅苦しさを適度に散らしながら、しかし決して軽薄ではない空間。
反対側の雰囲気もこうしたインテリアコードの延長線上にあります。勝手な印象で、こういう空間づくりはヒルトン系列などにも共通しているように思います。よく言えば重厚感と軽やかさをうまく融合させていると言えますが、例えば、上質感を求めて宿泊をするとなるとやや物足りないかもしれません。ビジネスでひとりで利用する時などはこういう雰囲気は個人的にありがたいと思っています。空間にムードがありすぎないため肩の力を抜けるし、同時に高級ホテルの快適さも堪能できるので。
さてチェックインの手続きは、説明不足も特になく、親切かつ丁寧なもので好意が持てました。また客室へのエスコートもあり、そちらのスタッフもにこやかで感じがよかったが印象的です。ゲストとの距離感は程よいものだと思いました。
デラックスダブルビュールーム
続いて客室の様子を見てまいりましょう。全体的に明るい雰囲気で、ここもフロントのあたりのインテリアコードと基本的にはつながっているように思われます。ムードを求めたいときには物足りませんが、やはりひとりで滞在するときであれば、これくらいの明るさがあったほうが心地よいと思います。
客室空間の広さ自体は45m2以上と余裕があり、高級ホテルの要件は十分に満たすものと言えます。ものの配置についても、快適な椅子と大きめのデスクが用意され、ビジネス需要にも十分に応えるものだと思います。またリラクシングチェアやデイベッドなどもしっかりと用意されていて、くつろぎたいという要望も満たせます。空間配置の巧みさについては、スタンダード客室としては不満のないものと言えましょう。あとはこのような客室の雰囲気が好きかどうかという判断軸になるかと思いますが、個人的には、ひとりで滞在するのであれば、大いに「あり」だと思いました。
反対側はこのようになっており、基本的な空間配置はホテルのスタンダード客室の標準的な文法に則ったものになっています。ただバスルームはガラスで仕切られてベッドルーム側とシースルーになっています。もちろんこれは不透明のガラスによってバスルームを隠すこともできるようになっています。
この部屋のもうひとつの特徴としては、テレビについているスピーカーがBoseの重低音の効くものになっている点でしょうか。それ以外にもポータブルスピーカーも用意されていて、音楽を聞いたり、映画を鑑賞したりするには便利かと思います。
この客室で特徴的だと思ったのが、こちらの石造りのチェストです。デスクに一体化されるように作られていて、茶器が乗せられているところに、日本的なものを感じさせられます。このようにさりげなくローカルのものをインテリアに取り入れる手法はなかなか上手で、他にも同じくIHG系列のインターコンチネンタル横浜の港町らしさを強調した空間づくりなどを思い起こさせられるものでした。
コンプリメンタリーのものはミネラルウォーター2本。特にターンダウン時の補充はありませんでした。またTWGの紅茶がしっかりと用意されているのは好ましい点です。そしてネスプレッソ。特に過不足のないラインナップという印象です。
クローゼットはウォークインになっていて、それなりに収納力のあるものです。バスローブやスリッパの質感は特に感動するようなものではありません。またシューシャインサービスも特に提供されていないようでした。
バスタブの形状についてはしっかりとした深さもあり、特に不満はありません。またシャワーの水圧についても特に問題なく快適に利用できます。バスソルトも「桜」と「竹」の2種類が用意されており、またバスルームにはテレビと連動するスピーカーが備え付けられているので、ゆったりとしたバスタイムを過ごすこともできるように工夫されていると感じました。
バスアメニティはインターコンチネンタルではおなじみの「アグラリア」です。レモンヴァーベナの爽やかな香りですが、個人的にはやや癖があるように思います。また使用感については可もなく不可もなくというところでしょうか。フェイスタオル・ハンドタオル・バスタオルも3セット用意されており、特にひとりで滞在するにしては十分すぎるほどだし、ふたりで利用するにしても不足はないと思います。
プール・スパ施設
すこし時間に余裕があったので、少しプールで泳ぎつつスパ施設も利用してみることにしました。こちらの施設について宿泊客は無料で利用することができるほか、フィットネスウェアや水着などのレンタルも無料でできるようになっています。このあたりのサービスは非常に充実していていいですね。
私が行ったときには誰もいなかったのでプールの様子も…奥のガラス壁に水が流れているほか、ガラス貼りのジャグジーもありました。特に艶めかしさはありませんが、全体的にすっきりとして透明感・清潔感があり、快適に利用することができました。
付属のスパ施設の奥は大浴場(撮影禁止なので写真はありません)になっていて、ロッカールームと一体化しています。サウナもしっかりと用意されているもので設備面での不満はありません。ただ個人的に残念だったのがバスアメニティがこのホテルやスパのものではなかったこと。例えばグランドハイアット東京のように、クリスチャンフロリアンのアメニティが置かれているなどしたら、最高評価を与えられるくらいの内容なだけに残念ではあります。
ただしリラクシングベッドやテレビもあり、ロッカーエリアのサイズ感も狭すぎず広すぎずでちょうどよいものかと思いました。
全体的な評価
インターコンチネンタル大阪は2020年時点の同系列のホテルとしては新しく、設備面でも過不足のないものになっていました。またスタッフの対応も全体的にとても感じがよくそうした意味でも好印象のホテルでした。さらに評価すべきこととして、他の大阪の最高級ホテルに比べると全体的に安いレートが出やすいということも挙げられるでしょう。もちろん日にもよりますが、私が滞在したときは、コンラッドやセントレジス、あるいはリッツカールトンなどと比べて、かなり割安になっていました。
インテリアコードについては利用する目的を選ぶかもしれません。私であれば、もしロマンティックなひとときを過ごしたいということであれば、他のホテルを選ぶかと思います。しかしある程度明るい雰囲気でくつろぎたいとか、少し優雅なビジネス利用をしたいというのであれば、かなり選択肢としては有力になってくるのではないかと思います。
場所としてはリッツカールトン大阪と、ホテル全体の雰囲気としてはコンラッド大阪と競合するかと思われます。リッツカールトンとは客室やホテルに求めるものが異なると思うので、単純なホテルの選択ではさほど迷うことはなさそうです。しかしコンラッド大阪については、場所を気にしないならば、どちらにするのかは非常に悩ましいところです。個人的な印象では空間の洗練度合いなどについてはコンラッドに軍配が上がるかと思いますが、インターコンチネンタルの雰囲気も決して負けずとも劣らないと思いました。