最近のホテルに関する話題について語る1

その日は風のとても強い日でした。いや、みなとみらいというのは、横浜の他のところにそよかぜが吹いていても、海からビルの間を抜けていく風の強さを常に感じるような気がするので、そのような語り方は正確性に欠けるかもしれません。乾いた冬の海風に身を晒して、なんだか切ない気持ちに浸るのも悪くはないのですが、さすがに体調を崩してしまいそうなので、やはり休憩を取ることにしましょう。

横浜ロイヤルパークホテルのロビーは天井が高いグレイッシュな空間。全体的にごてごてしたクラシカルな雰囲気を持ったアイテムが飾ってあるし、そもそもこのホテルの名前が「ロイヤルパーク」というコンサバティブな響きなのに、無機質な感じをもつモダンなビルの硬さと合わさって、なんだかクールな雰囲気を持っています。

好意的にみれば、両極端な要素が共存している、意地悪な見方をすれば、なんだか方向性が見えない…私の個人的な見解については、ここではあえて、つまびらかにしないつもりです。というのも、このように語る私自身が、この空間を好意的にも意地悪にも見ているからなのです。もちろんデザインセンスの高いホテルはそれ自体でも十分評価されるべきですが、基本的にホテルという箱は、中にいる人によって、その色合いを与えられているのだと改めて思った次第です。

さて、それはそうと、最近のホテルに関する話題について、きまぐれに取り上げて、私なりの視点から語ってみようと思うのです。

THE HIRAMATSU 京都が3月18日に開業

美味しい料理を食べることがホテルステイの目的であってもいいかもしれません。そしてフランス料理の「ひらまつ」が手がける「THE HIRAMATSU HOTELS & RESORTS」は、そういう目的にかなり適った魅力的なホテルを展開していることでも知られています。

レストランとしてはどちらかというと都市型の印象が強く、またフランス料理の名門の「メゾン ポール・ボキューズ」などを擁していることから、かなり西洋的なニュアンスを持っていそうな気がするのですが、同グループのホテルがこれまで展開してきたのは、賢島・熱海・箱根仙石原・宜野座とローカル色の強いエリアばかりです。宜野座はともかく、これまで温泉旅館が圧倒的に優位だったエリアに、フレンチという武器を片手に新しい風をもたらしてきた。なんとなくそのようなイメージがあります。

今回開業する京都の「THE HIRAMATSU 京都」はそういう意味での規則性に則っているような気もしつつ、これまでとは違った側面もあるように思うのです。京都市営地下鉄「烏丸御池」駅にも程近い中京区室町通というかなりローカル色の強い立地での開業です。しかしこれまでのリゾート地とは違う都市のまんなかでのオープンでもあり、そういう意味では同グループ初の試みともいえるかもしれません。ラグジュアリーホテルが続々と開業している京都にあっても、京都市営地下鉄の駅からほど近い立地というのはかなり珍しいと言えましょう。

開業直後のモニタープランなどもいまは販売しているようです。すでに開業しているラグジュアリーホテルに対して、場所や料理以外でも、このグループならではの独自性をどう打ち出していくのかが注目すべき点だと思います。

余談ですが、こちら京都にはすでに「ひらまつ」系列のレストランである「ひらまつ高台寺」があります。これはすっかり私の定宿になりつつある「パークハイアット京都」のすぐ隣にあります。パークハイアットよりも先にこの地に開業していまして、以前に一度行ったことがありますが、料理の質の高さはもちろんですが、素晴らしい眺望とスタッフのホスピタリティの高さに感心した記憶があります。そのときの滞在が「ハイアットリージェンシー京都」で、このホテルも良いホテルですが、そのときはスタッフの対応があまり気持ちの良いものではなかっただけに、余計に「ひらまつ」のレベルの高さに感動したものです。このサービス水準が新しい「THE HIRAMATSU京都」でも実現していたら、と思うばかりです。

マリオット系列ホテルの開業日発表相次ぐ

ハイアットに主に忠誠を誓っている私としては、ここのところの国内や周辺諸国でのハイアットの開業ラッシュやSLHとの提携の拡大に心を踊らせていました。最上位ブランドのパークハイアットも国内の2箇所(京都・ニセコ)にオープンしたし、2020年には待ちわびた「横浜」や「金沢」の開業も控えているところです。しかしそれ以降の動きについては、なんとなく鈍い気がしてならないのも正直なところです。もちろん大好きなホテルというのは、何度足を運んでも素晴らしいものですが、やはり新しいホテルの高揚感というのは、初恋の心境に似ているものです。

そうした意味ではマリオット系列の動きというのはやはりうらやましい。これまでだってかなり面白そうなホテルが数多く開業しているし、今年も、そしてその後にも数多くの計画が目白押し。いつも隣の芝生は青いという気持ちで見つめているのです。

さてそんなマリオット系列のホテルですが、ここのところ、本年の目玉になるようなホテルの開業日の発表が相次いでいます。個人的に特に気になっているホテルは以下のところ…

JWマリオット奈良:4月?

メズム東京・オートグラフコレクション:4月27日

ザ・リッツ・カールトン日光:5月22日

公式ページの写真をみるかぎり、おそらく奈良県内ではトップレベルのラグジュアリーホテルになることは間違いありません。私はまず間違いなく行きたくなるでしょう。しかし奈良には地味だけど面白いホテルがあることもまた事実。こちらのページで少し触れたクラシックな奈良ホテルとかSLHの登大路ホテルもいいですね。静かに古都の空気に触れられるところがこれらのホテルの魅力。しかしそうしたホテルとは対照的な華やかなホテルの出現。どの世界観に行こうか、という悩みがこの魅力的な古都に増えることは喜ばしいことです。またもう少し先になりますが、モダン旅館の「ふふ奈良」も6月に開業予定ですね。

メズム東京は上に挙げた3つの中では最も地味かもしれません。JR東日本ホテルズとの提携で竹芝埠頭に開業する同ホテル。対岸の浜離宮を挟んだ対面にヒルトン系列の「コンラッド東京」があります。公式ページをみるかぎり、フィットネス施設はあるもののプールはなし。レストランも1箇所のみというシンプルなもので、ロビーや客室のイメージをみると、いかにもモダンなブティックホテル然とした雰囲気を感じます。なんとなく「プルマン東京田町」にも似ているような気もしますが、最近この手のブティックホテルが増えてきたので、ちょっと食傷気味。マリオットらしい突き抜けた感じがうまく出せるのかお手並み拝見というところでしょうか。

最後にリッツカールトン。まだ公式ページがないために確認しようがないのですが、中禅寺湖畔に位置する温泉大浴場付きのラグジュアリーホテルとなるようですね。リッツカールトンというと、かなり重厚な雰囲気を得意とするイメージがありますが、いくつかのネット上のイメージをみてみると「日光」の場合はなんとなく「軽い」雰囲気があるような気がします(パークハイアット京都を少しだけ連想した)。こちらもJWマリオット奈良と同じように、予約開始と同時にTwitterなどでは多くの方が予約をされている様子を見ました。それだけ期待が高いところなのは間違いなく、また私も少し落ち着いた頃に足を運んでみたいものです。

ザ・ベーシックス福岡が3月1日に開業

ラグジュアリーホテル関連の話題からみると、こちらはかなり地味なのですが、私が個人的に前々から気になっていたホテルが福岡に3月1日に開業します。知っている方は知っているかと思う(当たり前)のですが、こちらはもともと「ハイアットリージェンシー福岡」だったところをリノベーションして、さらにリブランドオープンさせるというものです。ちなみに運営会社は「グランドハイアット福岡」と同じです。

かつてハイアットのロイヤルティプログラム「World of Hyatt」が「ゴールデンパスポート」だった頃には、いわゆる「回数修行」のメッカとして知られていた同ホテル。晩年はかなり客室の老朽化が進んできていて、印象的かつ重厚な外観とのギャップが寂しかったのですが、今回のリブランドでは、外観を残しつつも内装を現代にも通用するものへと大改造しているようです。もはやハイアット系列ではなくなるので、当然のことながら、World of Hyattの会員資格などにはまったく関係がないのですが、あえてかつてを偲ぶために、そしていまの姿を楽しむために、訪れてみたいホテルのひとつです。

さて、横浜ロイヤルパークホテルという名前に因んだわけではありませんが、ロイヤルミルクティーを飲みながら書類に目を通したら会議に出発です。最後の最後までこのホテルの色合いはわからないままでしたが、ここ横浜にも新規ホテル開業の波が寄せてきています。その波にも乗りたいですが、一度、こういう「古くもないけれど新しいわけでもない」ホテルの魅力を見つけていくこともまた楽しいこと。機会があればこのホテルにも滞在してみたいものです。

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