修行じゃないフライトでJGCの価値や不要論について考える

東京(羽田)から鹿児島までのフライトといえば、国内線としては長距離の部類に入るものですが、比較的混雑が少ない時期であれば、長閑な空の旅をすることができるものです。また九州の中でも最南端ということも手伝って、比較的温暖な気候や独自の文化など目的地としても素晴らしいエリアです(もっとも私は今回のフライトはとんぼ帰りだったので、さほどそうした素晴らしさを堪能する機会はなかったのですが)。

今回はまさに閑散期の鹿児島フライトをしてきたので、そのリポートです。またJGC会員として飛ぶときに素朴に感じていることなども少し書いてまいりたいと思いますので、「修行」を検討されている方にとっての検討材料になるかもしれません。

羽田空港にて思ったこと

羽田空港はいつきても不思議な高揚感に満ち溢れるものです。やはり「ここではないどこかへ」という雰囲気に胸踊るのでしょうか。しかしここで繁忙時などに重なると、チェックインから荷物預け、そして保安検査などで行列ができていることもあり、ここでなんだか気だるい気分になってしまうものです。

こういうときにはやはりJGC会員のメリットを強く感じます。

JGC会員の特典

  • 優先チェックイン
  • 手荷物優先
  • 空港ラウンジ利用
  • 優先搭乗
  • ボーナスマイル等

なにしろ専用のカウンターでチェックインや手荷物の機内預けなどができてしまうし、そのあとの保安検査も専用のゲートが用意されています。経験則ではこの出発前に並んだ経験ということはほとんどありません。ここでのストレス軽減の効果はかなりのものだと思います。

しばしば国際線を多く利用する場合であれば、プレミアムエコノミー以上に搭乗するとJGC会員としての価値はほとんどなくなってしまうという声も聞かれます。私もそのように考えたこともあったのですが、国内線の場合はこのようなサービスを得られるファーストクラスは新千歳・伊丹・福岡・那覇(満席率が極めて高い)の各線にしか用意されていないので、やはりJGC会員としてのメリットはあると思います。

サクララウンジをあえて利用しない

保安検査場を抜けた先には、ダイヤモンド・プレミアラウンジとサクララウンジがあるわけですが、JGC会員はサクララウンジにアクセスすることができます。なおJALファーストクラスの利用者やJMBダイヤモンド会員・JGCプレミア会員はダイヤモンド・プレミアラウンジを利用できます。

両方のラウンジも質感自体は高く、特にダイヤモンド・プレミアラウンジについては提供される飲み物やスナック類もそれなりに充実しているのですが、最近は激しい混雑に巻き込まれることが多くなったように感じます。以前大阪に行ったときにはファーストクラス利用にてダイヤモンド・プレミアラウンジを利用したのですが、早朝だったこともあり、自分の好みの席を確保することができませんでした。

ラウンジに強いこだわりがあるならば、がんばって居座ることもいいのでしょうが、私は別にそこまでしなくても良いのではないかと思います。空いているときにはラウンジでゆっくりして、逆に混雑しているときは検査場通過後の制限エリア内を探検してみるのも楽しいものです。

今回の鹿児島フライトでは混雑しているラウンジをスルーして、制限エリアを歩いてみました。ISETAN HANEDA STORE(ここもコンパクトにまとまっていて楽しい店です)の中に「Rose Bakery」というカフェをみつけました。さほど種類は豊富ではないものの、パウンドケーキやコーヒー・紅茶などが揃っていて、感じの良い店員さんのいる気持ちのよい店です。

店内はこのようにかなり空いています。サクララウンジ(そしておそらくダイヤモンド・プレミアも)の混雑から解放されて、このようなゆったりとしたスペースでエスプレッソとパウンドケーキを堪能しながら、行き交う人々を眺めながら搭乗時刻を待つのも楽しいものです。あるいは窓側の席に腰掛けたら飛行機の離着陸を間近にみることもできます。

Rose Bakeryの窓はこのカフェの真横にある10番搭乗口にも面しており、CAや操縦士たちが飛行機に乗り込んだり、グランドスタッフが準備する様子なども眺めることができて、旅情をかきたてられます。なおこの日の鹿児島便も10番搭乗口からの出発。搭乗時間15分前くらいになったら搭乗口で待つことにしましょう。

鹿児島行きのフライト

今回の鹿児島便の使用機材はB767-300ER。日本航空への最初の納入は1986年なので、もう30年以上ものベテラン機です。同じ時代に飛んでいたB747やB737の退役が進む中で、中型機の主力を担い続け、いまだに第一線で活躍している機材です。

伝統の「鶴丸」から「太陽のアーク」へ、そして再びの「鶴丸」へと戻されたこの機材。最新鋭のB787などと比べるとさすがに設備面での古さを隠せませんが、機内の座席などは新しいものに取り替えられています。ちなみにB767-300ERは日本航空が世界の航空会社で初めて導入した「ローンチカスタマー」でもあります。

30年選手のB767-300ERで鹿児島まで2時間ばかりの空の旅に出発です。

優先搭乗について

JGC会員の特典のひとつには優先搭乗があります。しかし持ち込み手荷物をハットラックに優先的に入れられる以外のメリットはあまり感じないものです。会員数の多い幹線路線などではかなり長蛇の列となってしまうこともあります。こうした混雑は結局のところ不可避なのであるから、つとめておとなしく、いつ乗っても同じなのだというくらいの余裕をもって乗り込みたいものです。

しかしこの鹿児島便は全体的に乗客数が少なめであったので、優先搭乗でスムースに乗れてしまいました。別に優先搭乗でなくてもよかったのですが、近くのカフェにいたので、さっさと乗ってしまったのです。

さて乗ってしまえばあとは鹿児島まで向かうだけ。この日の天気はさほどよくなく、乱気流の影響でかなり激しい揺れに見舞われました。なお今回搭乗したのはエコノミークラスでしたが、後方の席だったこともあってか、隣席には誰も乗ってこなかったのでゆとりがありました。早く搭乗して、早く降機したいという観念さえなければ、繁忙期以外は比較的余裕のある空の旅が実現できるのは後方のエコノミークラスなのかもしれません。前方に比べて時間がかかるとはいえ、10分と変わらないはずです。ましてや受託手荷物があるならば、なおさらのことでしょう。

鹿児島空港にて

鹿児島空港は山間にありランディングのときには、住宅街のあとに山が迫り、なかなかスリリングな離着陸を味わうことができます。またこの空港には日本エアコミューターの離島便もたくさん来ているため、プロペラ機も色々とみることができて楽しいものです。

帰りがけに撮影したATR72-600。フランスとイタリアの共同事業体であるこの機材。関東圏ではまず見ることができない機材であり、ちょっと嬉しいです。描かれたハイビスカスが南西諸島への旅を連想させます。

南西諸島のアイランドホッピング(修行)の定番は那覇空港をベースにするものですが、こちら鹿児島空港からも様々なルートがあり、よりローカル色が強くて楽しそうです。もしJGC会員になるための回数修行を考えていらっしゃる方がいたら、福岡空港も組み込みながら鹿児島を拠点にしてみるのも良いかもしれません。

鹿児島空港に限らないことですが、このような乗り継ぎカウンターが用意されている空港は多いものです。しばしばJGC修行僧の方のもつ疑問のひとつに、同じ空港を往復するときに制限エリア内だけで過ごしていいのかというものがありますが、これは大丈夫です。一度空港の外に出て、また保安検査を通過して戻ってくるのもいいし、保安検査を受けずに制限エリアで次の飛行機を待っていてもいいわけです。

もし不安がある場合にはこのような「乗り継ぎカウンター」に問い合わせれば丁寧に教えてくれます。またオンラインで予約した場合であれば、乗り継ぎ便の座席位置などを示したレシートも発行してくれます。

鹿児島空港のサクララウンジは?

鹿児島空港にもJGC会員が利用できるサクララウンジがあります。しかしこのラウンジの規模はさほど大きくないために私が行ったときにはほぼ満席の状態でした。こういうときは羽田空港のときよろしく、通常の待合席あたりをぶらぶらして過ごすのがいいのではないかと思います。無理やりラウンジを利用して混雑ゆえのストレスを抱える必要などありません。

なお鹿児島空港の制限エリアにはこのような軽食を取れる場所もあります。特産品の「黒酢」や「黒豚」などが並んでいます。もちろん市内の名店などには及ばないでしょうが、ちょっとした面白いものが見つかったりするかもしれません。

そうこうするうちにあっという間に搭乗時間。東京への夜間飛行のはじまりです。じつは往路と同じクルーのみなさんが搭乗していました。CAさんたちから「おかえりなさいませ」とか「往復ともにご利用いただきありがとうございます」という声をかけてもらいました。あるCAの方に話を聞いてみると、JGC修行で搭乗されている方はそれなりに多いようで、もはや「修行」が変に思われたりするようなことはないそうですね。

私はこのとき「とんぼ帰り」のフライトで、特に修行という意識はなかったので、「特に今回はマイルの修行というわけではありません」と正直に話したために逆に変な人と思われたかもしれません。それほどまでにエアライン修行というものが広く知られる営みになっているのだと感じさせられました。そういうわけで修行の初心者の方には是非とも自信をもっていただきたい(?)と思います。

フライトを振り返って

さてこのようにエアライン修行を推奨するようなことを言っておきながら、今回のフライトを通して、改めてJGCの会員特典の意義についてあれこれ批判的に考えることもありました。

チェックインに関連することについてはまだまだメリットがあるので、この点は高く評価できると思います。しかし優先搭乗の意義は果たしてどれほどあるのだろうかというと疑問符が残ります。そして今後の展開も含めて気になったのがラウンジのあり方についてです。

今回は羽田も鹿児島もラウンジが混んでいたこともあり、狭い空間に人が殺到していると逆にストレスになってしまうのではないかと感じました。もちろん空いている時間帯もありますし、そういうときにすこしゆったりしたり、ビジネスコーナーで仕事を進めたりするのは良いのですが、ラウンジに過度の期待は持たない方がなにかと良いのではないかと思います。プライオリティパスなどがあれば航空会社ラウンジ以外の質の高いラウンジを利用することができます。また制限エリア内を歩いてみると思いのほか、面白いレストランやカフェに巡り会えたり、居心地の良い待合スペースや作業ができる場所を見つけることもできるように思います。

そもそも空港にそこまで長時間滞在する必要があるものでしょうか?わざわざラウンジのために早く空港に来るならば、私であればその前の場所での滞在時間を長く取りたいと考えるものです。こうした観点でホテル修行は合理的だとは思います(ホテルラウンジを利用できるならば、空港よりも充実していることが多いので)。するとわざわざ「修行」をしてまで上級会員を獲得するメリットとはなにか?と考えてしまいます。また会員数の拡大にともなって各航空会社は上級会員向けのサービスを改変していくことはしばしば指摘されています。そんなことを考えてみると、出張が多かったり、飛行機が好きでしょっちゅう乗っているうちに自然と…というような流れで上級会員になり、さほどそれらのサービス特典に強く依存しないというのが精神衛生上は良いのではないかと思います。

もちろんこれはあくまでも一個人の一時点の感覚的なものにすぎないので、修行の営み自体を否定するものではありません。私自身は振り返ってみると、自然と上級会員になっていたパターンかと思いますが、思いがけないルートやFOP比率を効率よく計算したりする楽しさも同時に強く印象に残っています。きわめて一般論的になってしまいますが、やはり「それが楽しい」となることが、たとえ「修行」であっても必要不可欠なのではないでしょうか。

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