カハラホテル横浜宿泊記・みなとみらいのきらきらしたハワイアン・ラグジュアリー

160年以上前の開港から日本と世界を結びつけてきた横浜の街。特に横浜駅から山手に至る横浜港を中心とした都心部は、東京に程近い場所にありながら、独特の異国情緒を漂わせる風格ある街並みを持ち、数多くの人々を惹きつけてきました。みなとみらい地区はそうした横浜の街にあって、海のそばにあるビジネス街であり、同時にアーバンリゾートとしての性格を持つ魅力あるエリアです。

もともとは三菱重工の造船所や貨物線、あるいは倉庫が立ち並んでいたこの地域は、いまやおしゃれな海沿いの街並み。海や航海をイメージさせるふたつのインターコンチネンタルホテル、燦然とそびえるランドマークタワーの眺望を欲しいままにするロイヤルパーク…そうしたホテル群のなかに、2020年9月23日に開業したのが、ザ・カハラホテル&リゾート横浜。

ハワイのオアフ島にある名門ラグジュアリーホテルとして知られるカハラホテル。最新の設備と共にそのサービス・ホスピタリティを横浜に実現すべく開業したこちらのアーバンリゾートホテルに先日宿泊する機会を得ました。今回はそのときの様子についてリポートしてまいりましょう。

チェックイン

昼過ぎに待ち合わせして、車で快調に湾岸線を走り横浜を目指します。みなとみらいはいつものように少し風が強くて、海からも秋の冷たさを感じさせられるような日でした。ホテルのエントランスに横付けすると、すかさずスタッフがバレーサービスで車を預かってくれます。スタッフにエスコートされて最上階に位置するロビーエリアに。

ロビーエリアにくると天井が高く、きらきらとしたシャンデリアが印象的な空間に。スクエアのなかにクリスタルガラスを散りばめて曲線的に仕立て上げた照明が白と黒のコントラストに映えます。さほど広さはないのですが、高い天井と大きな窓のために開放感がしっかりと確保されていました。またこのロビーエリアの奥にはラウンジがありますが、予約がない場合には、1時間以上待つこともしばしばで、開業してまもないとはいえ、知名度と関心の高さを物語っているようでした。

客室数に比してゲスト数が多いからなのか、それとも開業直後の混乱のためか、チェックインにもしばらく時間がかかります。ハワイのホテルらしい軽快なユニフォームのスタッフに促されて、ソファでしばらく待ちます。チェックインを行うカウンターのところには、玉状のクリスタルカーテンがあり、ロビーのきらびやかな雰囲気をさらに高めていました。

反対側に目を転じると、みなとみらいのスカイビュー。帆船の帆のようなインターコンチネンタル、コスモクロックやランドマークタワー。さらに遠くを見渡せば、横浜港に出入りする船や、関内、山手といった街並みが。

こうした新規開業のホテルにしては珍しく、年齢層がかなり広く、高齢のゲストの姿も多く見られました。そうした世代を問わない多様性は、カハラホテルの知名度の高さゆえなのか、それとも横浜という場所の雰囲気なのか…そんなことを考えているうちにチェックインの準備が整いました。

客室:ザ・カハラ・グランド

スタッフにエスコートされて客室へ。今回の滞在はスタンダードルームのグランドルームです。

クリスタルモダンをデザインコンセプトにした、かっこよさとかわいらしさが同居するようなインテリアコード。白と黒のコントラストの中にさりげなく花のモティーフ。そしてアクセントに紫色が使われているのも素晴らしい。眺望は目の前にあるパシフィコ横浜の屋根に遮られており、さほど開放感はありませんが、それでもみなとみらいのビル群が見えるようになっていました。

ベッドの硬さもカウチの大きさもバランス感覚に優れており、快適に過ごせます。現在の横浜のホテルでもトップレベルの上質な客室と言っていいでしょう。

客室は回遊できるようになっている構造。ベッドルームの奥の方にウェットエリアがあり、中央にバスタブが置かれ、右手にトイレブース、そして左手にレインシャワー付きのシャワーブース。ベイシンもダブルシンクで使い勝手も良好。なによりも白が強調された空間がホテル全体の雰囲気にも溶け合って、とても美しいものです。

バスアメニティはカハラホテルオリジナルのもの。環境配慮とのことでミニボトルではないものの、使用感も香りもとても好みのものでした。バスオイルもサイプレスに加えて、プルメリアの香りが用意されており、お湯に入れた瞬間に広がるのは常夏の甘さ。ミラーの部分にテレビもついていて、ゆったりとくつろげるバスタイムを過ごすこともできます。

きらきらしたカハラホテルで過ごす横浜の夜

煌びやかなホテル。「ぎらりとした」ホテルにはエネルギッシュな魅力がありますが、このホテルは落ち着きがありながらも輝かしい「きらきらした」魅力を持っています。

チェックインを済ませてしばらく部屋でくつろいでいました。カウチで伸びているだけでもなんだか幸せであたたかい気持ちになってきます。ロビーラウンジに行ってみてもよかったのだけれど、フロントに確認したところ混雑していて入場に1時間はかかるとのことで断念。

代わりにちょっとしたドライブも兼ねて、ホテルニューグランドのチョコレートパフェを食べに行ってきました。バニラアイスにチョコレートアイス、メレンゲがずっしりと入ったなかに、ナッツとホイップクリームが乗っており、さらにたくさんのチョコレートソース。現代的な洗練はないけれど、とても幸せな甘い味わい。ずっとここのパフェが好きだったのですが、パートナーを連れてくることができてよかったという思いを強くしました。

伝統を今に伝えるクラシカルホテルと、現代の横浜を牽引するような最新のラグジュアリーホテル。その対比に面白さを感じながら、部屋に戻ってきました。

日が暮れかけてきたところで、仕事のオンライン会議が入っていたため、フルハイトウインドウに面したエレガントなデスクにPCを準備。傾きかけた太陽に照らされる横浜港や高層ビルは、どことなく憂愁をたたえていて、この街の夕方のムードに溶け合っていました。

パートナーはカウチでくつろいだり、雑誌を読んだり、自由気ままに過ごしていました。ホテルでこうしてオンラインで仕事ができるのは便利であると共に、こうして付き合ってくれる彼女にも感謝しつつ、夜まで会議。いつも場所が異なると、気持ちもなんだか新鮮です。仕事を終えた頃にはすっかりあたりは暗くなっていました。

本当はこのホテルに併設されたイタリア料理のOzio(オッツィオ)でディナーとしたかったのですが、すでに満席。予約の電話もなかなかつながらずかなり盛況のようです。そこで私が提案したのが、先日滞在したときに行けなかったハイアットリージェンシー横浜のファインダイニングであるミラノグリル。

4品のコースは秋を感じさせる組み合わせで、とてもあたたかみのある夕食でした。

ゆったりと食事と会話を楽しんでからホテルに戻ってくると、みなとみらいの夜景を向こうに映す夜の窓。シャンデリアのきらめきと響き合うように美しいロビーエリアは、すっかり静かになっていました。ベルデスクはホテルの顔とよく言われますが、即座に我々の名前を覚えてくれていて、おかえりなさいませ、の声。

部屋に戻るとターンダウンが済まされたあとで、ベッドサイドにはナイトキャップのチョコレート。チャーリー・チャップリンの文句が添えられていたのですが、妙に心に染みる言葉でした。横浜の空に虹はかかっていなかったけれど、空を見上げたい気分になりました。

ウェルカムアメニティで用意されていたマカダミアナッツチョコレートを少し食べてみました。朝にこのホテルのブティックに行列ができて、あっという間に完売してしまうというものですが、たしかに…ミルクチョコレートの甘さとナッツの香ばしさ…個人的には、驚くほどの美味しさを感じたわけではありませんでしたが、この綺麗な客室でリラックスしたムードで食べるのは幸せな気分だなと思いました。

風呂からでて、少しあたたかくなっているところに、氷を落としたミネラルウォーターを飲みます。部屋のライトを消すと際立つのはコスモクロックのイルミネーション。そして横浜港の様々な色の光。東京の夜景ともまた違った広がりを持っていて、心地よい気分で眠りに落ちることができました。

翌朝の朝食はイタリアンや和食のレストランは席数が少ないためか事前に予約が必要とのことで、ゲストは宴会場「ボールルーム」でブッフェ形式で頂くことができます。正直なところ、仮設の「朝食会場」みたいな感じがして、気分はそれほど乗らなかったのですが、ハワイらしさを感じるガーデンサラダや砂糖たっぷりのマラサダ、またBBQソースをかけたローストビーフなどもあり、質も量も大変満足のいくものでした。

ここで必ず頂きたいと思うのは、やはりカハラホテル名物の「シン・パンケーキ」でしょうか。薄く焼いたパンケーキをくるりと巻いたもので、もっちりとした食感に蜂蜜がよく合います。ここに熱いコーヒーを合わせるときに、甘さのあとに、しゃきっとした目覚めの心地よさと感じられるものです。

朝食を取ったあとは、外出しようかとも考えたけれど、結局部屋でのんびりと過ごすことにしました。あっという間に時間は過ぎて、昼になり、チョックアウトの時間。草書的な自由さを感じさせる装花がこの開放的な空間によく合います。特に混乱もなく非常にスムースな手続きを終えて、このホテルをあとにする時間です。

今回はホテル併設のレストランやスパトリートメントなどを受けることはできませんでした。しかしそれでもこのホテルの空間の美麗さやホスピタリティの高さを十分に感じられる滞在でした。横浜という都会にこれほどまでにリゾートを感じさせる場所が生まれたということは、ホテルファンならずとも幸いであると言っていいでしょう。またこのホテルがもう少し落ち着いた頃に、改めてじっくりと堪能しに再訪したいと思いました。

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