情勢にさほどの変化は見られないけれど、季節はたしかに変わっている。桜吹雪が終わり、梅雨までのしばしの新緑のひととき、我々もその心地よい5月の風を感じられる場所にドライブしたいと思いはじめていました。都心からさほど苦労することなく車で移動できて、緑豊かな場所に行くとなると、ある程度の候補が考えられました。北関東に足を伸ばすか、甲州か、あるいは東海道、伊豆方面か。
決断まではさほど時間がかかりませんでした。私が3つほど気になる候補を挙げて、パートナーが最も行きたいという場所を選んでもらう。そのようにして、我々の行き先がハイアットリージェンシー箱根と決まりました。昨年の10月の下旬以来の訪問となり、緑の美しさが印象的だった滞在…今回はそのときの様子についてリポートしてまいりましょう。
チェックイン〜少し静かな森の道を抜けて
ゴールデンウィークは混雑していた東名高速も、今日はさほど混んでいないね。そんなことを話しながら一路目指すのは箱根。いつも混んでいる大和トンネル付近も今日は停止することなくスムーズな流れでした。どういうわけか、我々は箱根というと、昼に蕎麦を食べるのです。よく立ち寄る蕎麦屋を出たら、御殿場を経由してから本日の滞在先であるハイアットリージェンシー箱根に到着しました。
途中の道も空いていたけれど、ホテルもかなり空いている。時間を問わずそれなりに人のいる印象の「リビングルーム」も今日はとても静か。曇り空でも窓の向こうに見える新緑の萌黄色がとても綺麗でした。
チェックインを担当したスタッフは若い笑顔を満点にして、「山の景色のよく見えるお部屋か、眺望は劣りますが、和室付きのスイートルームもご用意できます」と言いました。もともとマウンテンビューの部屋を想像していたのですが、パートナーと顔を見合わせて、せっかくだからまだ泊まったことない部屋にしようか。そして部屋の準備ができるまでのあいだ、しばらくリビングルームで待つことになりました。
パートナーは久々にスパークリングワインを、そして私はペリエにライムを入れたものを。
いつ以来だろう?前に来たときはここに薪が焼べられていたけど、いまはないね。でも、今日もほんのりと木の匂い…
そうこうするうちに部屋の準備が整ったようです。
和室付きのスイートルームに
印象的な渡り廊下を抜けて、東側の建物へ。この建物にはドッグフレンドリールームや、温泉施設izumiがありますが、今日の部屋はその最上階の最も奥に位置していました。
部屋に入ると暖かみのある色合いのインテリア。ハイアットリージェンシーらしい低めのベッド。そしてなによりもこの部屋の特徴と言えるのが、畳敷きの和室スペースでしょうか。8畳分の広さはそれなりにゆとりがあり、また全体にモダンな雰囲気のこの客室に違和感なく溶け込んでいます。奥の方にはテラスがあり、山の空気をめいっぱい吸い込むことができるようになっています。
ウェットエリアもかなりゆとりのあるつくりとなっています。ダブルシンクのベイシン。そしてブロアーバスのついた独立式のバスルームがあります。高級感はやや乏しく、無駄に広いと言えなくもないのですが、すっきりとしたシンプルなインテリアが好ましいです。このあたりの味付けはハイアットリージェンシーらしいところと言えましょうか。なおバスアメニティは最近おなじみの「紫」のファーマコピアでした。
部屋でしばらくだらだらと過ごします。少し早めの時間に夕食の席を予約していたこともあり、特にどこかに出かけることもなく、またラウンジのカクテルタイムもパス。代わりにしばし温泉でゆっくりすることにしました。じつは前にふたりで滞在したときにはこのホテルの温泉に結局一度も入らなかったので、彼女にとっては初めてのハイアットでの温泉。
すっきりとしたインテリアが印象的なスパIzumiの温泉には、やや熱めの褐色のお湯が張られていました。これは私だけかもしれませんが、ここの温泉に入ると、いつもなんだか眠気を誘うように体がくたっとする気がします。もっともこれはホテル全体のゆったりとした雰囲気がそれを助長するせいもあるかもしれません。
夜、寿司と森の緑とオセロと
好きな寿司を好きなだけ食べよう。しばらくのところ、胃の調子が悪かったパートナーもようやく以前と同じようにしっかり食事が出来るようになりました。そこで今日はお好みで握ってもらうことにしました。
山の新緑を眺める朝、そしてクラシックホテルのアップルパイ
翌朝も快晴とは行きませんでしたが、山の稜線が美しい箱根の朝。ささっと準備を済ませて、朝食に向かいましょう。
スーパーポテトデザインのクリアーな魅力ある空間を抜けて、煉瓦で囲まれたプライベート感のある席に案内されました。前回来た時はセットメニューだったけれど、今回はブッフェが復活していました。洋食も和食もともに種類が豊富にあり、何を取ってこようかとあれこれ迷います。私は普段洋食がほとんどですが、ふと和食の組み合わせも少しだけ食べたくなって、ごはんと一緒に小分けにされた温玉や明太子などをブッフェから取ってきました。
コーヒーを飲みながら、山の緑は私の背後に。じつにゆったりとした時間の流れる朝でした。
このホテルの東館と西館をつないでいる緩やかに湾曲したこの渡り廊下。さりげないのですが、朝の明るい光と新緑がまぶしく、なんとも清々しい気持ちになります。チェックアウトまで部屋に戻って読書でもしようか。今日はお互いに貸し借りしていた本をお互いが持ち寄っていました。詩集と小説。ときどき昼寝もしながら、圧倒的に静かなホテルの昼。
なんだかアップルパイが食べたい、とパートナー。そして我々が思いついたのが、先日リオープンしたばかりの日本を代表するクラシックホテルのひとつ「富士屋ホテル」のラウンジに行くことでした。幼少期から何度も箱根を訪れていながら、いつも宮ノ下のこのホテルは素通りしていたのですが、ずっと気になっていたホテルでもありました。
そこで少し早くチェックアウトして、富士屋ホテルでティータイムにしようということになりました。ホテルを出るときに、またどうやら今回で私はこのホテルの10回目の滞在だったとのことでちょっとした記念品を貰いました。随分たくさん泊まってきたのだなという気持ちと、もっとたくさん泊まっていたような錯覚を引き摺りながら、我々の名前を覚えてくれているスタッフたちにあたたかく見守られてこのホテルをあとにしました。