そのために旅行する価値のあるホテル…それは必ずしも高級ホテルとは限りません。
私はホテルや旅館が大好きで、しばしばその宿泊を主な目的にして旅行計画を立てるほどです。そのような宿泊が目的となるようなホテルや旅館は、いわゆる高級ホテルや高級旅館であって、滞在にかかる費用も高額になってしまうことも多いものです。しかし中には個性が光る低廉なホテルや旅館というものもあり、それを発見することもまたホテル愛好家にとっての楽しみのひとつであったりします。
今回ご紹介するのは、横浜・桜木町にあるニューオータニイン横浜プレミアムです。東京の日系ホテル御三家の一角を占めるホテルニューオータニ(御三家は他に帝国ホテルとホテルオークラ)が手がけるビジネスホテルとはどのようなものなのでしょうか。
ホテルの評価と情報
ニューオータニインは全国に3軒ある(横浜の他に東京・札幌)ホテルニューオータニ系列のビジネスホテルです。もともと横浜には同じ名前のホテルが黄金町にありましたが、名前はそのままにして桜木町駅前に2010年にリ・オープンしています。
このホテルは複合ビルの【ヒューリックみなとみらい】の中に入居しており、同じビルの中にショッピングモールの【コレットマーレ】やシネマコンプレックス【横浜ブルク13】などもあります。ビルの名前が物語るように、みなとみらい地区にもかなり近く、ランドマークタワーまでは徒歩3分くらいで行くことができます。
さてビジネスホテルというと、このように利便性が高い場合が多いのですが、それだけではなかなか「そのために旅行する価値がある」とまでは行きませんよね。実際に多くのビジネスホテルは、規格化された(多くの場合)狭い部屋に必要最小限のものが備わっている、という印象があります。もちろん機能的でひとりでなにもせずただ寝るだけならば、それでも全く問題ないのですが、ホテル愛好家としては、いまひとつ物足りなさを覚えてしまうものです。
あとで話しますが、このニューオータニイン横浜プレミアムも、一見すると、そのように規格化されて平準化されているが故に価格が抑えられたビジネスホテルのように思えます。そして実際に部屋のサイズ感や設備の配置などは、標準的なビジネスホテルと大差ないのです。しかし宿泊してみると、規格化された空間を上手に活用して実に質の高い部屋に仕立てたものだ、と感心してしまいました。それはビジネスホテルに求める期待を良い意味で裏切ってくれる体験であるといえましょう。
宿泊記
今回は自家用車で向かいましたので、駐車場に停めて、隣接するショッピングモール【コレットマーレ】のなかを通ってエントランスに向かいました。
入り口はこのようになっています。コレットマーレの3Fにこの連絡口があるほか、1Fに車寄せと2Fの桜木町駅やみなとみらい方面からのペデストリアンデッキに面してエントランスがあり、電車できた場合はそちらからも入ることができます。ちなみにこちらの3Fのエントランスはコレットマーレが閉館する20:00には通り抜けができなくなるので注意が必要です。
なお、コレットマーレの中や桜木町駅前、ランドマークプラザなど近辺にレストランやカフェ、コンビニなどが多くあり、食事する場所にはおそらく困らないでしょう。
エントランスからロビーに向かうと、全体的に壁も床もブラックでシックな印象。そこにブルーのライトがアクセントになっています。あまりはっきりと記憶しているわけではないのですが、ANAのラウンジにもどことなくこのような雰囲気の場所があったような??
このホテルは「海」をイメージしているとのことですが、赤い錨のようなオブジェも置かれています。
こちらがロビーエリアです。奥のほうに見えているのがフロントとオールデイダイニングのTHE seaです。この日はけっこう賑わっていました。
ロビー階の窓はかなり大きく取られていて開放感があります。
帆船日本丸が目の前にみえることでより「海」のイメージが強調されます。こうした空間の演出のうまさはなかなか優れていると思います。黒を主体にしているあたりは東京の本家ホテルニューオータニの最近のデザインコードとも重なるものを感じますね。
さて、たしかにこのような開放的な雰囲気は並みのビジネスホテルにはないものです。しかし問題なのは客室の快適性です…
宿泊客専用のエレベーターに乗って客室に向かいます。エレベーターは最近のホテルではほぼ標準化されたカードキーをかざすと目的階に行けるシステムでした。
廊下はこのような雰囲気。このあたりもモノクロをベースに青い光がアクセントになっています。
なおエレベーターを降りて右手の方にひっそりと自動販売機コーナーがあります。
扱っている品目はこのような感じ。なおミネラルウォーターがやたらと多いと感じられるかもしれません。それというのも、残念ながらこのホテルにはコンプリメンタリーのミネラルウォーターのサービスがありません。
ビジネスホテルにはよくあることですが、このあたりは仕方ありません。気を取り直して客室に向かうことにしましょう。
客室自体はこのようにかなりコンパクトにまとまっています。配置自体は通常のビジネスホテルとさほどの違いはありません。ベッドの硬さも枕も良くも悪くも標準的です。
またビジネスホテルによっては枕チョイスのサービスを行なっているところもあるので、このあたりは無難なまとめかたをしていると思います。
こちらはベイシンエリア。このあたりもシンプルかつ機能的なまとめられ方ですね。なおトイレも特に独立式というわけではありません。
バスタブも必要最小限です。
アメニティはPOLAのエステロワイエシリーズです。このあたりもビジネスホテル御用達といえましょう。
さてここまで読んできて、特にこれといった特徴がないではないか?ちょっとおしゃれな空間デザインのビジネスホテルレベルではないか?と思われた方もいるかもしれませんが、このホテルの魅力はもうすこし別のところにあります。
ふたたびベッドルームに戻ってみてみましょう。
ベッドの向かい側はこのようになっています。堂々たる50インチのプラズマテレビが壁にかかっています。写真でみるとそれほどのインパクトはありませんが、実際にこれを目に前にするとなかなかの存在感です。
これはスマートフォンと連動させることもできるし、DVDデッキの無料貸し出しも行なっているので、映画を満喫することもできます。この大型のテレビは本家のニューオータニにもあり、同ホテルの売りのひとつともなっています。それを低廉なこのホテルで楽しむことができるというのはちょっと得した気分になるというものです。
そしてこのホテルのもうひとつの特徴が眺望の素晴らしさです。残念ながらこのホテルのダブルルームはシティサイドのみです。
ちなみにこのような景色です。可もなく不可もなくというところでしょうか。
しかしベイビューのツインルームとなると…
この眺望を堪能することができます!
みなとみらいと向こうの方にベイブリッジが見えます。手前側の汽車道や関内方面などおよそ横浜らしいミナトの風景をすべて一望のもとにおさめることができるわけです。
夜になるとさらにこのようなロマンティックな眺めになります(写真はエレベーターホール横にある窓から撮りました)。
まとめ
このようにニューオータニイン横浜プレミアムは基本的にはビジネスホテルです。したがって高級ホテルにあるようなものを求めることはできません。
もちろんこのホテルが周辺のインターコンチネンタルやロイヤルパークといった中堅シティホテルほどの価格だったとしたら泊まらないでしょう(私は現在のところみなとみらいで最も良いホテルはヨコハマグランドインターコンチネンタルだと思っています)。しかしビジネスホテルゆえの低廉な価格設定、そして上に述べたような魅力から独自のポジションにあるホテルだと思います。大画面のテレビや利便性の高さから得られるエンターテイメント性、そしてなんといっても素晴らしいみなとみらいの眺望を合わせて考えると、そのために旅行する価値のあるホテルに数えられると私は思います。