パークハイアット京都宿泊記1〜東山の新しいパークスイート

普段は飛行機の移動が多いのですが、今日は東海道新幹線での移動。私が東海道新幹線に乗るときというのはおおよそ目的地は名古屋か京都と決まっています。目指すは京都…ついに開業した「パークハイアット京都」を目指します。ここのところ京都に超高級外資系ホテルの進出が相次いでいますが、ついにハイアット系列の最高級ブランドである「パークハイアット」が、東山の高台寺のそばにオープン。さっそくその世界観を体験しにいこうという訳です。

ほぼ同じ時期に「アマン京都」も開業したり、横浜には「インターコンチネンタルPier8」が開業したりと、ホテル好きとしては、選択肢がぞくぞくと増えて嬉しいような、忙しいような、そんな状況。しかし私の期待はやはり「パークハイアット」にありました。個人的にも日本の数あるホテルの中で最も好きなホテルであるパークハイアット東京…その国内2軒目の同ブランドのオープンとあれば、否が応でも期待は高まるというものでありました。

京都駅で新幹線を下車し、さっそくタクシーでホテルに向かいます。

いつのまにか、ますます増えた世界中からの観光客に混じって、列を成します。京都は少なくとも外見上、日本でもっともグローバルな都市ではないかとさえ思いました。烏丸口ではなく、新幹線の乗り場に近い八条口からタクシーでホテルへ。まだ開業したばかりなので、住所を伝えたりしなければならないのか?と思いきや、運転手はすでにどこにあるのか把握していました。開業と同時にこちらではすでにそれなりの知名度があるのかもしれません。

エントランスにつくと、このように文字通りの門構え。ここにスタッフが待機しており、荷物を運んでもらいつつ、ホテルフロントまでエスコートしてもらいます。

門を潜ると、このような回廊があり、奥の建物の左にいくとロビーラウンジ。右にいくとカジュアルダイニングの「KYOTO BISTRO」がありました。なんだかここの雰囲気だけみると、どこかの旅館にでもきたような感覚になります。実際に料亭の「京大和」の敷地内にあるということをさておいても、東京にあるハイアット系のホテルの印象を持ちながらいくと、ここまでローカライズされた空間になっていることは驚きでした(いかにもなハイアットらしさを感じなかったという意味で)。

チェックイン

チェックインはロビーラウンジにて行います。この日は開業したてなのに加えて、連休の中日ということもあってかなり大勢の客が訪れていました。宿泊する客もいましたが、ロビーラウンジのアフタヌーンティーなどの利用客が多かったようです。

一見して連想したのは、アンダーズ東京のラウンジエリアでした。特に中央部分に鎮座している大きなウッドテーブルやモダンスタイルの暖炉などに共通点があり、実際にデザインもトニー・チーが手掛けているとのことでした。

さてチェックインの手続きなのですが、パークハイアット東京であれば客室内(あるいはコンシェルジュデスクにて)で、またアンダーズ東京であればラウンジで飲み物を飲みながら…となるので、そのイメージでいたのですが、特にそういうわけでもなく、立ったまま比較的狭いフロントカウンターで行いました。

チェックインの時間は15:00からということで客室はすでに用意されていると思っていたのですが…まだ準備が整わず、どこかで時間を潰してきてほしいと言われました。客室の準備ができたら電話をもらえるとのことでした。仕方なくとりあえずどこかで待つことにしました。

チェックインのときの不手際

チェックインの手続きについては、開業直後ということを置くにしても、ややお粗末な対応が目立ちました。客室の準備ができるまで待機する場所がどこかを聞いても、よく分かっていないようでした。またそのしばらくあとで、「手続きに時間がかかるので、とりあえずラウンジスペースの適当な席に掛けてお待ちください」と言われたので、その席についた途端に、「こちらは他のお客様で満席なので、席を空けてください」と他のスタッフに言われてしまいました。どうやら部局間での連携がうまくいっていないようです。後述しますが、他のいろいろなサービスについても、このような連携が十分に取れていないことが多くみられました。次に滞在するときには、この点が改善されていることを願ってやまないところです。

連携不足のためにチェックインについての不手際がありましたが、5階に宿泊客専用のティーラウンジがあり、そこで待機することができるとフロントのスタッフに言われた我々は、とりあえずそこで客室が用意できるまで何をして過ごそうか考えることにしました。

ティーラウンジはまだ発展途上?

1階のロビーラウンジの奥の方に宿泊客専用のエレベーターがあり、それで5階までいきます。

するとこのような開放感のあるティーラウンジにたどり着きます。右手には料亭「京大和」の建物と一緒に日本庭園があり、なんともいえない落ち着きを醸し出しています。

奥の方からはこのようなパノラミックな眺望を望めます。二年坂の人通りや八坂の塔、そして遠くにみえる京都の街並み…伝統的な日本建築の街並みがあるエリアならではの景色です。この雰囲気だけでも十分のこのホテルの魅力になりうるのではないかと思いました。

しばしばホテルの価値を決めるのは何かということを思います。もちろん宿泊設備の快適さやサービスレベルは不可欠の要素で、それらの水準が高ければ高いほど、そのホテルの質は高いと言えます。しかし同時にホテルある種の「非日常」を求めるときに、そのホテルが立地している場所というのは、とても重要な軸になるのではないでしょうか。例えば、超高層ビルから世界都市を眺望するというのも個性だし、素敵な通りに面した小さなホテルというのも面白い。

パークハイアット京都が、この二年坂の入り口にあるということに、個人的にはとても魅力を覚えました。

さて、肝心のティーラウンジですが、このようにほとんど誰もいません。1階のロビーラウンジがかなり多くの人で賑わっているのとは対照的な感じがします。おそらく総客室数もそれほど多くないため、このような静けさがこのホテルの本来持つ(ことを期待されている)雰囲気なのでしょう。

いまのところ(2019年11月現在)は、ここのラウンジに用意されているのは、ミネラルウォーターのみ。このミネラルウォーターは日本酒の「黄桜」の仕込みに使われる水のようで、いかにも京都のホテルらしいこだわりを感じます。しかし「ティーラウンジ」なのに、肝心のお茶がないというのはなんとも矛盾した状況だと思います。将来的にはなんらかのサービスが展開されるのでしょうか?

しばしこのラウンジで時間を潰したあとで、結局、二年坂あたりを散歩しながら客室が準備できるのを待つことにしました。

パークスイート

二年坂を清水寺方面に向かって歩き、右に左に展開しているおしゃれなカフェやお店を眺めているのも、なかなか楽しいものだと思いました。ただし数多くの観光客で賑わっているので、もう少し人の少ない時間に歩いてみたい気もしました。そうこうする間に客室の準備ができたという連絡が入り、ゆっくりとホテルに戻ることにしました。

廊下はかなり薄暗く、まるで廊下に置かれた行燈のように、スタンドランプが立っています。白い壁と木目の組み合わせというインテリアコードは、いかにもトニー・チーらしさを感じます。ひいてはアンダーズ東京の廊下なども連想させられて、やはりここは「ハイアットらしい」と思ったところです。

今回滞在するのはパークスイート。このホテルのスタンダードスイートで庭付きの客室です。ちなみにスイート以外でも八坂の塔などが一望できるビュータイプの客室などもあるそうです。個人的にはプレミアムスイートである「東山ハウス」などは、眺望もかなり良いみたいなので、ゆくゆく落ち着いたら今度はそちらに泊まってみたいものです。

エントランスを入ると、このようなリビングエリア。低層階であるのに加えて、中庭があるためかなり落ち着きます。この種の落ち着いた雰囲気は私がハイアットではこれまで体験したことのないものです。

東京のハイアットを持ち出すならば、パークハイアット東京にしても、アンダーズ東京にしても、どこか隠れ家的な安心感をもって過ごすことができるようになっています。そしてそこが魅力でもある。しかし同時に刺激的で常に生成流転している東京のスカイビューを望めるようになっているので、その不思議なギャップが他にはない空間を生み出していると思うのです。

ところがこちらはすでに外の景色からして落ち着き払っているのです。またインテリアも全体的にタモ材の木目とベージュ系の落ち着いたインテリアコード。同じ「隠れ家的」な要素を持ちながらも、東京のハイアットとはまるで別種の「隠れ家」だと個人的には思いました。

リビングスペースの反対側にはこのような大型のテレビが設置されています。ウッディな壁と一体化していることもあって、あまりテレビの存在感が強くないところに、デザインの巧みがあると思います。また客室の編成は横長であり、ひとつひとつの空間が無駄なく使われています(逆にいえば、無駄なスペースを用意するほどには客室全体のキャパシティはない)。

ワードローブの中にはこのようにインルームバーが供えられており、アルコール類の他に、コンプリメンタリーのミネラルウォーター(こちらも黄桜の仕込み水)や高級ホテルではおなじみのネスプレッソなどが用意されています。

ベッドルームとバスルームもみていきます

リビングルームからさらに奥に進むとベッドルーム。

こちらも中庭との連続面にあり、特有の落ち着いた雰囲気は貫徹されています。平積みにされた本の雰囲気とか木の丸テーブルなどにトニー・チーによるデザインらしさをみて取れます。ちなみにベッドはハイアットらしい低反発。寝心地はかなりよく、枕の硬さなども個人的にはちょうどいいものでした。

ベッドルームの向かって左手にはバスルームとウォークインクローゼットがあります。

マーブル調のバスルームは客室の雰囲気とは対照的です。重厚感や洗練された空間というよりは、いまどきのおしゃれな印象です。ここはどういうわけか先日滞在した「アンダーズソウル」のバスルームにも似ている気がしましたが、あちらの方が尖ったデザインでしたね。床暖房も装備されており、かなり暖かいです。

ベイシンはダブルシンクとなっており、角の丸い長方形のミラーがおしゃれな雰囲気。竹籠にバスタオルが入れられているあたりが京都風?といえるでしょうか。

バスアメニティは「LE LABO」の「SANTAL 33」というものと、「EDITh Yuzuki」というもの。どちらも私は他のホテルでは見かけたことのないものです。ちなみに「LE LABO」のベルガモットシリーズはパークハイアット釜山でも使われていたので、パークハイアットではそれなりに知られたブランドかもしれません。もうひとつの「Yuzuki」は、柑橘系の爽やかさに少々甘さと深みのあるウッディなノート。使用感については特に髪の洗い上がりがしっとりする感じがして好印象でした。

その他のアメニティはこちらの木箱の中に入っています。またヘアドライヤーは強力な風が出ることで知られているdysonのものでした。

チェックイン・客室に関する印象

このように客室をみてきましたが、基本的には高級ホテルの要件として申し分のない設備をそなえており、また東京のハイアットとは一線を画す落ち着きも併せ持っています。ただし個人的に、パークハイアット東京やアンダーズ東京のような洗練はさほど感じられませんでした。デザインコードは全体的に「軽い」ものです。

ラグジュアリーホテルというと、ついついインテリアは「重く」なりがちです。シャンデリアとかオーク材の家具というとやや大袈裟かもしれませんが、どうしても高級感につきまとうのは重厚さではないでしょうか。このようなラグジュアリーを全面に打ち出したホテルはそれはそれで魅力的だと思いますが、逆にラグジュアリーさの中にある「重さ」が、いい意味で軽く、スタイリッシュになっているようなホテルには独特の洗練があるものです。そしてこうしたバランスが絶妙なのがパークハイアット東京やアンダーズ東京だと個人的には思っています。

それではパークハイアット京都はというと、そのような洗練ではなく、かなり軽快なラグジュアリー感という印象でした。これがブティックホテルならば納得が行くのですが、同じく京都での洗練された雰囲気という点では「フォーシーズンズ京都」などに軍配が上がるかもしれません。ただしもちろんパークハイアット京都のもつこの軽快さが悪いというわけではありません。隠れ家のような雰囲気でくつろぐにはこれくらいの軽さの方がいいという気もします。個人的にはもう少しロマンティックな空間でもよかったのではないかと思いましたが(あるいはシティビューの部屋は印象が違うかもしれませんが)、むしろその他のホテルとの棲み分けとも見ることができます。

チェックインに際しては、かなりスタッフ間の連携が取れていなかったように思います。その他、今回の滞在ではレストランの予約やスパの手配、朝食の準備などについても、かなりサービスがおぼつかないところが見受けられました。このあたりの改善は急務だと思いますが、そのあたりについてのレビューは次の記事にて詳しく書いてみたいと思います。

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