2023年秋のホテルステイを振り返る〜印象的なホテルステイを綴る

慌ただしい毎日に忙殺され、もともとの怠惰な性格も災いし、相変わらずの遅筆。「鮮度」や「正確性」が重要となる情報提供ではなくて、このブログに私なりの意義は見つけるならば、自分の生きてきた記録。そしてそれがたまたまホテルであるところに、同好の皆様との交流が見つけ出せたら幸い、とそんなところでしょうか。どのみち更新頻度は驚くほど低いのだから、もういいやと開き直って、思いついたときに筆を取るくらいのスタンスでもいいのかもしれない…そう自分を慰めたところで、今年の秋のホテルステイを簡単に振り返ることにしましょう。

チョスンパレス・ラグジュアリーコレクションホテル・ソウル

厳密には秋ではないのですが、ここで書いておかないとずっと書かなくなってしまう恐れがあるので、あえて取り上げておきたいソウルのラグジュアリーホテル。私の中でこのホテルがソウルで最高に位置づいたのは、そのこってりとしたインテリアの雰囲気もさることながら、ホスピタリティの高さ。まさか外国でここまで「日系」を感じることがあるとは思いませんでした。実際のところ「日系」ホテルではないのですが、私が国内の老舗日系ホテルで感じる丁寧でやさしくてほっとする気持ちのよい対応と、まったく同じものをこのホテルのサービスに感じられたのです。チョスンパレスを運営するのは言わずと知れた「朝鮮ホテル」であり、朝鮮半島でもっとも長い歴史をもつホテルグループ。その老舗の矜持とでもいうべき抜群の安定感はさすがの一言。

もうひとつ私の心に残ったのは、その料理の質の高さ。とりわけミシュランひとつ星を獲得したEATANIC GARDENは特別な食体験に開かれた素晴らしいレストランでした。ひとつの食材にひとつの物語のカードが事前に配られて、食材に対するストーリーに想いを馳せ、スタッフと気楽な会話を交わしながら料理を待ちます。そして料理が運ばれ、物語が舌の上に展開するとき、至福の境地へ…そんな体験を前菜からデザートまで10回も体験することができます。もうこの体験のためだけでもこのホテルに滞在する価値はあります。ミシュランの星が3つでもまったくおかしくない質の高さ。あるいは近い未来にそうなるかもしれません(現に最近は予約が取れない日も増えているとのこと)。

紫翠・ラグジュアリーコレクションホテル・奈良

まだ暑さを感じる時期ではありましたが、奈良の「紫翠」にも滞在してきました。知事公舎の建物も活用した特別感のある滞在。もちろんJWマリオット奈良も十分に高級ですが、いよいよここ奈良の地にも本格的な外資系ラグジュアリーリゾートホテルが完成したと感じさせられました(JWはラグジュアリーだけど、どちらかというと、シティホテルという気がします)。日本庭園という典型的な好ましい景観が眼前に…というのは京都などにも見られる特別感。十分な快適性を確保した客室空間も文句のないものになっていました。しかし私がもっともこのホテルで惹かれたのは、開業直後(にもかかわらず、あるいは、だからこそ?)のスタッフの熱量でした。このホテルを魅力的な場所に作り上げていきたいという思いが伝わる、とても心地の良い体験をすることができました。奈良公園のなかという抜群のロケーションも魅力的であり、またぜひ訪ねたい国内ホテルのひとつになりました。

OMO 7 大阪ホテルby星野リゾート

果たして旅慣れた人やコアなホテルファンは「星野リゾート」をどのように評価するでしょうか。私はどちらにもなりうると思うのです。ある人は「慣れてないから、ああいうところに泊まるんだ」と思うかもしれません。しかしまたある人は「慣れてくると、ああいうところがいいんだ」と思うかもしれません。私は正直これまでいわゆる「食わず嫌い」のままで、星野リゾートの旅館やホテルに泊まらずにきたのですが、OMO7の世界観の作り込みやホスピタリティには、とても感心してしまいました。ここに泊まるだけで「大阪」に来たことを強く感じられる。地域とのつながり(…ここでは純化され、無毒化されている)を要素としてうまく取り入れ、幅広い世代が楽しそうにホテルで過ごしている。その意味でここは「目的地」になりうるホテルと言えるでしょう。部屋も快適に過ごせる工夫が凝らされ、アクティビティも充実している。パッケージ化された楽しみ方が選べる。おそらく何も調べずふらりと大阪に来ても、ここに来れば十分に楽しめてしまう。ある人は物足りなさを感じ、またある人は煩わしい調べごとからの解放や気楽さを感じることでしょう。その意味で両義的な評価がありうる。

今回がはじめての滞在だったわけですが、私は「星野リゾート」というパッケージの求心力やその逆の評価の併存に妙に納得しながらチェックアウトしました。個人的にはとても好きです。

LOG尾道

誤解を恐れずにいえば、ここは「目に見えないなにか」がいるホテル。高度経済成長期にできたノスタルジー溢れるアパートをスタジオムンバイの感性でリノベーションしたことで知られるLOG。その光の入り方の美しさや自然な風合いの色がとてもおしゃれ。また料理の質もきわめて高く、尾道の街並みのあたたかく懐かしい雰囲気にも溶け合っていて、感性にずっと訴えかけるホテルであると言えます。また違う季節にも泊まってみたいと強く思います。さて「目に見えないなにか」を明確に表現するのは困難ではあるのですが、夜のこの建物を歩いてみれば、ぼんやりと溢れる光や穏やかに流れるラウンジのクラシック音楽、あるいは静かな部屋のひとときから感じ取ることができることでしょう…なんだか涙が出そうな気がしました。私はひとりで滞在したわけですが、おそらくひとりだからこそ、こんな気持ちを強く感じられたのかもしれません。

翌朝、美味しいパンケーキの朝食を済ませて、瀬戸内海を見渡す100段の階段を降りて、この街を発ちました。ふと谷村新司さんの「風の暦」が頭のなかに浮かんできました。深い青。空も海も。まだ見たこともない美しい景色の場所が日本にもたくさんあることの豊かさを感じたのでした。

HOTEL CULTIA 太宰府

太宰府天満宮に隣接した歴史ある建物に泊まる。しかもとびっきりのホスピタリティと地産地消の美食とともに…そう言われて魅力的と思わない人はきわめて少ないはずです。しかも宿泊費も手頃。今年すっかりその魅力にハマっているNIPPONIAと同じ系列。本当に魅力的な場所と食事と建物を選んでいると毎度のことながら感心します。スタッフのマニュアル化されていない手作りのサービスも心地よい。この秋は星野・LOG・そしてここと泊まり(加えて船で瀬戸内海を横断したり、いろいろな鉄道に乗ってみたりもしていました)やっぱり日本の旅っていいな…としみじみ感じたのでした。

グランドハイアット福岡

グランドハイアットにハズレなし、というのは私個人の経験に基づく感覚ですが、このホテルはまさに今回も「当たり」でした。以前もさほど悪くないけれど、サービスの面ではさほど強く印象に残るようなことはありませんでした。今回は偶然にもラウンジであるグランドクラブがリニューアルした直後ということで、期待も高まっていましたが、これは想像以上に素晴らしかった。特にグランドクラブのスタッフのホスピタリティは、私が世界で最も好きなパークハイアット東京にも比肩する素晴らしさでした。ラウンジフードも充実しており、キャナルシティというポップな空間の立地もあいまって、終始一貫して楽しい気持ちで過ごせる滞在ともなりました。潜在的には最近できたリッツ・カールトンとの対抗もあるのかもしれないと密かに思いますが、個人的には、これは十分すぎるほど対抗できる(ハードは少し古いけれど、快適性は申し分ないです)のではないかと感じています。

ウェスティン大阪

日本最初のウェスティンホテル。業務提携でいえば、1966年に京都の都ホテルと行っているのではるかに歴史は長いわけですが、独立したブランドとしてはここ大阪が最初です。1993年。東京で新御三家として知られる恵比寿のウェスティンの開業はその翌年の1994年なので、1年早いのです。ちなみに窓の外に見えるリッツ・カールトンの日本第1号もここ大阪でした。外資系としてはそれなりに歴史を数えてきたこのホテル。さすがの安定感があって良い雰囲気です。つい最近リニューアルした部屋から再開発の著しい「うめきた」を見ていました。なんだか変化のダイナミズムのまんなかにいるような気がしました。

パークハイアット釜山

ソウルで友人に会って、そのまま冬のはじまりの釜山へ。駅からタクシーに乗ってたどり着いた久しぶりのパークハイアットは相変わらずのダイナミックな海の景色でした。スイートルームのベッドに横になって外をながめていると海の上に浮いているみたい。こういう世界観の作り方はさすがパークハイアットだと思うものです。ちなみにホスピタリティもとてもにこやかで数年前と比べてもさらに洗練された印象があります(これは個人的に韓国のホテル全体に感じるところです)。本当に短い時間の滞在でしたが、結局、ほとんど外に出ずに過ごしてしまいました。

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さて、特に印象的だったホテルについてはこうして挙げてみたのですが、ここに掲載できなかったホテルもありますし、Xにすら投稿していないホテル滞在もいくつもあります。年末の少し時間に余裕のあるときに振り返ってみたいものですが、最後にひとつ。

やはりパークハイアットを欠かすことはできません。休館まであと半年を切ったと考えると本当に時間の経過の早さを感じてしまいます。何度泊まっても新しい発見があり、心に残る出来事にめぐりあい、特別な気持ちになる私のなかで最高のホテル。もちろん今年の秋にも泊まりましたが、できれば冬と春に1回ずつくらいは泊まりたいものです。

最近つくづく感じるのは、やりたいと思ったときに、やりたいことをやること、その大切さです。

さて、今年はずいぶんといわゆる「チェーン系」以外のホテルにも泊まりました。いわゆる「修行」についても簡単に触れておきたいと思うのですが、IHGのダイアモンドは達成しましたが、マリオットのチタンまであと3泊、ハイアットグローバリストまであと10000ベースポイントが必要なので、おのずと今年の12月はそれらを考慮したうえでホテルに泊まることになりそうです(最近はそういうロイヤリティプログラムというものに対してやや食傷気味でもあるのですが…)。さて…どうしたものか、と考えているうちに、少なくとも明日と明後日の滞在先を決めました。どちらも慣れ親しんだホテル。最近は私の人生においてもトップクラスに多忙なのですが、こういうときに、つくづくそういうホテルのありがたさを感じずにはいられません。

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