ホテルオークラのレモンパイとチョコパイ

レモンパイを食べたことがありますか?

名前を聞くだけですぐにどんなものかイメージがつきそうなものですが、意外と私のまわりで食べたことがある人に出会ったことがない。

この質問を投げかけたあとに、私は決まってホテルオークラ東京のレモンパイをすすめています。そしてオークラのレモンパイを食べるなら、テイクアウトではなく、お店に入って、【ア・ラ・モード】で注文して味わっていただきたい。パイの上には炙ってほどよく香ばしいメレンゲ、下地には素朴だけれど甘酸っぱい優しい味わいのレモンカード(バタークリーム)がたくさん使われています。

上品な銀のナイフで切って、ひとくち頬張ると、メレンゲのさくさくした食感と、レモンの爽やかさ、そしてまたややしっとりしたパイ生地に染み込んだやわらかな甘みが口いっぱいに広がります。

ここでアイスクリームをひとくち。

品の良いバニラの香りと冷たい刺激。

そしてアイスクリームとレモンパイを一緒に食べてみる。甘さと甘さがぶつかってしまうのか、と思いきや、これが絶妙なバランスで溶け合うのです。

この幸せな一致はやはりお店のその場でなければ味わえないものでしょう。

このレモンパイはホテルオークラ東京の開業時からの伝統のメニューだそうです。外資系ホテルや新来のパティシエのスイーツはたしかに素晴らしく私も大好きなのですが、ふとしたときに、ここのパイを無性に食べたくなります。

なおこちらは「チョコパイ・ア・ラ・モード」です。

いわゆるチョコレートケーキのようにスポンジにチョコレートを染み込ませたものでもなく、オペラのように洋酒で品良く仕立てたものでもありません。レモンパイの下地と同様に、ぷるぷるした食感のチョコカード(バタークリーム)がパイ生地の上に乗っているものです。

しかしこのチョコパイもまた絶品。アイスクリームとの幸せな一致を楽しめます。

甘さひかえめだけれど、ほろ苦いわけではない。無垢で懐かしく優しい甘さとでもいいましょうか。そしてコーヒーとの相性も抜群です(実はここのコーヒーは苦味と旨味のバランスがすばらしいのです)。

旧本館はもうなくなってしまったけれど、いまも営業中の別館にあるダイニングカフェ「カメリア」でこれらのパイは楽しむことができます。しかも比較的リーズナブルに(どちらも¥1200ちょっと)

変わっていくホテルで、変わらない味を楽しむのも一興かもしれません。

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