ホテルエクラット台北宿泊記(2)〜台北のSLH・プレミア9ルーム

前回は台北にあるSLHとして個性の光るホテルエクラット台北の全体を紹介をしました。大規模なホテルにはない細やかな配慮や美術館のような個性的なインテリアが魅力の同ホテルですが、質感にこだわりのあるハイレベルな客室が印象的です。

今回の滞在ではホテルエクラット台北の客室の中でも、とりわけユニークな「プレミア9ルーム」にアップグレードされました(ハイアット+SLH特典にて)ので、その様子をリポートしてまいります。

ベッド・バス一体型の客室

ベッドルームとバスルームとは部屋の狭いバジェットホテルであってもだいたい分離されているものです。しかしこちらの「プレミア9」はそうした常識的な見方を揺るがすものです。

見てのとおりベッドルームとバスルームを隔てているものは階段と金属製の手すりがあるのみ。その向こう側にはやや高めのウインドウから台北の街並みを見下ろせるようになっているのです。

こうした部屋の構成はときどきシティリゾートのようなホテルでも見かけるものですが、私はこうしたつくりの客室にははじめて宿泊しました。このようなアヴァンギャルドなつくりの部屋はかなり好き嫌いが分かれると思われますが、私はけっこう面白いと思います。またインテリアコードもなかなかセンスがいいと思います。

個別に見てみましょう。ベッドルーム側の雰囲気はこのような感じです。ナチュラルな色合いのフローリングに対して壁掛けのやや大げさな絵画。ゴージャスなものとシンプルなものという相容れないものの組み合わせはちょっと間違えると、両方の持ち味を台無しにしてしまいます。結果的にとても安っぽい客室になってしまう。しかしここでは両方が不思議と馴染んでいます。

おそらくそのバランスを取っているのが、スケルトンの椅子やブラックレザーのマッサージチェアといった中性的なアイテム。こうした配置にはセンスのよさを感じます。

バスルーム側はこのようになっています。カーテンは自動式になっておりリモコンで操作します。最初は使い方がわかりませんでした(それほどにアメニティや装置が豊富)が、色々な仕掛けがあり楽しいものです。

右手にはレインシャワー付きのシャワーブースと窓に面した(!)トイレがあります。テレビは天井に取り付けられており、入浴しながら鑑賞を楽しむこともできます。(私はひとりで滞在するときに、言葉がよくわからないなりにも現地のテレビ番組をわけもなく見てみるのが好きです)

客室のエントランス付近はこのようにクローゼットやミニバーコーナーなどがあります。クローゼットにはいわゆる「バトラーボックス」もついており、ランドリーに出したものなどを顔を合わせずとも受け取ることができるようになっています。このあたりの設備は超高級ホテルの客室には備えてある場合がありますが、この価格帯のホテルではかなり珍しいと思います。これも小規模なスモールラグジュアリーホテルだからこそできるきめ細やかなサービスと言えるかもしれません。

こちらはシャワーブース。扉はスライド式になっており、シャワーブース側を開くと、トイレ側が閉まり、その逆もまたしかり。

シャワー自体の水圧も申し分ないものです。

シャワーブースの隣にあるのがこちらのトイレ。海外では珍しい(けれど台北・ソウルあたりのホテルではそれなりに普及している)ウォシュレットが備え付けられています。しかも上位モデルというこだわり。

しかし写真からもわかるように、このホテルの最大の個性はその眺望でしょう。窓の下には大通りを行き交う車とやや遠くにはビル群も見えています。高層階ではないのでさほど遠くまで抜けてみえるというわけではありませんが、それでもこのようなトイレはかなり挑戦的です。個人的にはこういう挑戦的な部屋の配置は大いにありだと思いました。

ベッド横にあるのがこちらのマッサージチェア。これはさほど高機能のものではありませんが、ちょっとした休憩には使いやすいと思います。

ベッドサイドテーブルには、宿泊客が自由に持ち出して利用できるスマートフォン「Handy」もあります。また手前側にあるフルーツはコンプリメンタリーです。

こだわりのアメニティ

インテリアや客室の配置が個性的な「プレミア9」ルームですが、置いてあるアイテムにもホテルのこだわりが光っています。なおアメニティは客室間で共通ですので、このホテルの他の客室を検討されている方の参考にもなるかもしれません。

まずはデスク周辺を見てみましょう。白いダイヤル付きの電話が印象的ですが、このデスク自体とても使いやすいものです。

先ほどお見せした客室全体の写真にあったのですが、このデスクの椅子はスケルトンになっています。見た目重視でもありますが、思ったより座り心地も悪くありませんでした。ただ長時間だとさすがにちょっと厳しいかもしれません。

なおこのデスクに置かれているボールペンが一味違います。通常のホテルであれば、そこまで良いものが置いてあることはまれであり、場合によっては鉛筆などの場合もあるのですが、こちらはなんと世界的な万年筆のメーカーである「モンブラン」のものが置かれています。

左手側には肌触りのよいメモも用意されていますし、上等なノートなどがあれば、ついついこのペンを手にとって何か書き物を進めたくなるような気がします。

バスアメニティはフランスの老舗化粧品ブランドである「ゲラン」(GUERLAIN)のものです。これまで宿泊したホテルでも有名ブランドのものとして、「ブルガリ」や「フェラガモ」のバスアメニティを置いてあるところはありましたが、「ゲラン」を置いてあるところははじめてです。

洗い上がりの質感は可もなく不可もなくといったところですが、柑橘系が主体ですが、やや濃厚な甘さを感じさせる上品な香りと、ゴールドラインのエレガントなボトルデザインがこの客室の雰囲気によく合っています。

ベイシン横にはカラフルな木の箱にこのようにアメニティが入っています。コットンの容れ物などがおしゃれですね。内容もおよそホテルの滞在で望ましいものはすべて揃っています。

また左手の赤い箱の中にはこのようにダイソンのドライヤーが入っていました。コンパクトでスマートなデザインなのですが、かなりパワフルな風量を誇ります。高級ホテルであっても、ドライヤーについては安っぽくてまったく使い物にならない場合も多い中で、(好き嫌いは分かれるにしても)このようなアイテムを用意しているあたりもこのホテルの魅力といえましょう。

バスローブにもこだわりがあり、2種類用意されています。左手のワッフル地のものは吸水性も高く、さほど分厚くないのでお風呂上がりなどに最適です。また右手のものはふわふわで非常に肌触りがよく、ベッドの上やソファなどでくつろぐときなどに活躍すると思います。

両方のバスローブともに、高級ホテルでもなかなか見当たらないもので、ホテルエクラット台北の客室のアイテムに対する力の入れ方を強く感じさせられるものでした。

エントランス付近のミニバーの上にはこのように無料のミネラルウォーターやネスプレッソなども置いてあります。

さてミニバーですが、ここホテルエクラット台北では、これらのドリンクが無料となっています。コカコーラやスプライトの他にもハイネケンライトや台湾ビールといったアルコールも含まれます。

ミニバー内の飲み物が無料という点はハイアットファンであれば「アンダーズ」などを連想されるかと思います。考えてみると、宿泊ゲストであれば誰でも利用できるラウンジの設置や、ちょっとひねりのあるインテリアなども共通点として挙げられそうです。おそらくアンダーズの雰囲気が好きな方であれば、こちらホテルエクラット台北もすぐに好きになるのではないかと思います。

2回に渡って「ホテルエクラット台北」の様子をリポートしてまいりました。今回はひとりでの滞在でしたが、パートナーや家族であれば「プレミア9」のようなアヴァンギャルドな客室を一緒に楽しむのも良いのではないかと思います。もちろんひとりでも非常に快適に過ごせるようにはなっていますが。

台北には今後「パークハイアット」と「アンダーズ」のオープンが予定されているので、私がこのホテルに再び戻ってくるかどうかは定かではありませんが、確実に楽しめる個性的な空間構成ときめ細やかなサービスに彩られた素敵なホテルだと思います。

台北といえば、絢爛な雰囲気の「W」と、荘厳な雰囲気の「マンダリンオリエンタル」を2強と考えていましたが、両方のホテルにない雰囲気で、かつこれだけ充実しているホテルはなかなかないかと思います。まして価格帯も比較的リーズナブルなので、やや長期滞在を予定されている方にもお勧めできます。

ハイアットのSLHとの提携がなければ、このようなホテルとの出会いもなかったかもしれません。その意味でも今回の提携は新しいホテルの発掘の機運を高めた意義が大きいと思います。今後とも利用できるSLHのリストが増えて、思いがけない出会いに巡り会えたらと夢想しているとことです。

 

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