パークハイアット東京宿泊記・ガバナーズスイートで過ごす穏やかな時間

あなたが好きです。余計な言葉はいらない。シンプルにただその一言が欲しい…いまよりもっと若かった頃の、いまよりもう少し青臭くて純真な気持ちを喚起するような夢から醒めた朝。

今日は久々にパークハイアット東京に向かいます。

お気に入りの車に乗って、副都心を抜けて、馴染み深くもいつも新鮮な気持ちになるエントランスに到着。ベルスタッフに鍵を預けたあとで、検温と手指の消毒。そして高速のエレベーターに乗り、いまはあまり混雑していないピークラウンジから外を見ると、梅雨の厚い雲の間からわずかに光が差していました。

今回の滞在はちょっと思うところがあり、少し特別な部屋をとコンシェルジュにお願いして、ガバナーズスイートを用意してもらいました。

ガバナーズスイートにチェックイン

手続きを済ませてから部屋のリビングルームにてしばらく時間を過ごします。

ジョン・モーフォードのデザイン哲学が貫徹された空間。大型のテレビがあり、グランドピアノがある。そして窓の外には、この静謐な空間からは嘘のような西新宿の喧騒が見て取れます。時間と空間の感覚を麻痺させてしまうような隔絶された雰囲気を持つ場所だといつもながらに思います。

エントランスから向かって左の側の窓には目隠しのように細かいルーバーが入っていますが、日本の伝統的な竪格子のようにも見えます。実際に後に窓側のテーブルに腰掛けて、仕事のオンライン会議を行ったときに、その参加者から私がどこか格式ある料亭にでもいるのかと思ったと言われて、なるほど確かにそういう印象も与えそうだと思ったほどでした。

ベッドルームはバスルームとの間に位置していて、奥まった雰囲気があり、落ち着きます。ベッド自体の硬さや低さも個人的にはちょうどよいホールド感があるもので、このあたりの絶妙さはスタンダードルームにも共通する点です。

ちなみにこの客室の窓の向きと、リビングルームの窓の向きは同じ方向となっていて、このスイートルームが全体的に横に長い空間であるということが見て取れるかと思います。

バスルームのデザインコードもスタンダードルーム同様に市松模様が印象的な落ち着いた雰囲気。こちらガバナーズスイートの場合には浴槽が檜材でできていて、他の客室にはない独特の雰囲気です。大型のテレビが備え付けられていて、ゆったりとしたバスタイムを送れることは間違いありません。

ちなみにプレジデンシャルスイートやビューデラックスルームなどは、バスルームが窓側に面しているために、外の景色を楽しみながらのバスタイムを満喫できますが、こちらはそうではありません。しかしだからといって、特に不満があるということはなく、むしろこのシンプリシティーが心地よく感じました。両者ともにそれぞれの魅力があると個人的には思います。

またシャワータイプもヘッドシャワー・ハンドシャワー・ボディシャワーの3種類あり、水圧も十分。またバスアメニティはパークハイアット東京でおなじみの「Aesop」が用意されています。

ニューヨークグリルでのアペロ

コロナウイルス感染拡大防止対策のために、縮小体制で営業している(2020年7月現在)ために、パークハイアット東京のレストランやバーも曜日によっては空いていたり、空いていなかったりします。

曜日によってはオールデイダイニング「ジランドール」や和食「梢」のディナー営業も行っているようですが、私の行ったときは両方ともランチのみ営業でした。また朝食もルームサービスのみ。そしてまたグローバリストにはおなじみの夕方のピークバーでの「トワイライトタイム」も休止中でした。

その代替措置として、いまは17:00~20:00の間に、ニューヨークグリルでのアペロタイムが用意されています。

18時を回った頃にこのホテルの52階に至ると、さほど人も多くなく、静かな雰囲気。窓側の席に通されたら、オリーブやスパイシーな香りのするナッツ。そして簡単だけれども非常に味わい豊かなフィンガーフードが出てきました。ワインやカクテルまたはモクテルなどの種類も基本的には「トワイライトタイム」と同一であり、満足度は総体的に高いのではないかと思います。

慣れもしないのに、なんとなく雰囲気で選んでしまったダイキリの味わいの深さに気分良くなり、すっかり蒼黒くなった東京の景色を眺めていました。いつもであれば、ジャズの生演奏が聞こえてくるであろうニューヨークバーは誰もいなくて静かなもの。天井の高さが今日は妙に際立って、近く遠く輝いているビルの灯りがひときわ印象に残りました。

長い食事を済ませて、気だるい気持ちで部屋に戻ったのはもう深夜のはじまりといっていい頃でした。認識が鈍ってしまうような時間を過ごして、風呂に入ってから、うなだれるようにベッドで寝てしまいました。

16時まで過ごしてチェックアウト。

そういえば鍵が従来のディンプルキーからセンサーキーへと変わっていました。単なるカードキーではなくてしっかりした革素材にチップが埋め込まれ、以前から使われている金属製のホルダーに付けられているあたりに、このホテルらしいデザインへのこだわりを感じさせられました。

開業からすでに25年を超えて、テレビボードが変わったり、制服が変わったり、そして今回のように鍵が変わったり…しかし基本的な部分は変えない。変わらないことの美学が「タイムレス」な世界観を生み、また積み上げられた水準の極めて高いサービスがそこに合わさることでかけがえのない素敵なホテルとなっている。改めてパークハイアット東京に対して、そういう認識を持ちました。

もうここに一緒に来られなくなってしまった人の記憶と、これから積み上げていく新たな記憶をのせて…そしていつも清新な認識を与えてくれる場所。次に来るときは、きっと今日よりさらにもう少しだけその想いを深めるのでしょう。

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