ヒルトンといえば、もはや説明するまでもなく、広く、遍く、知られた外資系ホテルチェーンです。コンラッドはその上位に位置づけられるブランドとして安定の地位を占めています。ヒルトンのもつグローバルスタンダードな雰囲気をさらにラグジュアリーに仕立てたこのホテルは、「中間的な」高級ホテルの姿を追求しているという印象があります。つまり他のブランドの用意する「W」や「アンダーズ」のような前衛さをほどよく取り入れながらも、リッツカールトンやペニンシュラのような落ち着きも欲しい。そのちょうど中間くらいを狙っているように思われます。
今回は東京の新橋・汐留エリアに位置する「コンラッド東京」に宿泊してきましたので、そのリポートです。
チェックイン
お互いに用事があり、今回はコンラッド東京に深夜のチェックインとなりました。自家用車で車寄せにつけるとベルデスクのスタッフの方が寄ってきました。バレーパーキング(¥4,000)も行なっていると案内がありましたが、今回は下の駐車場に停めることにしました。
エレベーターを降りると汐留の夜景を見下ろす、天井が高く開放感のあるロビーが広がります。深夜にもかからわず、ゲストの数もスタッフの数も多いのは場所柄でしょうか。特にエスコートなどはありませんが、フロントのスタッフの対応は丁寧かつ慇懃なもので、やはり「ヒルトンらしさ」を感じさせられました。
今回の客室はアメックスプラチナのLHR特典で予約することにしました。例によって特典は以下のようなものです。
コンラッド東京 アメックスプラチナLHR特典
- 12時からのアーリーチェックイン
- 16時までのレイトチェックアウト
- 客室アップグレード
- 無料の朝食(2名分)
- 125USドル分の飲食クレジット
これらの特典のうち、今回はアーリーチェックインは利用しませんでした。しかし同じ東京にあるLHR特典の対象ホテルと比べてもやや多い125ドル分の飲食クレジットの利用価値は高いと感じました。なおこの特典のもうひとつの特徴としては、ヒルトンオナーズの上級会員になるための対象宿泊数にカウントされるため、こうした特典を享受しながら「ホテル修行」も進めることができることです。
さて手続きを済ませて客室に向かうことにしましょう。
ベイビュールーム
今回の客室は「ベイビュールーム」となりました。元々は「シティルーム」で予約を入れておいたのですが、特典でアップグレードされました。
ベッドルームまわりはすでにターンダウンが済ませてありました。オーソドックスな客室の配置ながら、ひとつひとつの素材の質感は高いものでした。窓にそってロングソファが配置されており、東京湾の夜景を眺めることができます。しかしここからの眺望は海が中心となっていることもあり、日の出ている時間帯の方が綺麗ではないかと個人的には思います。
桜の枝をあしらった絨毯がさりげなく日本を主張しています。そういえば以前宿泊した「W台北」の絨毯には梅の花が描かれていて、やはり当地のローカリティをさりげなく主張していました。あとでご紹介するバスルームの雰囲気もどことなく両者は似ているような気がします。
ベッドについて、まず気づくのが、高さがかなりあるということでしょうか。このあたりはかなり好き嫌いが分かれるところかと思います。しかしふわふわと柔らかく沈み込み寝心地を実現しており、個人的には悪くないものだと感じました。
ソファテーブルには氷の用意と一緒に、このようなウェルカムスイーツが段付きトレーに乗せられて用意されていました。かなり和の要素を感じさせられて取り合わせになっており、このあたりでもローカリティをさりげなく出していこうとする姿勢が伺えます。
コンラッド東京の標準的な客室にはビジネスデスクがありません。これによって空間がさらに広く見える効果があるように思います。しかしこのホテルの位置している場所からいってビジネス需要も相当数あるはずだと予想されます。
この円形のマルチプルテーブルがおそらくその役割を果たしているのでしょう。食事などを取るのにも使えるし、PCでの作業やドキュメントを広げるのにも便利です。また備え付けられてある椅子はキャスターが付いており移動させることができます。こうした空間の割り切り方もこのホテルの特徴といえるかもしれません。
バスルームも見ていきましょう
続いてバスルームに目線を移していきます。配置は客室に入ってすぐの右側というように、きわめてオーソドックスなのですが、設備面での充実はさすがに高級ホテルらしさを強く感じさせられます。
円形のミラーが強いインパクトを与えるベイシンはダブルシンクになっています。これは非常に使い勝手がよく好ましいものです。そして楕円形のバスタブと全体的に丸みのあるデザインコードになっています。また白と黒のコントラストが美しいのも特徴のひとつと言えましょう。
なお奥にはウッドブラインドが備え付けられており、スイッチひとつで開閉し、ベッドルームの方向を見ることができるようになります。開けばかなり開放的なバスタイムを過ごせそうですが、これも好みが分かれそうなところです。
シャワールームとトイレは独立式となっています。このようにレインシャワーも完備されており、高級ホテルの設備としては文句のないものです。
バスアメニティは「SHANGHAI TANG(上海灘)」のMANDARIN TEAが用意されています。じつは私はこのブランドの小物類が好きで、以前銀座のみゆき通りにブティックがあったときには、しばしば出かけたりしたものでしたが、日本から撤退後は香港などに行かないとなかなか見ることができないものとなっていました。
SHANGHAI TANGの香水といえば、雨の竹林の香りのような、エキゾティックながらも爽やかさを忘れない独特の香調が魅力的でした。まさかそれをコンラッド東京で見つけることができるとは思いもしませんでした。このMANDARIN TEAもお茶とシトラス系が合わさった極めて上品な香りで好ましいものです。
ウッドトレーに乗せられたアメニティ類です。ボディローションもSHANGHAI TANG。またバスソルトと一緒にコンラッドダックが置いてあります。ベッドサイドにいるコンラッドベアと並んで、かわいらしく、少し心がほどける感じがします。
コンラッド東京 ルームサービス
なにしろ到着が夜遅くだったので、レストランはすでに閉まっていました。かろうじて夜遅くまで営業しているのは、28階のラウンジ・バーの「トゥエンティエイト」(午前1時まで)でしたが、やや疲れていたこともあってルームサービスをオーダーすることにしました。
注文したのは「スパゲティーボロネーゼ」と「ロブスターサーモン&アボカドバーガー」です。どちらもLHR特典の対象なので実質的には無料の夕食となりました。
私が頂いたのが「ロブスターサーモン&アボカドバーガー」の方です。これはパティがロブスターとサーモンで作られており、それぞれの個性が干渉し合わないようにうまく調整されていると感じました。またトマトとアボカドも控えめで全体的に美味しいけれども個性にはかけるものという印象。ただし付け合わせのサルサソースを加えることで味が引き締まったようになります。またフレンチフライもシンプルだけれど丁寧さを感じさせるものでこのあたりは好ましいものでした。
このようなわけでものすごい感動とまではいきませんが、満足のいく夕食を取ることができました。
しかし食後にふとさっぱりとしたものが飲みたくなり、例によって我々がオーダーしたのがこのヴァージンモヒートです。ルームサービスのメニューにはなかったのですが、リクエストをしたところ作ってもらうことができました。このあたりの柔軟な対応ができるのも、やはり高級ホテルたる所以だと思います。
さてこのヴァージンモヒートですが、実にこのホテルらしい「中間的な」味わいのものでした。サイダーにライムを絞るのではなくて、レモンサイダーをベースとしているところが革新的なのですが、他方でミントとレモンの味わいはかぎりなくトラディショナルな余韻をもたらします。このバランス感覚の取れた高級ホテルという印象はその後チェックアウトまでずっと変わることはありませんでした。
翌朝の様子や朝食については、また次の記事でご紹介してまいりたいと思います。