【2020年版】アンダーズ東京宿泊記〜客室とその魅力について語る

【※この記事は過去の記事を整理し、2020年8月に滞在したときの記録を盛り込んで再構成したものです】

ハイアット系列の高級ブティックホテル・アンダーズ東京(Andaz Tokyo)。2014年6月にこのホテルが開業してからすでに5年以上の時が経ちました。入居している虎ノ門ヒルズは2棟の超高層ビルの建設によって拡大すると共に、地下鉄日比谷線の駅も開業したことによって、ますます賑やかなエリアになっていくことが予想されます。またホテルに焦点を当てれば、ホテルオークラの新本館に続いて、マリオット系列の高級ブティックホテルである「EDITION(エディション)」もオープンし、今後ともホテルファンにとっては魅力的な場所になっていくでしょう。

迎え撃つアンダーズ東京は「ライフスタイルホテル」を売りにしており、季節ごとに変わるレストランのメニューやスパトリートメント、様々なホテルイベントの開催などでいつ行っても新しい体験ができるということを売りにしています。今回は複数の客室に触れながら、このモダンなホテルの魅力についてリポートしてまいりましょう。

チェックイン

好きな自動車に乗って、虎ノ門ヒルズのエントランスに横付けすると、馴染みのスタッフのにこやかな笑顔。

オフィスフロアやレジデンスフロア、様々な複合的な要素が集まったこのビルの一角にささやかな入り口。ブラウンのウッディな落ち着く雰囲気のなかに、きらきらと散りばめられた不思議な灯り。このエントランスを抜けると、喧騒とはかけ離れた不思議な世界へと抜けていくような心地がします。ホテルによってはフロントロビーにどしりと豪華なものが鎮座していることもあるなかで、こちらはきわめて控えめな感じがします。しかしこの控えめな優雅さこそがアンダーズ東京らしいと個人的には思います。

和紙に、可愛らしく縁起物が散りばめられた装飾がほどこされた高速のエレベーターに乗って最上階に行きましょう。

アンダーズ東京ではチェックインは奥の方のラウンジで、フロントレセプションとコンシェルジュを兼ねた「ホスト」によって行われます。ウェルカムドリンクとして、コーヒー・紅茶・ハーブティ・フルーツジュースやミネラルウォーターなどを持ってきてもらえます。

ハイアットグローバリスト特典の内容

アンダーズ東京のWorld of Hyatt グローバリスト特典は以下のような内容です。

  • 客室アップグレード
  • 午後4時までのレイトチェックアウト
  • アンダーズタヴァンでの朝食ブッフェ
  • AOスパのフィットネスウェア・水着のレンタル無料
  • ポイントのみで宿泊の場合に駐車料金無料

アンダーズ東京の場合、他のグランドハイアットやハイアットリージェンシーなどとは異なり、クラブラウンジがありません。しかし宿泊客は誰でも利用できる専用ラウンジがあります。こちらでは24時間無料のドリンクサービスの提供があるほか、17~19時の間にはワインの提供も行われています。

したがって上級会員であるメリットは、ラウンジアクセスやイブニングカクテルタイムなどに関してはありません。しかし朝食がアンダーズタヴァンで無料で取れるというのは大きなメリットでしょう。

宿泊者専用ラウンジの奥にあるエレベーターを降りて、客室階に行くとこのような廊下に。ちょっと飛行機に乗るときのタラップのような感じもしますね。

客室:タワービューキング

それでは客室の様子を見てまいりましょう(ここは2018年時点での情報です)。

ナチュラルな配色と家具に特徴付けられる落ち着くインテリアです。ソファーも横並びとなっており使い勝手はなかなか良好です。写真では遮光カーテンがかかっていますが、タワービュールームは南に面しており、かなり陽の光が強く入ってきます。これはこの客室のよさではありますが、同時に、なにかしらデスクで作業をしたいときにはまぶしさを感じてしまうかもしれません。もっともこのホテルがどこまでビジネス需要に応えるのかは未知数です(どちらかというとくつろぐための空間というニュアンスが強い感じがします)。

インテリアの雰囲気はどことなく肩肘張らずにいられる、カジュアルなものですが、ベッドの質感などはやはり高級ホテルそのものという印象です。心地よいホールド感と清潔感、そしてふんわりと柔らかい枕が置かれていて、非常に快適な睡眠を取ることができます。

ベッドルームの手前側はこのようになっています。

ネスプレッソがおいてある青い市松模様のアーモアを開くと、写真の右側のようにミニバーやスナックバーが入っています。なおアルコール以外の飲み物やスナック類はすべて無料となっています。これはこのホテルブランドの特徴のひとつといえましょう。このようなコンプリメンタリーのサービスは上級会員でなくても得られるものです。反対にラウンジなども特になく、上級会員ならではのメリットは、例えば、グランドハイアットやハイアットリージェンシーなどと比べると、少ないと言えるかもしれませんね。

さらに玄関側にはウォークインクローゼットがあり、こちらも程よい広さがあり使いやすいです。またベッドサイドに置かれているものは、どことなく手作り感のあるルームライトやカーテンのスイッチや、大きな北斎漫画なども。このホテルのデザイナーであるトニー・チーの最近の作品をみると、空間にいろいろな本を置くことが多いように思われますが、このあたりにも彼らしいインテリアコードを感じることができます。

アンダーズ東京のタワービューキングは、スタンダード客室としてはかなりのレベルだと思いますが、さらにそれに彩りを添えるのが、やはりこのパノラミックな景色でしょう。東京タワーからレインボーブリッジ、遠くには羽田空港や横浜あたりまでよく見渡せます。

夕暮れ時もかなり綺麗ですが、輝く東京の街並みを眺められる夜景は感動的です。この虎ノ門エリアよりも南側になると、いまのところは、虎ノ門ヒルズほど高層の建物がないためにこのように抜けるような景色がみられるのです。しかしここのところまた再開発の機運が出てきていることもあり、いつまでこのパノラミックな景色が眺められるのかは分かりません。

客室の入り口すぐのところにウォークインクローゼットがあり、その奥のほうがバスルームとベイシンになっています。こちらは石造りの高級感ある雰囲気で、ベッドルームのカジュアルさとは少し趣が異なります。

木箱にすっきりとアメニティ類が収められ、ふかふかのタオルがしっかりと複数用意されている。そして季節ごとに香りを変えているバスソルト…高級ホテルはやはりいいと実感するものです。

バスルームにはレインシャワーとハンドシャワーが備え付けられています。写真右がベイシンです。大理石のベイシンは高級ホテルでよくみるものですが、木目のものはかなり珍しいと思います。

バスタブは円形のもの。かなり広さに余裕のあるつくりです。

こちらはバスアメニティです。アンダーズ東京のオリジナルのもので、こちらも季節に応じて香りを変えているとのことです。シャンプーとコンディショナーの洗い上がりは可もなく不可もなくというところですが、香りがナチュラル系の良い香りです。ちなみに今回は冬ということで柚子が主体のすっきりとしつつも温かみのある香りでした。

デラックスキングルーム

続いてデラックスキングルームの様子を見てまいりましょう。もともとこの部屋は「ラージルーム」と言われていたところで、パノラミックな5面のフルハイトウインドウが特徴的な開放感ある眺めが特徴になっています。

早速客室に入ってみましょう。ここはちょうどビルの角の位置にあり、床から天井まで全面の窓が曲線を描いていて非常に開放感があります。このような配置のホテルの客室は極めて珍しいと思いますが、空間をじつに上手に利用していると思います。テレビは独立式になっていますが、方向を変えて手前側のソファーからも、奥のベッドからでも見やすいように調整可能になっています。

今回は北向きの皇居や丸の内あるいは銀座方面が見渡せる部屋でした。しかしカーブを描いている窓の東側からは東京湾も見ることができて開放感は抜群です。

なおこの素材の持ち味を生かしたマルチテーブルは、質感もよく、使い勝手も優れています。ソファーにくつろぎながら軽く食事をするときでも、あるいは何かしらの作業をするときでも、どちらにも幅広く対応します。なおこれは一般の客室にもある設備なので、目新しさはありません。

ベッドも標準客室と共通だと思います。ふわふわとした感じというよりは、心地よく反発性があるという印象。しかしここで寝て、朝目が覚めたときに広がる東京のパノラマは、なかなかに見応えがあります。ベッドサイドにはBOSE MINIスピーカーなども置いてあります。

バスルームのアメニティが一味違います

この部屋のいちばんの特徴は、なんといっても独特の曲線を描くベッドルームですが、バスルームとの間は扉で仕切ることができます。なのでちょっとしたジュニアスイートのような趣もあるといえましょう。

バスルームの全体的な雰囲気は一般の客室とさほど違いありません。おしゃれな木製のベイシンや鏡が多用された立体的なインテリアコードはとても個性的です。また高級ホテルにありがちなラグジュアリーな雰囲気というよりはどこか落ち着いた印象を漂わせています。

円形の真っ白なバスタブが光る独立式のバスルームも一般客室と同じです。ハンドシャワーの他にレインシャワーも付いており、使い勝手は非常に良いです。さてアンダーズ東京の一般客室にのみ何度か宿泊された方であれば、この写真のどこかにちょっとした違和感を感じるかもしれません。

お気づきになられた方もいらっしゃるかもしれませんが、この部屋のバスアメニティは少し異なるものです。一般客室のアメニティも季節によって香りが変わるこのホテルオリジナルのものですが、こちらはフランスのコテバスティド(Cote Bastide)の「ARGAN」というブランドで揃えています。

香りは柑橘系の爽やかさにミルキーなニュアンスを感じさせる個性的なものです。なによりも特筆すべきは、洗い上がりが非常に滑らかに仕上がります。またこのシリーズのボティローションの保湿力も極めて高く、我々がこれまで泊まってきたホテルのアメニティの中でもトップレベルの優れたものだと思いました。

あまりにも気に入ったために、個別に購入したいと調べてみましたが、店頭はおろかネットでもまだあまり出回っていないようでした。しかしそうした上質かつ珍しいアメニティを揃えるあたりにこのホテルのこだわりを強く感じることができました。

石鹸とボディーローションも「ARGAN」です。タオルも表と裏で質感の異なるもので、このあたりのひとつひとつのアイテムに対するこだわりの高さもこのホテルの特徴といえましょう。

アンダーズ東京の滞在を満喫する

虎ノ門の景色もすっかり変わりました。このホテルにも何度足を運んだことでしょうか。

それでもこのデラックスルームからの景色が魅力的であり続けることに変わりありません。何度となく見たこの景色。あるときはひとりで眺めていた東京の景色。今日はパートナーと一緒に眺めます。ひとりで孤独に眺めていても、ふたりで呑気に眺めていても、いつもドラマティックに心に響いてきます。

客室・スパ専用のエレベーターで38階へ。降りるとこのような天井の高い洗練された空間が広がっています。アンダーズ東京の「AOスパ」です。その名の通り「青」がテーマカラーになっています。

スパのレセプションにはハーブが植えられていたり、果物が置かれていたり。こちらでスパトリートメントを受けるときは、テーブルの上にあるハーブや果物が大活躍します。

プールはテーマカラーである「青」のタイルが敷いてあり、きわめて洗練された雰囲気です。個人的に東京にあるハイアットの各ホテルはプールの作り込みがかなり上手だと思います。パークハイアット東京のクラブ・オン・ザ・パークや、グランドハイアット東京のNagomiなど、都会的なエッジの効いたデザインだと思います。

かつては丸の内や皇居前広場などが見渡せたのですが、いまは新しい虎ノ門のビルに直面するようになりました。流動する景色の早さにある意味とても東京を感じるかもしれません。

夜になって部屋の灯りを消すと、青い夏の東京の夜。遠くにはスカイツリーも見渡せて、眠らない街の様相は道路からビルからこの部屋に伝わってきます。しかしこの部屋はあくまでも静かで、まるで別の次元の世界にいるかのようです。何気ない話をしているうちに眠そうにしているパートナー。私もそろそろ寝ることにしましょう。

目が覚めて、遅めの朝食。以前は色とりどりの食材を楽しめるブッフェでしたが、withコロナのこの時期には、セットメニューでの提供。プレートと一緒にフレンチトーストやワッフルなどのスペシャリティも出してもらえます。アンダーズタヴァンの高い天井からは明るい光がこぼれて、東京でも屈指の空の近い朝のひとときを過ごせます。

同じレベルの新しいホテルが登場すると、どうしても設備面では劣ってしまうものです。かつてホテルオークラ本館に対する脅威として君臨したアンダーズ東京ですが、今度は周辺に続々と出来てきた新しいホテルに追い上げられる形となりました。とりわけマリオット系の「東京エディション虎ノ門」は、コンセプトも似ていることもあり、強力なライバルと言えるかもしれません。

こちらは「東京エディション虎ノ門」のロビーラウンジの様子。ざっと見た感じでは、エディション虎ノ門はアンダーズ東京の世界観と近いものがありました。しかし同時に、存在感が似通っているがゆえに見えてくる違いというものもあります。その違いは遽には明確な像を結びませんが、そのうちきっとはっきりとするのではないかと思います。

現状で私が直感的に感じているのは、エディションは「日本的なものを強く引きずったダイナミズムの表現」であるのに対して、アンダーズは「ダイナミズムの中に表現される日本的なもの」ということです。スタッフの雰囲気もそうした路線の延長線上にあるような気がします。それは日本から世界へと結びつこうという外への力(エディション)と、世界の中に日本を見つけ出そうという内への力(アンダーズ)という正反対の方向性を持っているようにも思えてきます。

またそのようなダイナミズムが交錯する場所がいまの東京であって、その先鋭な場所である虎ノ門といえるのかもしれません。アンダーズ東京に滞在しながら、その変わらないあたたかさの中で変わっていく景色や雰囲気を感じてみるとき、私たちは変動を続ける東京という都市の動きを強く感じるのかもしれません。

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