【2020年版】パークハイアット京都宿泊記・今年滞在した京都のホテルを振り返りながら、改めてこのホテルの魅力を語る

結局のところ、パークハイアットが好きだ。いまそういう思いを強くしています。今年になってから様々なホテルを訪ねてきました。京都だけに限って、少し時計の針を戻して振り返ってみましょう…

2月にパークハイアット京都に滞在したときは、ちょうど節分で、二念坂ハウスの開放的な眺めの中で、季節の変わり目をしみじみと思ったりしたものでした。このときスタッフ全体のサービスレベルの向上に驚き、このホテルの魅力を改めて発見したのでした。というのもここは開業直後はかなり混乱していて、ハード面は魅力的だけれど、致命的にソフト面が弱いと思わざるを得なかったので、その違いに驚き、じっくりとこのホテルの素晴らしさを味わうことができたのだと思います。

3月にひらまつ京都に滞在しました。このときは幸運にも私はファーストゲストになることができたのでした。完成したばかりのこのホテルの魅力や今後のビジョンについてスタッフが熱く語ってくれたことも思い出深いです。高台寺の方にある同じ「ひらまつ」系列のレストランで、フランス料理のフルコースディナーもひとりで堪能したのですが、ここでもスタッフが色々と話しかけてくれて、心に染みるあたたかさを感じたのでした。その後、こちらの割烹「いずみ」や高台寺のひらまつレストランにパートナーと再訪して、スタッフを交えて、ひらまつ京都の開業の日の思い出を語り合えたことも幸せでしたね。

次に京都を訪れたのは8月のこと。溶けるよう蒸し暑い日にチェックインしたのがエースホテル京都。軽やかで音楽的な楽しいホテルでした。自転車に乗ってみたり、ギターを弾いたり、メキシコ料理のディナーを食べたり…京都らしさを離れながら、やっぱり京都であるユニークな滞在をすることができました。客室もモダンながら、なんだかほっと落ち着ける雰囲気だったことも印象的ですね。じつはこのときも2泊していて、もう1泊はパークハイアット京都だったのですが、両者ともグローバルな雰囲気を備えている点で共通するものの、京都という世界観の中での打ち出し方がまったく対照的に思えたことも記憶に残っています。

9月にはSLH(Small Luxury Hotels)に登録されている、そわか(Sowaka)に滞在してみました。八坂神社のほぼ近くにあって、まったくの静寂を感じさせられ、老舗旅館のようでありながら、モダンラグジュアリーホテルの設備が備えられている。時間軸を超越した不思議な空間のホテルでした。スタッフのサービスもほっとさせられるものがあり、ふと「ただいま」と声が出てしまうような空気感がありました。

10月にはふたつのラグジュアリーホテルを訪れる幸運に恵まれました。ひとつめはマリオット系のラグジュアリーコレクションに数えられる翠嵐。人力車に乗ってチェックイン、夜の嵐山の散策、星空を眺める露天風呂…長閑な山の魅力と京都らしい上質な和風のくつろぎ、そこに加わる現代的なエッセンスの絶妙なバランスが、とても素晴らしいものでした。スタッフも良い意味で力が抜けていて、それも心地よく感じましたね。

10月に滞在したもうひとつのホテルがフォーシーズンズホテル京都でした。宿泊記には書いていないのですが、こちらも素敵なホテルでした。上品に全体がまとまっている感じがしたし、野趣ある積翠園の景観も面白かったのです。スタッフの一部からはややツンとした印象を受けるときもありましたが、それはおそらく東京にあるふたつのフォーシーズンズの気さくであたたかい対応が素晴らしく、そのイメージ故の期待の高さのせいで、相対的にそう思ったのかもしれません。それでもチェックアウトしたときには、じつに素敵なホテルだったという満ち足りた気持ちだったことは改めて述べておきたいところです。

さて、そのようにして、やってきた11月。紅葉の季節にまた京都のパークハイアットに泊まりにきたい…そのように思っていたこともあって、早い段階からこちらのホテルに予約を入れていたのでした。

様々な魅力あるホテルを巡ってきて、おそらく年内は最後の京都ステイ。こちらのホテルも開業から早1年となりましたが、すっかりサービス面も向上し、心からくつろげるホテルになったという思いを強めました。思い返せば、個人的にも社会的にも激動だった2020年ですが、京都での滞在は、パークハイアットに始まって、パークハイアットに終わることとなりそうです。

今回は改めて見出したこのホテルの魅力とステイの様子について語ってまいりたいと思います。

パークハイアット京都に泊まる

前日まで奈良に滞在していたのですが、レンタカーを借りて、そのまま京都に向かいました。途中で宇陀の山寺に立ち寄って、この季節ならではの鮮やかな山肌を眺めたりもしました。

ホテルに到着したのは昼過ぎくらい。そのまま客室に通してもらって、そこでチェックインの手続きに進みます。

今回の客室はパークスイート。建物の低層階に位置していて、ちょうど斜面側の客室であるために抜けるような眺望はまったくないのですが、庭がついていてなんとも落ち着く雰囲気があります。高い天井にフルハイトウインドウという外と中の境界線が曖昧になるようなダイナミックさは、この客室の魅力のひとつと言えるでしょう。ラグジュアリーホテルに庭付き客室は数あれど、これほどダイナミックに見える部屋にはいまだに出会ったことはありません。

ウエルカムドリンクにはルイナール、それから透明感のあるフィーバーツリーのジンジャエール。スパイシーナッツやシャインマスカットも用意してくれました。ガラス製のテーブルに庭の緑や赤色が反映して綺麗。今回はどんな滞在にしよう…なにもしないでホテルでくつろぐのもいいし、きまぐれに周辺を散歩するのもいい。ソファに横になって眺める空の色も淡青、ディナーまでは少し時間があるので、軽くランチを取ることにしました。

このホテルで軽い食事といえば、オールデイダイニングのKYOTO BISTROに行くということがまず思い浮かびます。しかしアフタヌーンティなどを出しているラウンジ「ザ・リビングルーム」でも軽食を取ることができます。

今回はランチボックスを頂くことにしました。

デミタスカップで提供されるアミューズに続いて、上品な2段重ねの弁当箱に洋風の料理が色鮮やかに詰め込まれています。チーズがふんだんに使われたガーデンサラダやいちじくのコンフィチュールを合わせたフォアグラのブリュレ…メインディッシュは肉か魚を選択できるようになっていますが、今回はトリュフと出汁をエスプーマ仕立てにした天使の海老。それぞれの品物が後味までしっかりと食材の美味しさを効かせた仕上がりとなっていて、分量もさほど多過ぎないため、今日のようなランチにはぴったりの内容でした。

さらにデザートには、ジャンドゥーヤに洋梨のコンポートとアイスクリームを乗せて。金色のティーカップにダージリンティを注いで香りを楽しみながら、甘美なひととき。ちなみにここのホテルは天井など随所に金色があしらわれているのですが、それがまったくギラギラした下品さを感じさせず、むしろ自然と空間に調和しているのです。このあたりのデザインセンスの高さにはいつもながらに驚かされます。

軽いランチを終えたら少し外に散策に出かけました。

本当は南禅寺などを訪ねてみようと思っていたのですが、人出も多かったので、避けて、あまり混雑していないようなマイナーな場所でさりげない紅葉を楽しみました。

日も短くなりましたね…あっという間に夜が訪れて、ディナーの時間。車を東山蹴上に走らせます。今回はウェスティン都ホテルの中に入っているフランス料理「ドミニク・ブシェ(Dominique Bouchet)」の鉄板焼き。村野藤吾の建築美を見に行きたい気持ちもありましたが、今回はひたすら食事のための来訪。

東京にある同フランス料理店にもいつか行ってみたいものですが、そのコンセプトの面白さから今回のディナーの場所に選びました。店の名前が掘られた上質な木の箸。こちらは持ち帰ることもできる(そのための清掃シートも用意されている)ようになっていました。

前菜のサーモンコンフィや京都産焼き野菜に続いて、メインディッシュを鉄板で焼いてくれます。和牛なども選択肢にあるのですが、個人的にとても嬉しかったのがシャラン鴨を選べることでした。パートナーと一緒に、和牛フィレとシャラン鴨をひとつずつ注文することにしました。甘みのある山葵やゲランド塩などでシンプルに素材を楽しむのもいいし、赤ワインソースやチミチュリをアクセントに加えてもいい…とにかくジューシーな肉を存分に味わうことができます。

京都の言葉で明るくもてなしてくれた年配の女性スタッフ。そして常連とおぼしき高齢の女性客ふたり。とてもテンポよくが話していて、その流れの中に我々も巻き込まれていき、ひとときの交流が生まれました。パートナーと私はやや当惑しつつも明るく楽しい食事のときを満喫したのでした。

パークハイアット京都に戻ってきたのは夜の21時少し前くらい。今日はちょっと夜の散歩に出かけます。場所はホテルの横の細い通りを渡って階段を上がったところにある高台寺。週末ともなればきっと多くの人で賑わうのだろうと思いますが、今宵は人もまばら。

高台寺の庭を歩いていると、ライトで照らし出された色とりどりの木々。池に反映してとても幻想的な雰囲気でしたが、自然の景色というよりも徹底的に人為的なのです。そもそも作庭も人の手によるものだし、照明も人の手によるもの。ここに植えられている木は自然のものですが、それを人の手によって、独特の世界へと作り上げている。夜の闇に光立つ、人の手によって際立たされた鮮やかな紅葉は、なんだか気分を高揚させるものに思えました。

しーんと静まり返った二年坂。パークハイアット京都に戻ってきました。夜道を歩いてほどよく疲れた体をお風呂で温めて、すっきりと柚子の香りのシャワーで流したら、ふわりとした寝心地のよいベッドに身を任せましょう。

翌朝少し早く目を覚ましたら朝食へ。芯から暖まるような玄米茶ではじまる「京大和」が提供する和朝食。普段は洋食を好む私でも、ここはやはり和食を選んでしまいます。だし巻き卵にしても、焼き魚にしても、あるいは豆腐やちりめんじゃこに至るまで、どれひとつとっても超一級の味であることに疑いありません。

この朝食だけをとっても、このパークハイアット京都に泊まる価値はあるといえるほどに素晴らしい。その徹底した味のこだわりは、炊き立てのごはんにも現れています。柔らかく甘みと粘り気を強く感じさせる一杯目、そしてわずかなおこげの香ばしさへと移ろっていく二杯目。小さいけれど明確な変化を楽しむ贅沢な朝食です。

ちなみに連泊する場合は、和朝食の内容が重ならないように、少なくとも3日分は異なるメニューがあるそうです。いつかまた来るときには、その異なるメニューもぜひ頂いてみたいものです。

朝食のあとは部屋に戻って少しゆっくりすることにしましょう。私はエスプレッソを、彼女はデカフェのコーヒーを…せっかくなので庭に出て頂くことにします。あたたかな日差しと爽やかな風が心地よく、しばし時間が経つことを忘れました。こんな穏やかな時間がずっと続いてくれたらいいのに…世の中のあらゆることは泡沫だ、それを知っていながらも、密やかにそんなことを願わずにいられません。

夕方くらいにチェックアウト。おそらく京都ステイも今年はこれが最後でしょう。思えば今年は本当によくこの街を訪れました…孤独なときも、絆を感じるときもありました。

来年、そしてその先にも、またこの場所に来て、美しい時間が過ごせることを祈る気持ちを乗せて、東京行きの新幹線は日暮れの街の光を遠くへ飛ばすように駆け抜けていきました。

 

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