【フォションホテル京都宿泊記2021】マカロンも魅力の華やかでかわいらしいピンクのホテル、開業日のリポート

フォションといえば、高級な紅茶やジャムのイメージ。個人的な思い出は、たしか、生まれてはじめて飲んだアップルティーの美味しさに感動したのがこのブランドとの出会いだったように思います。艶感のあるブラックに白抜きの文字、そしてアクセントのショッキングピンク。そのデザインを見るだけで美味しいお菓子や紅茶の甘美さに誘われるような気分になるのですが、その世界観のホテルが京都に開業となれば、泊まりに行かないわけにはいきません。

フォションホテル京都の開業日は2021年3月16日。はやる気持ちを抑えながら当日を迎え、ついにパートナーと一緒に訪ねてきました。開業前から注目を集めていたようで、私が予約しようとした段階では、部屋の選択肢はかなり限られていました。多少出費は大きいけれど、せっかくなので、このホテルのプレステージスイートを予約して、食事も含めてどっぷりとフォションの世界観に浸ることにすることにしました。

チェックイン

新幹線で京都駅に着くと、そのままタクシーに乗り込みます。開業当日ということもあって、タクシードライバーに「フォションホテルまでお願いします」と言っても伝わらず…そこでパートナーが機転を利かせて、「以前にサンルートホテルがあったところです」というと、「ああ、それならば!」と、すぐに分かってもらえました。10分少々でホテルまで到着。さっそくチェックインに向かいます。

通りに面したホテルのエントランスにはスタッフが待機しており、荷物を預かってもらって、そのまま中へ。

流動感ある木彫りの手すりの白い階段、そして開業日に飾られたピンクの花。見上げると、パステルブルーに桜の花が描かれた明るい天井…これまで京都の街並みを眺めていたはずなのに、ここはもうフォションの世界。甘すぎないキュートな空間が広がっていました。ピンクの蝶ネクタイをしたスタッフに促されてシャンパンゴールドのエレベーターで10階へ向かいます。

10階にはレストランの「グラン カフェ フォション」とフロントを兼ねたラウンジがあり、チェックインもここで行います。中央のテーブルにはピンクのマカロン。カーペットの色もソファやテーブルもブラック+ピンク。さりげなくインテリアとして和食器が置かれているところに、フランスと京都の出会いを感じさせられます。開業日だけあって、スタッフもやや忙しそうにしていましたが、大きな混乱もなくチェックインに進むことができました。

チェックインの手続きの途中で運ばれてきたのが、ほんのり甘い香りが印象深いフォションの紅茶とシグネチャースイーツのマカロン。味は淡い緑色のものがピスタチオで、白いものがバニラ。私はピスタチオを頂くことにしましたが、香ばしさのあとに、しっとりとした食感と優しい甘さが訪れます。

なおラウンジの奥の方はバーカウンターになっていました。4月以降にはバーとして正式に運用する予定になっているそうです。飾られているフォションのスパークリングワイン、そしてワイングラス。その下で今日は慌ただしく紅茶を用意するスタッフの人たち。今後このホテルがどのようになっていくのか楽しみでもあります。

マカロンと相性の良い紅茶を楽しみながら、パートナーとおしゃべりをしているうちに、部屋の準備が整ったとスタッフが伝えにきました。我々はさっそく部屋に向かうことにしました。

プレステージスイート

エレベーターの金色の扉にもFAUCHONの文字。ブランドロゴをここまで全面に打ち出すのは、自信の現れでしょうか。気ごちなさを残しつつも、笑顔で案内してくれたスタッフにエスコートされて、廊下を歩くと、各部屋の入り口にも桜のモティーフがあしらわれていて、さりげなく春の京都を連想させられました。今回滞在するプレステージスイートは角部屋なので、廊下を奥まで進みます。

扉を開くと、ゴールドとピンクのスタンディングミラー。右手にはウォークインクローゼットがあり、左手にベッドルーム。ホテルの客室としては長い廊下があり、それぞれバスルームとリビングルームにつながっていました。廊下の長さもまた、この部屋の世界観を盛り上げるものに思えます。なお柄が細くてピンクのアクセントがかわいらしい傘も用意されていました(…これはお土産に欲しかったのですが、将来的に販売する予定であるものの、いまはまだということで断念しました)。

廊下を進んでリビングルームに入ると、思わずふたりともわぁ…と、フォションの世界観に連れていかれる感覚を味わいました。真っ白な壁。コントラストを描くようなピアノブラック。そしてなによりもピンクの使い方が素晴らしいものです。どうしても甘くキュートな雰囲気が強く出てしまいそうなところに、ショッキングピンクやマゼンタが加わることで、どこかクールな雰囲気。

エントランスでも感じた「甘すぎないけれど、かわいらしい」というのは、この部屋にも共通して言えることだと思います。手前の箱には紅茶やコーヒー。

奥にあるピンクの大きな観音開きのボックスが、このホテルの特色のひとつである「グルメバー」です。淡いピンクの外観。中はブラック+ピンク。フォションを象徴するようなアイテムですね。

中にはチョコレートやクッキーやキャラメル…どれもホテル1階のショップで購入することもできますが、こうしたスイーツのすべてがコンプリメンタリーとなっていました。京都限定のフレーバーティーもあります。食べきれなくても、持ち帰り用に大きめの紙袋が用意されていたので問題ありません。

グルメバーの反対側にもテーブルとピンクのチェア、そして奥の方にライティングデスクとライトピンクの椅子が置かれたミニマルな書斎スペースがありました。このスペース、私はけっこう好きでした。ちなみにこちらのチェアですが、ピンクのツイードかと思いきや、じつは西陣織のようです。金と竹をイメージした壁面など、ところどころに京都らしいアイテムが使われているところも面白いところだと思います。

なお眺望については、東山ビューと謳われていましたが、さほどパノラミックな眺めではありませんでした。窓も大きなものではないし、高さもそれほどではないためだと思います。また書斎スペースの反対側はマンションビューのため、ピンクのブラインドが降りています。この部屋はレースカーテンを通して入る光で空間を楽しむ方がいいかもしれません。

煌びやかでキュートさが溢れるようなリビングルームに対して、ベッドルームはブラック中心のクールで落ち着いた雰囲気。しかしさりげなく窓際に置かれた桜色のソファにこのホテルらしさを感じます。デュべに目を凝らしてみると、フォションのデザインが入っていました。窓枠はクラシカルな白い格子。しかし先ほども書いたように、眺望は期待できないので、光の入ると格子がつくる影で雰囲気を楽しむのが良いと個人的には思います。

ベッドは大きさもしっかりとあって硬さも反発感が適度にあって快適でした。

プレステージスイートのウェットエリアには大きな黒い信楽焼のバスタブ。黒い竹の壁と相まって、日本的な落ち着きを感じます。トイレは独立していますが、ベイシンと一体型となっています。またシャワールームですが、最近のラグジュアリーホテルとしては珍しくレインシャワーはありません。

プレステージスイートであれば、ダブルシンクなのかな、と思っていたのですが、ひとつだけ。鏡は大きいのですが、ウェットエリア自体の設備面では特筆すべき点はないように思われます。ただし、ミラーやDysonドライヤーやヘアアイロンに至るまで、アイテムが淡いピンク色でかわいらしい。白い大理石。そしてシンボルのひとつ「ビズビズ」の形のソープディッシュなど、やはりここもフォションなのだと思わされます。

バスアメニティもフォションオリジナル。使用感は悪くありません。しかし個人的に意外だったのはその香り。甘さを感じさせる官能的な雰囲気を勝手に想像していたのですが、実際には、柑橘系のナチュラルな(ジュリークに似たような香りがあったような気がします)香りでした。

ホテルを歩いてみる。マカロンを買う。

部屋の持つピンクの魔力にすっかり魅了されてしまったふたりでしたが、せっかくなので、チェックインのときには慌ただしくて見られなかったホテルの姿を見学しに行くことにしました。

エレベーターを2階で降りると、エントランスホールの階段のダイナミックな模様が綺麗に見て取れます。桜吹雪のイメージでしょうか。奥の壁にも金色とピンクの桜。本当に煌びやかでかわいらしいホテルだと思います。ちなみに右手には「サロン・ド・テ」があり、アフタヌーンティーなどができるようになっています(この日は満席でした)。

また2階の「サロン・ド・テ」の奥には、フィットネスルームがありました。あくまでも必要最小限の設備しかないため、不足を感じる人もいるかもしれません。しかし、こんなに甘いものに溢れているこのホテルで、フィットネス設備ということの方が矛盾しているのかもしれませんね。

1階にはフランスのお店から直接輸入したフォションのスイーツや紅茶などを扱う「パティスリー&ブティック」があります。こちらは通りに面しており明るい雰囲気。白とピンクと黒。まさにこのブランドの色合いを体現したお店だと思います。スタッフいわく、パリから直輸入しているために、日本国内の他のフォションのお店では手に入らないものもいくつかあるようです。逆に他のお店にはあって、ここにはないものもあるそうです。

ここにはペストリーも色々と置いてありますが、やはりマカロンが最も人気なのではないでしょうか。様々なフレーバーのものが置いてあって、色鮮やかでした。チェックインのときに「本日のマカロン」が美味しかったので、すっかり気に入ってしまった我々は、ここでさらに購入して食べることにしました(しかも2回も!)。開業初日ということもあって、少し混雑していましたが、それほど待った気がしなかったのは、新しいホテルの雰囲気に目を奪われていたからでしょうか。

部屋に戻ってきて、買ってきたマカロンを食べることにしましょう。カードキーもおしゃれなデザイン。

パートナーが部屋に置いてあった紅茶を淹れてくれました。久々に飲むアップルティー。そして薔薇の香りのマカロン。東の空から直射日光は窓に入ってこないので、落ち着いた光の中で午後を過ごします。ゆっくりと部屋であれこれ話していたら、あっという間に予約しておいたディナーの時間。そろそろ10階に向かうことにしましょう。

グランカフェでディナーを

10階でエレベーターを降りるとすぐ右手にあるのが、このホテルのメインダイニングであるグランカフェです。

金色と鏡をモザイク状に組み合わせたメタリックなアプローチ。ブラックのスーツにピンクのネクタイのスタッフに案内されて店内へ。規模はそれほど広くありませんが、最上階ということもあり、大きな窓の向こうに開けた眺望が見られるようになっています。

このホテルらしくロゼのスパークリングワインを選択。夕暮れを迎えて段々と暗くなっていく夜の京都、東山。我々が席についた頃にはさほど混雑していなかったのですが、段々と人も増えてきました。

コースの最初に出てくるのは、スペシャリテのパテアンクルート。酢漬けにした京野菜の酸味と甘み。そしてサクサクの生地に包まれた鴨とフォアグラのパテのじんわりと広がる旨味が楽しめる一品です。スープに関しては正直なところ期待外れなものではありましたが、全体的には優しい味付けが特徴的で満足のいくものだったと思います。

特にそれを顕著に感じたのは魚料理でした。ハーブやペコロスの香りをうまく生かしながら、魚介類をスープ仕立てにしていて、野菜の味をしっかり感じながらも風味のやわらかさが損なわれていないのはさすがだと思わされました。なお淡い緑色の粒はタピオカ。その面白い食感が良いアクセントになっていました。メインディッシュの後には、パートナーと名物のスイーツとチーズをシェアして頂きました。

満足のいくディナーでした。しかしリピートするかといわれると、いまのところ、個人的には半々というところです。まだ混乱もあるし、未知の部分も多いのかもしれません。光るものも多々あったように思われます。いずれにしても今後に期待ですね。

フォションの世界に泊まる

すっかり満腹となった我々は部屋に戻り、ゆっくりと過ごすことにしました。

夜になると間接照明がピンクやマゼンタに彩られた部屋を照らし出し、少し妖艶さを感じさせるスタイリッシュな雰囲気になります。ソファに腰掛けながらスマートフォンをみると、ちょうど同じ日に開業した大阪のWホテルの話題で盛り上がっていました。きっとこのホテルの妖艶さとはまた違ったギラリとした煌びやかな雰囲気があるに違いない…いつか行ってみたい。本当に最近できる関西圏のホテルは面白そうなところがたくさんありますね。

ちなみに、この日、実は軽井沢にも新しい「ひらまつ」ホテルが開業していたのですが、同ホテルのファンとしては、これもいつか必ず行きたいものです。そんなことをパートナーと確かめ合っていました。

夜のベッドルーム。こちらも全体的に現代的でありながら、クラシカルで華やかな雰囲気がさらに強く出ています。ターンダウンに入ってもらったときに、かわいらしいパジャマも用意してありました。

パリと京都。

私はこのふたつの街はなんとなく相性がいいというか、似たような空気感を持っているような気がしています。今回のフォションホテルもこのふたつの古くて新しい都市の幸福な巡り合いを感じさせます。そういえば先日行った祇園のラデュレも同じく素敵な組み合わせだと感じました。

フォションホテルの夜は不思議。

ここが京都なのか、はたまたパリなのか。あるいはまったく知らない場所なのか…そんな感覚になります。

それほどまでにフォションというブランドの世界観が強く反映された空間を感じさせられるのです。新しいホテルに泊まることの昂奮のためか、あるいは、久々の遠出の旅行に浮かれていたのか、この日の夜はうまく寝付くことができませんでした。

そして早く目覚めた朝。東向きのリビングルームには、窓から朝日が差し込んで、ラブリーな空間に明るい光を投げかけていました。ピンクのグルメバーに光が乱反射する様子をソファでしばらくぼーっと眺めていました。帰りたくなくなるような非現実な朝。しかし、我に返り、身支度を整えてから朝食に向かうことにしましょう。

再び10階のグランカフェへ。とろとろのスクランブルエッグ。フレッシュオレンジジュースにフォションブレンドコーヒー。そして忘れてならないのは、充実したペストリーと特製のジャム。昨日の夜に見えていた深い青色の夜空はすっかり清々しい朝の淡青に変わっていました。パン・オ・ショコラとコーヒーを味わうときに、このホテルの朝食の素晴らしさを感じます。

スタッフが注文を忘れているなどの混乱も多少みられたものの、満たされた朝食でした。

朝食の最後に再びマカロン。ショッキングピンクの保冷ケースに入っています。コーヒーともよく合います。さて、そろそろ部屋に戻って、一息ついたらいよいよチェックアウトの時間です。

10階のラウンジでチェックアウト。タクシーを呼んでもらって次の目的地に向かいます。素晴らしい滞在でした。開業直後の混乱もあり、今後どのようになっていくのかは注目すべきところだと思いますが、少なくとも、このような世界観の強いホテルがまた新たに誕生したことは幸せなことだと思います。またその開業初日に立ち会えたことも幸運だったと思っています。

ピンクの花に彩られた華やかなエントランス…煌びやかな雰囲気のみならず、また帰ってきたいと思えるような安心感も併せ持つ素敵なホテルへと成長していくことを期待しながら、このホテルをあとにしました。

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