ふりかえったらほとんど1カ月が経っていた、というのが正直なところです。東京を離れることがなくなったとはいえ、ホテルに泊まるということが嫌いになったわけでもないし、こうしてブログに記事を書かないまでも好きなホテルにはときどき滞在する機会は何度もありました。パートナーと一緒によく泊まっていたのがグランドハイアット東京。グランドエグゼクティブスイート。扉を開くと花柄の大きなソファーが置いてあって、コンテンポラリーで落ち着くリビングルームが素敵なこの部屋。豪勢というよりも洒脱。これまでにも何度となく滞在してきた部屋ですが、東京のラグジュアリーホテルをいくつか巡ってみて、改めてその居心地の良さを確かめたという気がしています。
そうした滞在のひとつひとつを言葉にすることなく、ずっと放っておいたのは、私自身がそういう気分になれなかったためですが、ひとつの山を超えて、少し落ち着いた時間ができたので、ここのところの記憶を遡ってみたいと思います。
グランドエグゼクティブスイート
今年のはじめに緊急事態宣言が出されてからというもの、自分で運転していけるところ以外に行くのは止めようとパートナーと決めていました。遠出するよりも近場でゆったり過ごす。そういうときにやはり重宝するのが都心部にあるラグジュアリーホテル。色々と泊まってみたいホテルがないわけではないのですが、結局のところ、好きなハイアット系列のホテルに足を運ぶことが多かったのです。特に自宅からもほどよく近い六本木は、街の明るく華やかな雰囲気も手伝って、宿泊の候補になりやすいのでした。
グランドハイアット東京にはアップグレード対象となる「プレミアムスイート」がないということは知られている話かもしれませんが、スタンダードスイートはこちらの部屋が割り当てられます。最近の傾向なのか、ホテル全体としては空室が目立つものの、スイートルームは満室の日も多々あるとグランドクラブのスタッフが言っていました。
部屋に入ると開放的な二面の窓と特徴的な花柄の大型のソファ。バング&オルフセンのオーディオ設備なども設られており、高級感がありながらも、全体的な雰囲気としてはすっきりとしたコンテンポラリーといった感覚でしょうか。我々の泊まったリビングルームは南西に面しており、夜も明るい渋谷の街並みや新宿の高層ビル群が見渡せました。
ベッドルームはこのホテルの標準的な客室とも共通する雰囲気。窓側のオットマン付きの皮張りチェアでゆったりとテレビを見るのも楽しいものです。手前側がリビングルームになっており、左手にウェットエリアがあるという構造で、客室全体に回遊性があるところも使い勝手の良い点と言えましょう。写真には収めていませんが、ウェットエリアの全体的な構成はほぼスタンダードルームと同じです。シングルシンクのベイシンに、独立式のバスルームとトイレ。ただし空間的にはもちろん余裕があります。
最近のグランドハイアットステイから
いくつかの写真を手がかりとして、ここのところのグランドハイアットステイを振り返ってみます。感傷的なときもあれば、とても愉しいひとときもありました…
1月の終わりくらいのことだったでしょうか。無性に点心が食べたくなって、このホテルの中華料理「チャイナルーム」でランチをしました。コース料理やアラカルトで食べたいものを好きに注文するのもいいのですが、この日は「タッチオブハート」というオーダーブッフェでたらふく頂くことにしたのでした。ギラリとしたインテリアの中で、次々に運ばれてくる料理の数々。真鯛の刺身サラダからはじまり、私の好物の北京ダック。それからオーダーブッフェ形式で様々な点心を注文します。私は金華ハムのパイが好きなのですが、おそらく誰しもひとつは自分のお気に入りをメニューの中から見つけ出すでしょう。
1月の終わりくらいのグランドクラブ。この日は比較的空いていたのでした。都心のビルで10階ということは、必ずしも高層階を意味しませんが、ここもその例に漏れず圧倒的な眺望は期待できません。しかし開放的なフルハイトウインドウから陽の光が差し込む午後のひとときに、ここでお茶やペリエを飲むというのは、なんとも落ち着いていて、心が穏やかになるような気がします。お茶やペリエといいましたが、じつは私はここのオレンジジュースが好き。あと、最近は(特別感はないけれど)ライムを入れたトニックウォーターですね。
そうそう、グランドクラブといえば、やはりカクテルタイムは欠かせません。我々はときどきスキップしてしまうこともありますが、顔を出して、ちょっとお酒を楽しんだり、バーフード(といってもかなりの量がセットになって提供されます)を頂いたりします。さりげなく大好きなのがここのたこ焼きであり、ホテルのラウンジで頂くという、ちょっとしたアンバランスな感じがたまらなく良いものです。いや、おそらく、もっと美味しいたこ焼きは山の数ほどあるのでしょうけれど、なんとなく好きなのです。そういえば、以前ここにしばしばひとりステイをしていたときも、部屋でルームサービスが味気なくて、ちょうどよい程度の人の気配とこのたこ焼きを求めて、夕方にこのラウンジに来ていました。Nagomiのプールで泳いだ後などは、妙に美味しく感じるものです。
部屋から眺める夜の街並み。この時期はどういうわけか不安を抱えていて、とりわけ2月上旬から中旬にかけては落ち着かない日々でした。パートナーも困惑していたことでしょうし、私自身も、説明のうまく付けられない気持ちを外に出すことができずに、悶々とした毎日でした。私はそういう心模様の日には、あまり自然の豊かなところに出かけたくなく、むしろ、こういう都会の景色を眺めているのが好きなのです。誰しもが色々な悩みや苦労を抱えながら、ときにそれを表現したり、表現できなかったりしながら、毎日を生きている。そのダイナミズムに触れながら、なんだか自分も生きている。
悩んだりしながらも朝食は食べる。最近はフレンチキッチンでアラカルトで注文するメニューがお気に入りです。フレンチトーストは欠かせないもので、ブラウンシュガーがまぶされたさらさらした食感のあとに、ふわふわとした甘さが広がります。シロップをかけてみたり、ベリーを乗せてみたりして、ブラックコーヒーと合わせたときに、じつに幸福感のある目覚めのひとときを味わえます。それからアボカドトーストや抗酸化スムージーやエッグベネディクト。健康的にたくさん食べる。やはりホテルの朝食は好きです。
最近のグランドハイアット東京ステイを振り返るときに忘れてならないことのひとつは、Twitterで交流のあるMASAさんとこのホテルの和食「旬房」で会うことができたことです。パートナー共々大変豪勢な食事をご馳走になってしまって、恐縮しきり…しかしとても愉しい時間でした。このホテルが好きという共通項で様々なことを語り合える嬉しさもありますが、それよりもこの愉しさのわけは、おそらくMASAさんの人柄に依るところが多いように思います。特別何かを言うわけでもないのに、不思議と誰かを前向きに明るい気持ちにさせられるような力のある人。正確に表現できているかわからないのですが、少なくとも、私はそのことを強く感じたものでした。
たい焼きにバニラアイスクリームを合わせる。あるコミュニティにおいては、旬房の「MASAセット」として知られ、我々も触発されてオーダーしたことがありました。この日の夜はそのご本人とパートナーと3人で味わうことができて、とても嬉しかったものです。
この週に前後して、Twitterで交流があり、また以前にお会いしたことのある方(個人的にこの方もとても尊敬しています)にもばったり遭遇したこともありました。ホテルステイについてリポートしていて幸せなことは、なによりもまず、このように普段の生活ではおそらく出会わないであろう人たちと交流が持てることにあると思うのです。これまでに出会えたどの方もとても素敵な方たちで、つくづく私は幸せだと思います。そして交流を持ちながらもまだお会いしたことのない方にもいつか機会があれば会ってみたいし、未知の新しい出会いにも胸を踊らせているのです。
その日は晴れやかな1日でした。遠くに富士山も見渡せて。悶々とした日々のあとで、いまはなんだか晴れやかな気持ちです。グランドハイアット東京のグランドクラブやフィオレンティーナで、お互いの思いの丈や不安や不満に思っていることを語り合うのに、じっくり穏やかに付き合ってくれたパートナーに心から感謝しています。
今回のリポートは脈絡なく様々なときの記憶を切り取る形でしたが、こうして私の大好きなこのホテルで過ごす日々が重層化していって、より大切な場所へとなっていくように思うのです。そしてもっと遠い未来から振り返ったときに、果たして、そうした記憶がどのようなものとして映るのでしょうか。