ホテルのオークラ【桃花林】の細切りチャーシュー麺

シンプルなものほど難しいものです。

たとえばモーツァルトのピアノ曲なんかがそう。もちろん様々な難易度がありますが、簡単な曲であれば小学生でも弾けるようなものもありますし、ある程度練習すればそれなりにさまになるものです。しかし同じ曲をプロのピアニストが弾くとそこには歴然とした差がでます。同じ譜面を追っているようでいて、鍵盤を叩く抑揚や、呼吸の取り方ひとつでまったく違う仕上がりになります。

今日はそんなシンプルなメニューの話。

かつてのホテルオークラ本館には中華料理のお店がふたつありました。ひとつはコース料理も提供する桃花林(このお店はいまも別館に移って営業中)。そしてもうひとつが最上階にあったスターライトです。

 

スターライトはかつてバーラウンジだった名残からかどことなくムードのある席で、比較的カジュアルな飲茶を楽しめるお店でした。ここに最後に行ったのは数年前。私はそのときあまりお金に余裕がなかったのですが、ちょっとだけ質の高い中華を食べてみたいと思って足を運んだのでした。

当時の私には飲茶のコースはやや高くて手が出ない。そこでこの細切りチャーシュー麺を注文したのです。正直言って、注文したあとで、あぁなんでケチってこんなものにしたんだろう、今後こういうところに来るときはもっと豪勢になろう…と軽く後悔しました。

でもこのチャーシュー麺のスープを口に含んだ瞬間、その後悔はどこかへ吹き飛んでしまいました。シンプルなのになんという味わいの深さ!

甘みさえ感じられる魚介類からじわっとでる出汁、そして上品な醤油の香り…麺自体は淡白で味気なさを感じるくらいですが、むしろこのチャーシュー麺はスープが主役なのだなと思いました。

そして上に乗っている細切りのチャーシューがまた美味しい。ただただ味わいが広がっていく豚肉…そこにほんのりと八角の香りがする。

量的に空腹は十分に満たされないのかと思いきや、十分に味わいで満腹感を得ることができました。

 

レストラン「スターライト」はホテルオークラ旧本館の閉館と共に閉店してしまいました。しかしこのチャーシュー麺は、いまも別館の最上階で営業中の「桃花林」で食べることができます。

昼の飲茶ランチも美味しいし、久々に足を運びたくなってきました。

フォローお待ちしています