サンカラ屋久島宿泊記(sankara hotel&spa Yakushima)〜世界遺産の離島の心温まるホテルへの旅

ときには自然の豊かな島で自然とほとんど触れ合わない旅をしてみるのもいいものです。

大隅諸島で最大の島であり、ほぼ全域を森林に覆われた世界遺産・屋久島。ここでは九州最高峰の宮之浦岳を頂点として島の大きさに比して急峻な山々がそびえ、日本一を誇る圧倒的な雨量によって形成された森林には、有名な縄文杉を含む亜熱帯から亜寒帯に及ぶ多様な植物相が観察できます。

自然が好きな人にとっては魅力的な島に違いありませんが、私はそうした豊かな自然とは一定の距離を取りたいと考えるタイプの人間です。むしろ、ほどよくそうした自然の息吹を感じながら、どちらかといえば、人工的に整えられた空間で優雅な時間を過ごしたいものです。

ハイアットとも提携しているSmall luxury Hotels of the World(SLH)の一員であるSankara Hotel&Spa Yakushimaは、まさに私のような人間にとっては、絶好の都会からの逃避の場所と言えましょう。今回はこの魅力的な屋久島のホテルについてリポートしてまいりたいと思います。

サンカラへの旅

まずは東京から屋久島まで行くためには、様々な方法があると思います。新幹線でひたすら西へ南へと乗り続けて、鹿児島港から船で行くというのも魅力的ではあります。しかし今回は飛行機で。

春の訪れも程近い東京らしいやや黄みがかった空模様。屋久島空港までの直行便が出ているのは大阪伊丹、福岡、そして鹿児島です。ちなみに本数が最も多いのが鹿児島空港。慣れている大阪や福岡で乗り継ぐのもいいけれど、あまり行く機会のない鹿児島から向かう方が楽しいと思ったので、まずは鹿児島まで向かうことにしました。

鹿児島の空は東京よりもより青く感じました。ここは大都市部の空港のような賑やかさはないけれど、離島へのリージョナルフライトの拠点になっていて、独特の楽しさがあります。遠くにみえる荒々しい霧島連峰も旅情に彩りを加えるものです。

フライトの乗り継ぎには多少時間があったので、簡単に食事をしたり、ターミナル内を散歩したりしながら登場時間を待ちます。しばしばブォーというターボプロップ機特有の重たい音も聞こえます。呼び出しのあとでバスに乗ったら、コンパクトなATR機で屋久島までの短いフライトに出発です。

飛行機の窓からは左に都市に隣接する桜島、右に半島に突き出した開聞岳や海にそびえる薩摩硫黄島が見えます。鹿児島空港から見えた山々も含めて、このあたりの火山活動がきわめて活発だということがよくわかります。ときどき噴煙の上がる様子も見えて、短い時間ながらも非常に迫力のある景色を楽しめる遊覧飛行のようです。

いくつかの小さな島を通り過ぎて、徐々に高度を下げながら、緩やかな左旋回をすると、明らかに他の島とは異なる高い山が見えます。この異質な雰囲気のする島こそが屋久島。東側に見える平坦な種子島とのコントラストがまた印象的です。

飛行機を降りると、とてもコンパクトな屋久島空港。預け荷物の受け取りも、機会的なベルトコンベアではなくて、まるで宅配便の集配センターのように、手渡しで行われます。

手荷物を受け取ると、ホテルのプレートを持ったスタッフが待っていてくれました。にこやかで非常に感じの良い挨拶とともに車までエスコートされます。

乗車するとすぐに先ほどのスタッフから「屋久島縄文水」を渡されました。非常にやわらかな口当たりの水で、飛行機の乗り継ぎで乾燥した体が潤されていく感覚がします。ここからホテルまで約40分のドライブ。景色は海へ森へと次々に展開し、ときどき知覧茶の茶畑やタンカンの畑なども見えます。またドライバーの方がとても感じよく、気さくに色々と話をしてくるので、飽きることはありません。

鬱蒼と木の生い茂る狭い道を走り抜けると、いかにも上質なリゾートらしく整備された石造りの道が現れます。この先にサンカラのメインの建物があり、チェックインもそちらで行います。

チェックイン

サンカラのエントランスにたどり着くと、数多くのスタッフの方々が一列にずらりと並んで待っていてくれました。ちょっとした恐縮する気持ちとちょっとした優越感に浸りながら、ホテルのロビーを真っ直ぐに進んでいきます。

素敵なインフィニティプールの向こうに、抜けるような青空と海が交わる水平線。広い敷地を誇るサンカラでも特に開放感のある景色がここに展開します。爽やかにそよいでくる風からは、ほのかにしっとりとした森の木の香りが混ざっています。こんなに心地よい風に当たることができただけでも十分に価値があると思える瞬間です。

心地よい風を感じてすっかり気分がよくなった私は、そのまま海の見える方に歩いていき、この島の息吹を身近で感じようとしました。そして、ふと反対側を見渡してみると、ホテルの建物にすぐに迫るように高い山の連なりが見えます。亜熱帯の植物も亜寒帯の植物もどちらもあるという不思議な島。自分の足で確かめてはいないけれど、立っているだけで五感に訴えかけるものは十分にありました。

さてチェックインは室内でも行うことができますが、このプールサイドに座って行うこともできます。書類と一緒にウエルカムドリンクとして、タンカンとトニックウォーターを使った爽やかなモクテルを持ってきてくれました。またおしぼりにも南洋の花の香りがついていて癒されます。

ここのホテルのスタッフはみなさんとても丁寧かつ優しい笑顔。なんだかほっとする安心感をゲストに与えます。ホスピタリティの基本はこの安心感なのだと改めて気づかされる瞬間です。素晴らしい気持ちでチェックインの手続きを進めることができました。

ハイアット・SLHの特典

なおこちらのホテルをHyattから予約すると様々な特典もついてきます。

Hyatt+SLHの特典

  • 客室のアップグレード(空室次第)
  • ダイニング「ayana」での無料の夕食(6000円で「okas」にアップグレードも可能)
  • ダイニング「ayana」での無料の朝食(ブッフェ)
  • 空港までの無料送迎
  • 14:00までのレイトチェックアウト(空室次第)

通常のSLHの予約の場合、無料の朝食や客室アップグレード、レイトチェックアウトはついてきます。しかしこのホテルに特有なのは、空港までの無料送迎と夕食がついてくるところでしょう。夕食については、レストラン「ayana」でプリフィックススタイルのカジュアルフレンチを頂くことができます。また6000円の追加料金でファインダイニング「Okas」で、屋久島をはじめとした九州の食材を使ったフレンチのフルコースを堪能することができます。

レストラン「ayana」もよさそうでしたが、私はせっかくなので「Okas」に行くことにしました。

サンドラヴィラ(2階ターラ)

チェックインを終えたら早速客室に行くことにしましょう。

サンカラの客室は本館に位置するスイートと敷地内に点在するヴィラに分かれています。今回滞在したのはスタンダードタイプのヴィラである「サンドラヴィラ」でした。ちなみに1階と2階があり、もともとの予約は1階(ソーマ)の予定でしたが、ハイアット+SLH特典によって、2階(ターラ)にアップグレードされたのでした。

サンカラは本館からヴィラまでの移動をカートで行うことができます。もちろん徒歩でも移動できますが、敷地も広く、それなりに勾配もあるリゾートホテルを快適なカートに乗って動くことは、ひとつの楽しい体験だと思うのです。

夕方も近づいてきて、吹いていくる風も少しひんやりとした気持ち良さになってきました。快速で走るカートに揺られていると、ほどなくして今回滞在することになるヴィラに到着。エントランスは1階と2階で隔てられていて、プライバシー感は高くなっています。

リビング&ベッドルーム

階段を上がって、木製のやや重厚感のある扉を開きます。

ヴィラに入るとこのようにどこかアットホームな空間構成になっています。全体的にウッディな雰囲気が強く、ベージュのソファにブラウンのデイベッド、また少しエスニックなテーブルがセットされています。特定の地域性を打ち出しているというよりは「アジアモダン」という、地域性よりも、ある種の普遍性があるようなインテリアコード。

居住性としては不満はありませんが、個人的には、やや時代遅れというか、物足りなさを感じます。ここで「屋久島らしさ」を打ち出すということは難しいのかもしれませんが、これではアジアリゾートというエッセンスから無難な内容を抽出してきたような印象を与えます。せっかく魅力的なところがたくさんあるこの島にもっと親和的な雰囲気を演出することもあり得るのではないかと思いました。

もちろんこれはヴィラの建物自体がやや古い(もともとここは2002年に開業した「あかつき」というホテルだった)せいもあるのかもしれません。

ベッドもスプリング感のあるやや固めのもの。寝心地は特に悪くはありませんが、シングルベッドを2台くっつけただけなので、ラグジュアリー感にはやや乏しいと思います。またクッションなどの色合いは客室全体の雰囲気に適合していますが、こちらも洗練されているとは言えません。

左手には簡易的なビジネスデスク。使い勝手はさほど悪くありませんが、コンセントなどが少なく、あまり作業をするのには向かないように思います。また右手にはバルコニーがあります。

ここのバルコニーには籐の椅子とテーブルが置かれていて、いかにもリゾートらしい雰囲気です。眺望は目の前に広がる森だけなので、さきほどのようなパノラミックさはありません。しかし夜になるとここはなかなか素晴らしい場所になります。なぜなら、この雨の多い島で運よく快晴の日であれば、夜空に広がる満天の星を眺めることができるからです。

ただこの島らしく驟雨が降り注ぐ音を聞きながら、その様子を眺めているのもまたひとつの趣深い時間と言えるかもしれません。

さて客室全体については洗練やテーマ性に乏しいというような言い方をしましたが、それがこのヴィラの価値を下げるとまでは言えません。というのも、個人的に、この客室の最大の魅力はなんだかほっとする雰囲気を持っている(それはもちろん客室にとどまらず、ホテル全体も!)点にあると思うからです。靴を脱いでくつろいで…非日常を楽しむラグジュアリーホテルというよりは、自分の所有する別荘に戻ってきたような安心感があるのです。
屋久島の塩と蜂蜜でコーティングしたナッツやビーカーに入ったブレンドティ…そうしたひとつひとつ用意されたものに、このホテルらしい優しさを感じさせます。おそらくこういう感覚を得ることのできた最大の理由はチェックインをして、ヴィラに足を踏み入れるまでのあいだに、たくさんのスタッフの心温まる応接を受けたからなのだと思います。やはりホテルは「部屋よりも前にスタッフあり」なのです。
客室には冷蔵庫も置いてあり、100%のたんかんジュースに、かごしま知覧茶、アサヒビールに屋久島縄文水が用意されています。これらはすべてコンプリメンタリーとなっています。これもまた嬉しい点のひとつですね。

バスルーム

客室の奥の方にバスルーム。その手前側に巨大な除湿機がありますが、この島では常に雨が降っていて湿潤な気候であることを裏付けているようです。

大理石調でまとめられたウェットエリアです。ダブルシンクで使い勝手は文句なしに良いです。ただこれは極めて個人的な感覚だし、ヴィラの古さのせいもあるかと思いますが、ややこちらの雰囲気も前時代的な感じがします。奥の方に見えているのがシャワーブース。水圧は十分ですが、レインシャワーなどの最新の設備はなく、ややコンパクトなので使い勝手は可もなく不可もなくというところでしょうか。

タオルは必要十分な量が用意されていますが、水分の吸収性があまりよくありません。これは客室のみならず、スパでもそうだったのですが、ホテル全体のタオルの設定がそうなっているのか、あるいはこの島の気候がそうさせているのか、結局最後まで分からずじまいでした。

ベイシンエリアの奥の方にバスタブ。特に独立式というわけではないのですが、ある程度の奥行きがあるので、独立式のバスルームのように使うことはできます。窓は磨りガラスとなっていて外を眺めることはできません。こちらも全体的にやや古めかしく、可もなく不可もなくというバスルームかと思います。

バスアメニティにはこだわりを感じさせます。シャンプー、コンディショナー、ボディクレンザーにはタイのオーガニックブランドの「THANN」が用意されていました。ライムやレモングラスのエッセンシャルオイルが、いかにもオリエンタルな感覚を喚起させ、洗い上がりもしっとりと仕上がります。THANNのアメニティは湿度の高い場所にとても適合的な印象が個人的にはあり、この選択は非常にうまいと感じさせられました。

またバスアメニティ以外にも、バスソルトやボディミルク、洗顔料などもサンカラオリジナルのものが用意されています。シェーバーもかなり本格的なものが用意されており、このあたりの満足度は全体的に高いものだと思いました。

サンカラのゆうべを満喫する

本を読むのもいいし、音楽を聞くのもいい。ただただ昼寝をしてみるのもいい。あるいは誰かとここに来たのならば、リラックスしてなにげない話を延々とし続けてみてもいい。しかし私はただひとり。窓を開いて屋久島の風を客室に取り入れながら、少しだけ書き物を仕上げることにしました。

日が暮れてきたので窓を閉めて、外を散策。ところどころに置かれたライトの光が亜熱帯の植物を照らし出して、エキゾチックな雰囲気を醸し出していました。遠くに見える山の稜線がなにかしら並々ならぬものを感じさせます。この坂を登っていくとサンカラの本館があります。せっかくなのでもう少し歩くことにしましょう。

少し上がっていくと本館の建物の目立たないところにジムがありました。ゲストはおろかスタッフも特にいない寂しいジム。最小限の内容が取り揃えられていますが、おそらくしっかりとトレーニングを行いたい方には物足りなく感じられることでしょう。

もっともこの屋久島にいれば、例えば、同じ有酸素運動をするにしても、建物の外に出てしたほうが心地よいと感じられる可能性が高いのではないかと思います。

途中から階段を上がって誰もいないプールサイドに再び戻ってきました。昼のあの爽やかさとは打って変わって、間接照明が効果的に使われたムードある雰囲気。ホテルの向こうの山の彼方から冷たい神秘的な風が降りてきました。そう、このホテルの名前の意味は「天からの恵み」です。

ここはもう少し暖かくなったらきっとまた違う表情を見せるのでしょう。しかしいまこの風を感じられる時期に来ることができてよかった。そう思わずにはいられません。

「okas」のフルコースディナー

1階のフロント部分にいくと、驚くべきことに、チェックインのときに少し見かけただけのスタッフが私の名前を覚えていて、レストランまでエスコートしてくれました。情報の共有が行き届いているのか、空港からの送迎でさりげなく伝えた食事の要望も再確認してくれたのも嬉しいものでした。このホテルは非常にスモールラグジュアリーの利点がしっかりとホスピタリティの形に結実していると改めて感じられた瞬間でした。

さてファインダイニングの「okas」は本館の2階にあります。

カウンターの向こうにオープンキッチンが置かれていて、シェフやパティシエたちと会話をしながら料理を堪能することができるようになっています。鉄板焼きや寿司ではなくフレンチでこのようなスタイルというのもなかなか楽しいものですね。

ノンアルコールのゲストでも楽しめるようにモクテルや様々な種類のスパークリングウォーターも用意されていました。私は2月に収穫されたばかりのタンカンを使ったモクテルと、ソムリエに進めてもらったやや硬めの口当たりが特徴のミネラルウォーター「HILDON」をお願いしました。他にもミネラルウォーターには「屋久島の水」や私の好きなノルウェーの「VOSS」なども取り揃えられていて、感心させられるラインナップでした。

料理はローカルな食材を用いながら、その素朴な味わいの引き出し方を熟知しているということを納得させられる完成度の高さを誇っていると思われました。正統派の料理もありますが、意外性と面白さを全面に押し出したものも取り入れられていて飽きがこない内容となっています。

シェフ自らが料理の説明に来てくれますが、その他のスタッフも私がひとりで料理が仕上がるのを待つ間に色々と話しかけてきてくれて、孤独感を感じることもなく料理をいただけました。そのひとりひとりの気遣いがとても嬉しく、心満たされるディナーになったことは言うまでもありません。

その日の旬の食材を使ったメニュー。この日のメインは牛サーロインと小さな人参。じつはサーロインは私にとっては鬼門で、あまりにリッチな味わいだと重たくなってしまって、最終的にはげんなりしてしまうのです。しかしこちらのものは、思った以上にあっさりとした食感。ただスカスカに肉が柔らかいというのではなくて、実質のある噛みごたえを瞬間的に感じさせた直後にふわりと溶けていく。そして後に残るのはややミルキーとも思えるような、濃厚なビーフの余韻。分量が絶妙なため、大満足から胃に重たくなってしまうぎりぎりのところで終わるようになっているのも心憎いところです。

ソースはチェダーチーズがベースになっているややクリーミーなもの。ここにほどよく酸味とにんじんの甘みが加わっています。付け合わせのこんがり焼いた炭火の香りの人参のカリカリとしたリズミカルな食感も楽しく、ローズマリーによって上品に引き締められていくのもうまい。スパイスが配合された牛テールのラヴィオリがひとつだけ添えられていて、これもまたサーロインだけに意識が向けられてしまいそうなところを的確にカバーしていました。

セロリとライムという不思議な組み合わせのアヴァンデセールでメインディッシュに至るまでの重たさを解消させたら、シェフに変わってパティシエがこちらをもって登場。グランデセールにクリームパフ。それもクリームは淡雪のようにほどよくひんやりしていて柔らかいもの。ここに爽やかなたんかんとエスプレッソ味の白いアイスクリームを乗せながら頂きます。

クリームパフはトンカ豆で香り付けされていて、うっとりとする甘美な香り。ここに甘酸っぱさとほろ苦さが共存していることによって、最後まで味わいが変奏されていく感覚になります。非常に満足度も高くミニャルディーズとハーブティーをいただくことにはすっかり満腹。少し外を散策しながら部屋に戻ることにしました。

部屋に戻るとすでにターンダウンが終えてありました。リビングルームには落ち着く花の香りのナイトアロマが置かれていて、マッチを灯せばふわりと部屋中に香ります。

食事から少し時間を空けたら簡単なスパトリートメントを受けにいきました。こちらのスパのスタッフは非常に技術が高いのみならず、こちらを楽しくさせてくれる明るくて楽しい方達だったのが印象的。最初から最後までこのホテルのスタッフの方達のホスピタリティの高さを感じさせられました。しばしばリゾートホテルの夜をひとりで過ごすとある種の寂しさが付き添うことがあるのですが、ここに関しては、一切それを感じることがなかったのです。それはきっとここの人たちの優しい心遣いに触れたからなのだからだと改めて感じながら、とても穏やかな気持ちで就寝しました。

「ayana」の朝食と夜明けの光景

朝、目が覚めて、カーテンを開けると、木々の間から差し込む光。どんなホテルでも朝のこの瞬間は美しいものですが、屋久島という世界遺産の島で迎えるサンカラの朝もまた柔らかな気持ちと共にありました。少しだけ敷地を歩いてからすぐに朝食に向かいました。

朝食はこのホテルの1階にある「ayana」にてブッフェ形式で取ることができます。種類の多さは申し分なく、また郷土料理や地域の食材を取り入れたものも並べられているところも評価できる点です。朝の光が差し込んできて、窓の向こうにはプールサイド。そしてその向こうに屋久島の森と海が見渡せるという絶好の朝食の場所だといえましょう。

フレッシュオレンジジュース、また安納芋やエッグタルト、キビナゴの南蛮漬けなどを味わいます。料理の質は総じて高いものだと思います。

それからぜひ食べておきたいのがこちらの「鶏飯」と言われる郷土料理。鶏肉と一緒に錦糸卵や海苔、椎茸を乗せたご飯に鶏の出汁をかけて食べるもの。やや小粒なごはんが出汁のコクとうまく溶け合っており、さらにそれぞれの具材がさりげないけれど確かな主張をしてくるものです。

ほどなく食事を終えたら席を立って、フロントを挟んで反対側にあるラウンジにも行ってみましょう。

おそらく雨の日などはここでチェックインなども行っているのでしょう。朝早く行くと誰もいなかったので、ゆったりと窓際でくつろぐこともできました。あるいは奥の方にある本の中から適当なものを選んで読んでみてもいいかもしれません。奥にはちょっとしたドリンクカウンターが設けられていて、屋久島名産の焼酎やソフトドリンク、コーヒー・紅茶が自由に飲めるようになっていました。こうしたさりげない空間もこのホテルの魅力のひとつに数えられるでしょう。

チェックアウト

今回はフライトの都合上午前11時くらいにはチェックアウトしました。もちろんヴィラまではスタッフがカートで迎えにきてくれて、それから手続きを済ませて、空港(あるいは港)まで送ってくれます。往路同様に帰りもたくさんのスタッフがエントランスにずらりと並んで、手を振って見送ってくれました。

1カ月に35日は雨が降る、と言われるほど降水量の多い屋久島ですが、この日の朝も空は抜けるように青かったのです。快晴に恵まれて、森の香りで目覚めた朝。美味しくて楽しい食事。心休まるスタッフの方々の暖かいもてなし。インテリアや設備はやや古いけれども落ち着いて過ごすことのできる客室。これらの体験をもってして、このホテルに戻ってきたいと思わないはずはありません。

惜しむらくは東京からだとおそらく沖縄に行くよりも実質的に時間がかかってしまう屋久島。そのぶん気楽にふらりと来るのはちょっと大変ですが、その手間さえも楽しいものと思えるかもしれません。この短い滞在をそんなふうに振り返りつつ、帰路の飛行機の窓から大隅諸島の島々を眺めていました。

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