そういえば、むかし、石ノ森章太郎原作のHOTELというドラマがありました。「姉さん、事件です」という名言で括られる1話完結型のホテルのスタッフと客との交流がいつも楽しみだったし、OPやEDを含むBGMのセンスも良い作品だと私は思っています。その舞台になる「東京プラトン」のロケ地になっているのが、現在の「ヒルトン東京ベイ」です。
外観はともかくとしても、全体的な雰囲気はドラマの内容とは違い、隣接するディズニーリゾートへの観光客を意識したポップなものとなっています。
先日このホテルに1人で宿泊して、しかもなぜかとても賑やかな部屋に通されるというシュールな体験もしてきたので、今回はそのリポートをしてまいります。
外に広がる駐車場に車を停めてから、円形の紋様に青い照明が印象的なエントランスを通ってフロントに向かいます。私がホテルに着いたのは、ディズニーリゾートの閉園時間をはるかにすぎた深夜だったので、あまり人も多くはありませんでしたが、海外からの観光客とおぼしき人たちが数組、館内にあるコンビニエンスストアで買い物をしていました。
この雰囲気はどことなく成田空港周辺のホテルに似ています。しばらく前に成田空港のマイステイズに泊まったときのことを思い出しました。しかし今回はひとり。
どういうわけか、私の今年のヒルトン系列への宿泊は、深夜にチェックインすることが多いような気がします。先日のヒルトン東京お台場もそうだったし、コンラッド東京もそうでした。
チェックインを担当してくれたのはとても感じのよい方でした。ヒルトンはゴールド会員なのですが、今回は客室アップグレードは「できないことはない」とのことでした。不思議な言い回しなので、どういうことかと尋ねると、どうやらファミリー向けのかなり賑やかな部屋だということがわかりました。
なにはともあれ部屋を見てみないことにはわからないのでとりあえず見せてもらうことにしました。
そして案内されたのがこちらの部屋でした。
エレベーターホールを降りたあたりから、およそホテルの空間とは思えないような、不思議な世界観だったのですが、部屋の扉を開けてみてさらに驚いたのでした。
黄緑の壁!目がチカチカしそうなカーペット!そしてフクロウや鍵をイメージした、ワンダーランドを思わせるようなインテリアコード…とてもひとりで滞在するには賑やかすぎるというのが正直なところです。
メルヘンチックな森の中の、かわいらしい本棚と二段ベット、そして小さなかわいらしい赤い椅子に腰掛けてパソコンで仕事するあっぴ…などという、およそシュール以外の言葉を思いつかないような状況を想像しました。そしてベッドは合計で5つもあって、そこにひとりで寝るのか、と考えてみると、こんなに明るい部屋なのになぜか暗い気持ちになってしまいました。
そこで足早にこの部屋を後にすることにしたわけです。
ヒルトンルーム
フロントに連絡して、やはり通常の部屋にする旨を伝えると、ヒルトンルームに案内されました。このホテルの標準的な客室です。
ホテルの標準的な客室の雰囲気やインテリアコードをみて、なんだか落ち着いたように思います。おそらく家族連れで宿泊するなら先ほどの部屋でもよかったのかもしれませんが、やはりひとりでは厳しいものがあったのです。
さて、こちらのヒルトンルームですが、ベッドサイドに妙に無駄なスペースがあり、またベッド自体も小さくて、やや寝にくい印象を持ちました。おそらくこの部屋は人数に応じてフレキシブルにベッドを入れることができるようになっているのではないかと思います。おそらくこのベッド以外に2つはシングルベッドが入ると思いました。もともとこのホテルの場所柄、ファミリー利用が多いと予想されますので、こうした部屋のつくりには納得がいきます。ただしひとりで滞在するとなるとデッドスペースが多くて、あまり快適とはいえません。
テーブルもテレビも特に面白みがあるわけではないのですが、特徴をいえば、シンプル。それ以上でもそれ以下でもなく、ホテルの客室の必要条件を満たしているといっていいでしょう。
またバスルームも木目調の壁以外には特にこれといった特徴のない、シンプルなユニットバスです。アメニティもヒルトンの標準となっている「クラブツリー&イブリン」でした。
ホテルの1階のアトリウムは深夜はさすがに静かになりますが、朝になるとカップルや子ども連れの観光客で大賑わいになります。大規模なホテルであり、また開業からそれなりに時間が経っていますが、数多くの訪問客を迎えるマンモスホテルです。
個人的にはホテル自体としての魅力はさほど大きくないように思えますが、なぜか楽しげな雰囲気に溢れるホテルでもあると思いました。ホテルはもちろんスタッフやハード面でも成り立っているのですが、同時に利用する人々の雰囲気や想い、あこがれなどの様々なまなざしによっても成り立っているのだな、と改めて感じさせられた瞬間でした。