ホテルオークラ東京 ペントハウス宿泊記

目がさめると部屋には穏やかな朝日が差し込んできます。

カーテンを開けると窓の外には坪庭が。その向こうには再開発著しい虎ノ門の街並みが見えますが、この坪庭のおかげで不思議と別世界のような落ち着きを感じられます。このあたりの空間づかいの巧みさや日本をさりげなく感じさせる演出は、やはりホテルオークラなのだと感じます。

ベル・エポックのフレンチトーストの朝食

ホテルオークラといえば「美食」で有名でして、こちらのページでも何度かそのご紹介をしてきました。しかしこのホテルの中でも別格のレストランがペントハウスのひとつ下にあるフランス料理「ラ・ベル・エポック」です。その徹底した素材やソースへのこだわりをもって日本のフランス料理の水準を引き上げた小野正吉シェフがかつて率いた伝統のグランメゾン。

特にここのディナーで頂く「牛フィレ肉のウェリントン風」は筆舌に尽くしがたい最高の逸品です。またダブルコンソメやクレープシュゼットなどの伝統の料理などをラインナップに数え、まさに「ベル・エポック(美しき時代)」を感じさせる美食の体験が叶う場所です。

この「ラ・ベル・エポック」でも朝食を取ることができます。

大胆な花柄とピンクの絨毯が印象的な長い廊下を進んでいきます。このちょうど上がペントハウスになっていますが、ペントハウスとも雰囲気が異なります。こちらはより華やかな雰囲気。近年の高級ホテルのような洗練はないけれど、背筋が伸びるような心地よい緊張感と不思議な温かさがあります。

こちらでの朝食はブッフェではありません。朝食のコースかアラカルトでの注文です。

どっしりとした化粧皿と銀食器。背筋をまっすぐにのばして立つ燕尾服のギャルソンの慇懃な対応。Tシャツなどでは決して行きたくない折り目正しい雰囲気です。しかし冷たい雰囲気かというと決してそういうわけではなく、心地よい距離感で接してくださるのでリラックスできます。

香り高いコーヒーとしぼりたてのオレンジジュースに続いて運ばれてくるのが、スモークサーモンとパパイヤを使ったサラダ。素材もドレッシングもシンプルなのに、非常に複雑に美味しさが響きあうのです。塩気もまた過不足なくちょうど良い。シンプルなものほどそのレストランの実力が試されるものですが、その意味でもここは相当レベルが高いことを感じずにはいられません。

続いて朝食のメインを飾るフレンチトースト…こちらも伝統の逸品です。聞いたところによると前日からしっかりとミルクと卵に浸すことでスフレのような柔らかさを実現しているとのことです。

また私は塩気が欲しかったので、通常であればフルーツがつくところを、付け合わせにハーブソーセージをつけてもらいました。こちらがまた焼き加減が絶妙であり、香り高く癖のないものでした。

そしてフレンチトーストですが、外は香ばしく、さくさくしています。しかしナイフを入れるとふわっとしていて簡単に切れてしまう。そして口に運ぶとプリンのようにとろけていく。次にバターを切って乗せ、そこに特性のメイブルシロップを少々かける。それを口に運ぶとバターのコクとメイプルシロップの香りと甘みがフレンチトーストの香ばしさと柔らかい風味をさらに引き立てていきます。

優雅な朝食を終えたら少し外の風にあたりにいきましょう。さりげない空間ではありますが、このホテルの魅力を構成するのにかかせない通路です。


現在は2019年の「ヘリテージウイング」と「プレステージタワー」のオープンも秒読みとなっていますが、こうした流れのなかで、このホテルの古き良き魅力を伝える別館やペントハウスが今後どのようになっていくのかは注目すべきでしょう。私は個人的には今後とも現在の雰囲気のままで利活用してほしいと願ってやみません。

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