2015年に惜しまれつつ取り壊されたホテルオークラ東京の旧本館といえば、日本を感じさせる独特のロビーが有名でした。
私がホテルステイにはまったきっかけもこのホテルでの滞在でした。
梅の花に見立てたローテーブルと椅子。
ここに腰掛けてみるとなんとも優雅な気持ちになったものです。
しかしこのホテル魅力はもっと目につかない場所にもあったように思います。
こちらは正面玄関。ここのライトアップも特徴的でした。特に金色に輝く壁面のミステリアスな感じは他のホテルにはない表現でした。
しかしもっと目につかない場所が…
自動車でこのホテルに行くと駐車場の入り口付近にもうひとつの玄関がありました。こちらは宴会場に近い裏玄関のような場所でした。
近づいてみるとこのような感じ。無骨とも取れる手動式のステンレスとガラスの扉。しかしよくみてみると、藤の花形のシャンデリアや障子の内壁が見えてきます。
こうしたさりげない主張になんとも言えない心地よさを覚えました。
こちらは内側の様子です。木目の壁(ウッドウォールではなくこう呼びたい)と緑の絨毯が、良い意味で古さを醸し出していました。
正面玄関の華やかさではなくて、裏玄関の質素な魅力。その両面あって旧本館は東京のホテルでも特異な空間になっていたように思います。旧本館が取り壊されたいま、1960年代の建築様式を残した東京のホテルは、ニューオータニのザ・メインや東京プリンスホテル(どちらもリニューアルしましたが)などごくわずかとなりました。
来年の2019年には、ホテルオークラ東京の新本館も完成し、The Okura Tokyoとして新たなスタートを切る予定になっています。旧本館の意匠の一部はこの新本館に移され、有名なロビーラウンジも再現されるようです。
しかしこの裏玄関の雰囲気はおそらく忘れられていくでしょう。ひとりのホテルファンとしては、質素な魅力の同居したホテルオークラ旧本館に最後に泊まれたことは喜ばしいことです。そして新しい本館に泊まりつつ、ここの雰囲気を懐かしく思い出せる日を楽しみに待ちたいものです。