グランドハイアット福岡宿泊記〜そのポップな魅力について

ホテルはやはり立地している周辺地域の空気感や辿った歴史を取り込んで、その「ホテルらしさ」のようなものが生まれてくるような気がするものです。例えば、帝国ホテルに足を運んでみると、1970年代的なホテル建築の持つ味と同時に、日比谷という場所がもつ「堅さ」とか、ホテルのもつ歴史的な役割(それがいいか悪いは別として)から醸し出す雰囲気を味わえるような気がするものです。もちろんホテルのスタッフの印象や設備面の充実度やデザイン性の高さが第一には重要なのですが、そういう「その他」の面も見逃せないことだと個人的には思っています。

そういう意味で、グランドハイアット福岡は、キャナルシティという商業施設に隣接しているせいか、その雰囲気を色濃く感じるホテルになっているように思います。高級感は感じられるのだけれど、どことなくポップな趣を持っていて、それがここのホテルを唯一無二の存在としている気がします。同じく東京・六本木ヒルズに隣接しているグランドハイアット東京も、かなり「ヒルズ的な」色合いを感じさせるのに似ています。

今回は朝一番にこのホテルに到着。朝焼けの差し込むこのエントランスは、ややくすんだ原色のソファのポップさと、白い円柱とのコントラストが映えて、とても気持ちが明るくなる雰囲気です。

客室とラウンジについて

今回の客室は特にアップグレードはなく、グランドキングルームでした。

グランドハイアット福岡は、ハイアットのカテゴリー(1〜8)でいうと「4」に位置づけられており、価格帯も比較的良心的な場合が多い印象があります。最高級ホテルとはいえないし、同じくらいの位置づけを与えられているホテルブランドに比べても、やや古い印象を拭うことはできません。しかしベッドはハイアットらしい心地よい硬さがあり、快適で心地よく寝られるもの。ネスプレッソや大型テレビもしっかり完備されており、もちろんルームサービスやランドリーなどはフルサービスで提供されています。

窓の外にはキャナルシティのカラフルな建物が見えて(反面、シティビューというには残念な景色かもしれませんが)、高級感を感じさせながら、同時に気軽さや気楽さも感じられると思います。

グランドハイアット福岡の客室のベッドルームはなかなか快適だと思いますが、特にこれといった個性には乏しいように思います。しかしこのホテルの水回りはとても面白い。ベイシンは一面鏡貼りの壁に、透明なボウルが備え付けられており、部屋自体の広さはそれほどでもないはずですが、とても開放感を感じられるようになっています。またバスルームにテレビもしっかり設置されており、やはりこのあたりの充実はグランドハイアットらしいなと思わされるものです。

ちなみにWorld of Hyattのグローバリスト会員は特典で「グランドクラブラウンジ」にアクセスできます。もちろんクラブルームカテゴリーやスイートカテゴリーの宿泊客も。

こちらのラウンジはなかなか落ち着いていて雰囲気も良いです。難点を言えば、それほど広くはないので、繁忙期や朝食の時間帯などはややごみごみしてしまうところでしょうか。逆に混み合いさえしなければ、中庭の緑や水の表現をみながらゆったりと過ごすことができます。

グランドクラブラウンジから中庭に出ることもできます。客室についても感じたことですが、水回りの表現がとてもうまいホテルだと思います。ちょうどグランドクラブラウンジが水面に浮くような形となっていて、フルハイトの窓の透明感と一致して、とても綺麗な印象です。また同時に日本らしい雰囲気を感じとることもできるように思います。

そういえば以前ここのホテルで和室スイートにアップグレードしてもらうということがありました。和室スイートもグランドクラブラウンジと同じ階に位置しており、この中庭をうまく利用した、なかなか趣のある客室でした。そのときは、なんだかグランドハイアットという「いけいけ」のモダンラグジュアリーを連想させるホテルに宿泊しているはずなのに、ほっと落ち着く日本旅館に宿泊しているような錯覚を覚えたものでした。

雑感

今回のグランドハイアット福岡の滞在時間はそれほど長くはありませんでした。ほとんど寝るためだけと言っていいほど短かいものでした。しかし素敵なホテルでの滞在というのは時間の長さに関係なく、ある種の余韻を残すものだと思います。

グランドハイアット福岡の開業は1996年ですので、全体的な洗練度や各施設の快適さでは、どうしても劣るところも多くあります。しかしキャナルシティと一体的になって醸し出されるポップな雰囲気だったり、透明感のあるバスルームの楽しさだったり、そのような個性はいまもってしっかりと味わえるホテルだと思います。また私のチェックアウトが朝食提供時間よりも早いことを知ったグランドクラブラウンジのスタッフの方が親切にもブレックファストボックスを用意してくれたことなど、サービス面の満足度も高いと思いました。

日本全国の流れがそうであるように、福岡にも新しいホテル建設の波が押し寄せてきています。外資系ホテルの話題についても、「ゴールドパスポート」時代の修行の場として名高かった「ハイアットリージェンシー福岡」もクローズとなり、新しいブランドとしてオープンするようです。また超高級ホテル「リッツカールトン」も進出してくると言われています。

そうした中でもグランドハイアット福岡のポップな個性や良心的な価格などがしっかりと引き継がれていけばいいなと思います(現実には難しいと思いますが、プール・スパがGH東京のNagomiのような雰囲気になったらさらに良いのにと妄想したりもしますが)。

 

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