日本をベースにホテル修行をされている方にお会いすると、マリオット+SPG・ヒルトン・IHG・ハイアットのいわゆる4大外資系ホテルで修行をされている方が圧倒的に多い印象です。しかし日本ではどちらかというマイナーな立ち位置ですが、無視できないロイヤルティプログラムとしてアコーホテルズのLe club Accorhotelsがあります。
私はハイアットの最上級会員であるグローバリスト資格を保有していますが、今回はこれを基準としてアコーホテルズの上級会員資格とその取得手段について比較・検証してみたいと思います。ちなみにこの記事を書こうと思ったきっかけは、先日宿泊した【プルマン東京田町】が思った以上によかったので、そのホテルチェーンであるアコーホテルズのロイヤルティプログラムについても検討をしてみたいと思ったからです。
どのようなホテルがあるのか
アコーホテルズは本拠地をフランスに置く世界的なホテルチェーンのひとつで、そのネットワークはおおよそ世界100ヶ国3700軒にも登ります。ちなみに世界最大のホテルチェーンとなったマリオット+SPGは世界規模でおおよそ6700軒あり、私がメインで修行を行なっているハイアットは対照的に840軒程度ですから、その中間くらい。なかなかのネットワークの広さだといえましょう。
アコーホテルズのホテルブランド一例:
出典:https://www.accorhotels.com/ja/brands/index.shtml
アコーホテルズには29ものブランドがあります。
それなりに名の知れているものだけでも列挙してみると、高級ホテルだとラッフルズ・バンヤンツリー・フェアモント・ソフィテルなど。ミドルクラスホテルには、プルマン・メルキュール・スイスホテル・ノボテル。そしてバジェットクラスだとイビスといったホテルがこのアコーホテルズグループに入っています。
そのほかにもニューヨークのThe PlazaやロンドンのThe Savoyなどの伝説的なホテルもアコーホテルズの傘下に入っています。個人的にはアジア圏のクラシックホテルが入っているのもとても評価できる点だと思っており、かつて東洋一と謳われた屈指の名門であるラッフルズ・シンガポールやベトナム随一の最高級クラシックホテルとして名高いソフィテル・レジェンド・メトロポールなどは一度は宿泊してみたいものです。
もうひとつの特徴としては、フランス系のホテルグループということもあり、フランス国内およびヨーロッパに魅力的なホテルを数多く持つということが挙げられます。ハイアットやマリオット+SPGやヒルトンなどのロイヤルティプログラムを実施している主要なホテルチェーンが北米を中心に展開しているというのに対して、北米エリアはアコーホテルズのホテルのシェアのわずか20%にすぎないようです。
日本のアコーホテルズ
さて、このように数多いホテルのネットワークを持つアコーホテルズですが、日本での展開はどのようになっているのでしょうか。以下に一覧にしてみました。
<アッパーミドルクラスホテル>
- プルマン東京田町
- スイスホテル南海難波
<ミドルクラスホテル>
- メルキュールホテル札幌
- メルキュールホテル銀座東京
- メルキュールホテル横須賀
- ザ・サイプレス メルキュールホテル名古屋
- メルキュールホテル沖縄那覇
- ノボテル沖縄那覇
<バジェットホテル>
- イビススタイルズ札幌
- イビス東京新宿
- イビススタイルズ京都ステーション
- イビズスタイルズ大阪
- イビス大阪梅田
数えてみると日本には全部で13軒のアコーホテルズ系列のホテルがあります。正直なところアッパーミドルクラスホテル(=ハイアットでいうと、セントリックや一部ハイレベルのリージェンシーに相当)は、プルマン東京田町とスイスホテル南海難波の2軒くらいしかなく、どちらかというと日本では地味なグループという印象を拭えません。またこの数字はハイアットの12軒とほぼ同程度ですが、来年にはハイアットの新規開業+提携ホテル拡大で追い抜かされるでしょう。またマリオット+SPGの43軒はともかくとして、ヒルトンやIHG系列から見ても、かなり選択肢が少ないものです。
このあたりに同グループが日本のホテル修行の中でマイナーな立ち位置である理由もあるように思えます。
東南アジアまで行けばかなり魅力的なホテルも数多く、日本にも同系列のフラッグシップにあたるソフィテルや、フェアモント・ラッフルズといった最高級ランクのホテルがあれば、ブランドイメージも違うかと思いますが…
ここまでのまとめ
- アコーホテルズは29のブランドを大規模なホテルチェーン
- 日本での展開は13軒だけとかなり少ない
- ヨーロッパや東南アジアエリアに強い
ロイヤルティプログラム:Le Club Accorhotels とは
いよいよ今回の記事の本題に入ります。
アコーホテルズのロイヤルティプログラムはLe Club Accorhotelsといいます。このプログラムの上級会員になるためには、宿泊数を稼ぐか、一定金額分のポイントを稼ぐという2種類の選択肢があります。このあたりの柔軟さはハイアットのWorld of HyattやヒルトンのHilton HONORSに近いと思います。
ポイントはどのように貯めるのか
Le Club Accorhotelsのポイントには上級会員になるためのステータスポイントと、特典利用に使うことができるリワードポイントのふたつがあります。これらのうちステータスポイントは宿泊した場合につくポイントで、リワードポイントは提携施設での飲食や買い物などでも付与されるポイントです。つまりポイントを稼いで上級会員になるためには必ず宿泊しなければならないということになっています。
ステータスポイントの換算基準は10ユーロとなっており、ホテルブランドによって付与されるポイントが異なります。このあたりはアコーホテルズ独自のものなので、ちょっと注意が必要です。以下がその基準をまとめたものです。
ポイント数(10ユーロ毎) | ホテルブランド |
---|---|
25 | ラッフルズ・フェアモント・ソフィテルレジェンド・ソフィテル・リクソス・プルマン・Mギャラリー・スイスホテル・モーベンピック・グランドメルキュール・セベル・ノボテル・メルキュール |
12.5 | ママシェルター・イビス・イビススタイルズ |
10 | アダジオ |
5 | アダジオアクセス |
このようにみてみると、ミドルクラスホテル以上はすべて25ポイントがつくと考えていいでしょう。
日本にもあるイビスやイビススタイルズだと付与されるポイントが半分になります。もっとも宿泊単価が安い(¥10,000以下)ホテルでもあるので、宿泊日数で稼いで上級会員を目指す場合はこれらを優先的に利用していくという戦術も立てられるかもしれません。
上級会員になるためには
次に上級会員の種類ですが、次のような種類があります。
CLASSIC | 平会員 |
---|---|
SILVER | 10宿泊 or 800ユーロの利用 |
GOLD | 30宿泊 or 2,800ユーロの利用 |
PLATINUM | 60宿泊 or 5,600ユーロの利用 |
このようにして見てみると、基本的にその他のホテルロイヤルティプログラムと同じような体系になっていることがわかりますね。
宿泊数に関して、マリオット+SPGおよびハイアットと比べてみましょう。
アコーホテルズ | マリオット+SPG | ハイアット |
SILVER 10泊 | シルバーエリート 10泊 | ディスカバリスト 10泊 |
GOLD 30泊 | ゴールドエリート 25泊 | エクスプローリスト 30泊 |
PLATINUM 60泊 | プラチナエリート 50泊 | グローバリスト 60泊 |
マリオット+SPGの実質的な最上級会員であるプラチナプレミアエリートになるまでの宿泊数は75泊なので、とりあえず例外としますが、概ね最上級会員になるのは60泊ということでハイアットのグローバリストと同じ。そしてプラチナエリートよりは10泊多いと言うことで少しハードルが高めに思われるかもしれません。
しかしここで注目すべきはステータスポイント数で稼ぐという方法です。もう一度最上級会員になるまでのポイント獲得にどれくらいかかるのかを考えてみましょう。公式のページにも表記があるように、PLATINUM会員になるために必要なのは5,600ユーロとあります。これを本日のおおよそのレート(1ユーロ=¥128)で計算すると、¥716,800となります。この数字を大きいとみるか小さいとみるかは一概には言えませんが、修行という観点でみると、なかなか優秀といえるのではないでしょうか。
たとえばマリオット+SPG系列のホテルで平均して¥20,000くらいの宿泊を50回したら¥1,000,000になってしまいます。さらにハイアットのグローバリストにポイントの獲得でなろうとすると、最低でも¥2,000,000はかかることを覚悟しなければなりません。つまりハイアットのグローバリストよりも3分の1程度の投資で最上級会員になれてしまうわけです。
会員特典の比較
それでは最後に会員特典についてみてまいりましょう。ちなみに会員ランクが上がる場合には、もともとランクで得られていた特典にさらに付与されるサービス内容を書いています。
CLASSIC
- メンバー限定料金の利用
- 無料インターネットアクセス
- 市内通話無料
- フェアモントの施設内利用10%割引
→これといった特典はありませんが、フェアモントに宿泊する場合はちょっとだけ優遇されるという印象です。
SILVER
- プライオリティチェックイン
- レイトチェックアウト
- ウェルカムドリンク
- ターンダウンサービス
→この段階でレイトチェックアウトができます。ちなみにその他のホテルのように時間が明確に規定されていないため、ホテルごとの裁量に委ねられているようです。このあたりはマリオット+SPGやハイアットなどと似て非なる点ですね。ウェルカムドリンクはアコーホテルズ独自のサービスかと思いますが、ターンダウンサービスはその他のホテルでは、特に会員ランクなどに関係なく提供されている場合も多いため、これはさほどのアドバンテージを感じません。
GOLD
- ウェルカムアメニティ
- 客室アップグレード
→ウェルカムアメニティの具体的な内容が書かれていないので、ここもホテル毎の裁量に委ねられているようです。このあたりは実際に宿泊してみて確かめるほかないですね。また客室アップグレードに関しては、この段階から空室に応じてスイートを含む予約時よりひとつ上のカテゴリーの最良の部屋に割り当てられます(ラッフルズの場合はジュニアスイートまで)。これは他のホテルチェーンのロイヤルティプログラムであれば、最上級会員に付与される特典なので、かなりありがたい特典だといえましょう。
PLATINUM
- エグゼクティブラウンジへのアクセス
→驚くべきことにこれだけです。実にGOLD会員の倍にあたる宿泊数かポイント対象料金を払うわりには少ない特典の数と思われるかもしれません。しかしエグゼクティブラウンジでは朝食の提供も行われており、プルマンの場合のように朝食をその他のレストランに振り替えることもできるので、このあたりは評価できるところです。
LE CLUB ACCORHOTELSのPLATINUMカード
出典:https://www.accorhotels.com/leclub/cards-status-benefits/index.ja.shtml
またホテルブランドによってはミニバーのソフトドリンク無料特典やプレスサービス(プルマン東京田町にはこれらがありました)も行なっていました。このようにホテルごとの裁量に幅があるのもアコーホテルズの特徴といえるかもしれません。
なお比較的投資が少なく最上級会員になれると書きましたが、GOLD会員であれば2,800ユーロ、すなわち単純計算で¥358,400程度でなれてしまいます。こうなってくると、最上級会員ランクを獲得するのか、GOLD会員までで修行を終えて、残りはラウンジアクセスつきの部屋を取るのかを天秤にかけていくのが良いでしょう。
ここまでのまとめ
- 上級会員になるためのルートは宿泊数・ポイント獲得の2種類ある
- ポイント獲得の場合、かなり少ない投資で最上級会員になれる
- 会員特典はホテルごとの裁量に委ねられている点が多い
まとめ
このようにみてくると、アコーホテルズのロイヤルティプログラムであるル・クラブ・アコーホテルズ(Le Club Accorhotels)は、マリオット+SPGやヒルトンなどと比べると、日本におけるホテルの絶対数はかなり少ないのですが、東南アジアやヨーロッパ方面によく旅行される方であれば、かなり利用頻度も上がるはずです。また上級会員になるための投資額が相対的に低く、修行で得られる特典の恩恵を得られるスピードも早いのは、かなり修行をするうえでのアドバンテージだと思います。さらに宿泊日数かポイント獲得かという点を選んで旅行スタイルに合わせた修行が可能という自由度の高さもあるので、意外とホテル修行の初心者の方にもおすすめできます。