さあ、再びホテルに…

  • 2022年8月22日
  • 2023年10月21日
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名前を失ったままにホテルに泊まるというのは妙な感覚でした。厳密にいえば、本名はたしかにそこにあったのですが、私がホテルに泊まるとき、それはたしかに「あっぴ」としての経験であったように思うのです。諸々の事情でTwitterのアカウントを止めると宣言した数ヶ月前。それからというもの、私の宿泊体験は相対的に「閉じたもの」になっていました。しかしそうした諸々のことが解決し、改めて慣れ親しんだ愛着のあるこの名前をTwitterに復活させることにしました。

その「閉じたもの」のままでよかったのかもしれません。しかし私にとっては一度「開いた」宿泊体験の喜びはやはり忘れられないものでした。自分の好きなことやものを通して、誰かと交流が持てることは本当に素晴らしいことです。以前、孤独な趣味と思っていたホテルステイが多くの人と分かち合える幸せな趣味になっていた…そのように書きましたが、その想いはいまも強く感じています。この夜間飛行の見聞録で配信する記事を読んでくださる方の存在は私にとって大きく、また反響をいただくことで嬉しかったり、励まされたり、そうしたことが(いつも通り大袈裟ですが)生きる糧になっていたことは間違いありません。そんな状況を直接の契機として、また「あっぴ」の名前で配信を再開しようと思ったのです。

先日配信再開のツイートをしたところ、多くの方から「いいね!」とコメントを頂戴しました。ひとつひとつの「いいね!」はすべて拝見して嬉しい気持ちでいっぱいです。またあたたかいコメントのひとつひとつに涙を流しました。本当に私は幸せだと思っております。

ここで改めて皆様に感謝申し上げます。どうもありがとうございます。

今回はしばらく「閉じていた」時期に眺めていたいくつかの景色について綴ることにしましょう。よろしければもう少しお付き合いください。

その日私は急にひとりで考え事をしたくなって部屋を取ったのでした。5月。まだ外は涼しくて、連休明けの気だるさを抱えた人波に少し夏の気配を感じる丸の内。このホテルのドームサイドルームは本当に心地良い狭さでした…深夜でも早朝でも行き交う人がそこにはいて、他方で完全にプライベートな気分で過ごすクラシカルな空間。文豪に愛された部屋。このホテルを愛した内田百閒先生の「阿房列車」のごとく、「なんにも用事がないけれど、汽車に乗つて大阪へ行つて来ようと思ふ」の自由さに妙に惹かれていたのでした。

(5月・東京ステーションホテルにて)

仕事の用事で名古屋に1泊。スカイラウンジZenithから夜の雨を眺めていました。ここはいつ訪ねてもじつにグランドホテルらしい賑わいがあります。名古屋駅の濡れた鉄の鈍い光の上を走り抜ける鉄道の景色を眺めて眠り、翌朝とても早く目が覚め、なんとなくロビーまで降りてみると、驚くほどに静かだったことが妙に印象に残っています。なおこれはまったくの余談ですが、母がこのホテルのロビーの香りをいたく気に入っており、ディフューザーを実家の玄関に置いているので、なんだかこのホテルに来ると不思議とほっとする感覚になります。

(5月・名古屋マリオットアソシアホテルにて)

この日は少し早く夏を感じさせられる蒸し暑い日でした。横浜駅からタクシーに乗って、快晴の港を見渡す部屋にチェックイン。美しくも季節変わり特有の少し切ない気分。そんな午後でした。ちょうどハワイに旅する少し前のことで、ここの港から旅立った人たちのことを想像しながら海を見ていたのでした。歴史あるホテルに宿る時代を超えた人々の息吹。私はどれほど「いま」を生きているのか。夜には開港を記念する花火が空を彩っていました。

(6月・ホテルニューグランドにて)

初めての滞在こそパートナーと一緒に泊まったのですが、彼女と一緒ではなく、ひとりでの滞在や家族との滞在の方が回数が多いという、およそこのホテルの本来のコンセプトとは異なる泊まり方をしています。ミラーボールのようなペンダントライトの向こうに大阪の街並み。暑い昼を忘れるように流れていく御堂筋のカーライトを眺めていました。今度はあなたと。いまそう思うのです。もう夏はすぐそこまで来ていました。

(6月・W大阪にて)

灯篭に映える深緑のエントランスを抜けると、日本的な要素を随所に取り入れながらもダイナミックで開放的なデザインの部屋に。京都の夏のはじまり。雲が流れて淡く霞む山と太陽の交わる夕空。炎天下を歩いていて、あまりの暑さにふらりと立ち寄った喫茶店。かき氷を食べながら、ふと前にこの店を訪れたときの淡い記憶を思い出したのでした。ホテルに戻って「ハイアットタッチ」のスタッフに声をかけられて、なんだかほっとひと息。夏の終わりにまた来たい…そう漠然と思いました。

(6月・パークハイアット京都にて)

酷暑が続いていた7月下旬から8月上旬。とても慌ただしく過ごしていました。所用で京都や大阪と東京を往復することが何度かあり、なぜか急にこのホテルに泊まりたくなったのでした。客室から眺める都会の朝焼け。私がホテルで過ごす最も好きな景色です。昼も夜も賑わう屋外のプールにも早朝は誰も人がいなくて、ひととき涼しい水のなかで、蒸し暑さとラッシュの鬱陶しさを忘れました。チェックアウトを済ませ、現実に戻り、ホテルをあとにします。夏の盛りがそこにはありました。

(7月・ANAインターコンチネンタルホテル東京にて)

…ひとまずここで止めましょう。

居心地の良いホテルや、久しぶりに泊まって新しい魅力を発見したホテル、素敵な人たちとの出会い…ホテルステイについて語り出すと止まらなくなってしまいそうですが、続きはまたいずれ。

自分なりのスタイルでホテルや旅の魅力について綴って参りたいと思います。多忙で十分な時間を確保できなかったこともありますが、こちらのページに宿泊記を載せることも随分と減っておりました。また折に触れて宿泊記も書きたいと思います。

引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます。

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