おそらく多くの人はYESと答えるかもしれません。じつは私は去年狂ったようにホテルに泊まりに泊まって、いろいろなホテル修行を体験しました。判明したことは片っ端から泊まってみれば色々なホテルチェーンの最上級会員を1年で取り揃えることは可能だということです。参考までに私は2025年の1月の段階で、World of Hyatt グローバリスト、Marriott Bonvoyチタンエリート、IHGダイヤモンドアンバサダー、またこれに加えてヒルトンのカードを取得(これで決済でダイヤモンド会員になれる)しました。そのテクニックについてここで詳らかにするつもりはありませんが、想像していたよりも低予算で実現できたことも事実です。得られたものは、無料の朝食やラウンジアクセス、またレイトチェックアウトやアーリーチェックイン、また客室のアップグレードなど…それなりにホテルステイを充実させられる特典を得られたと思います。
規約として掲載されているそうした特典は似ているところも多いのですが、目に見えない部分で最も充実していると感じるのはハイアットとIHGですが、それは私の個人的な体験なので、人によっては違うと感じる方もいることでしょう。
ただ率直に思ったところを言えば、無料の朝食とは言っても、私はそんなにたくさんのものを食べられるわけではないし、だいたい朝のメニューは決まっているので、アラカルトで一品(フレンチトーストかパンケーキが多い)を食べられれば満足してしまうものです。またアラカルトがなくても、クロワッサンとかスコーンにコーヒーとかだけでも十分なのです。以前はレイトチェックアウトにありがたさを感じたこともありました。しかしマリオットやヒルトンを中心としてその特典が適用できない状況も増えてきました(特に国内のホテル)。そして客室に関しても、必ずしもスイートルームに泊まりたいわけではなく、ひとりで泊まるときなどはその広さを嫌って、むしろ狭めの部屋の方が快適とさえ思うことも少なくありません。
ホテル修行を特典を目安に行うこと不必要である。去年狂ったように泊まりまくってみた結果このように結論づけられそうです。
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(しかしですね…好きなホテルであればあるほど、色々な客室のタイプに泊まってみたくなって、そのときにスイートまでアップグレードの幅があるとそのぶん色々な可能性に開かれてくるという魅力はもちろんあるのです。ボトムの客室を予約しておいて、アップグレードがなかったとしてもそれはそれでよし。でもアップグレードされたとしたら「こんな部屋もあるんだ…!」という感動もあって、それもまたよし。そんな当日の朝にサプライズプレゼントの箱を開くような体験が待っているというのも魅力であるということは否定できません)
そもそも一休などのOTAを利用すれば、ホテルの正規価格(それがロイヤリティプログラムの上級会員資格獲得の要件になっている)に乗せられているエリート特典分を差し引いた価格で泊まれるようなケースも多々あります。しかしそれでは私はなぜ狂ったようにホテル修行をしていたのでしょうか。それは端的にいって、ホテルに泊まる「口実」を探していたように今となっては思うのです。なんだか奇妙な夢から覚めたような心地でそんなことをしみじみ思うのです。
いや、そんな「口実」なんて必要ないではないか、と思う方も多いでしょう。自分の用事でホテルに泊まるんだから、好きなタイミングで好きなように泊まればいいではないか、と。しかし私の場合は、ホテルに泊まる必要がないときでも、あと何泊すれば会員資格を獲得できるからもう少しがんばって泊まろう…というような心理が働いてやや無理してスケジュールを調整し、そのために仕事や日常的な用事の折り合いをつけて、ホテルステイのための時間を確保していたのです。それは少し荒っぽい自分の時間管理の方法であり、万事に対するモティベーション維持の機能を果たしていた、とも言えるかもしれません。自己管理が上手な方はこんな回りくどい方法を使う必要はないでしょう。しかし私はこうしてホテル修行が日常生活のペースメーカーになっていたのです。
ホテルがたくさんある地域では選択肢を縮減することもできます。どこかに泊まろうとしたときに、数多くのホテルがあるなかで、色々な要素を加味してホテル選びをするのは魅力的であると同時に面倒な作業でもあります。それがロイヤリティプログラムに即して選べば、ある程度の質が担保されているし、特典も受けられて、選択肢が少ないからあまり考えなくてすみます。例えば京都に泊まるとき、ハイアットに限定して考えれば、優雅な気分でホテルでくつろぐならパークハイアット、カジュアルに街中に出歩いて楽しむならハイアットプレイス、両方のバランスをとる(またはビジネス利用)ならハイアットリージェンシー…といった具合に選択肢を絞り込めます。ここに予算やポイント利用のメリットなどを加味すればあとは当日を迎えるだけです。
私はそんなわけで「修行」に邁進しました。しかし一年を経ていま思うことは、やはり私は修行に縛られていたのではないか、ということです。ホテルステイを「口実」としたペースメーカーのために、そしてまた複雑な選択肢を効率化するための手段として。もちろんホテル修行を「目的」にできる方もいることでしょう。とにかくホテルでさまざまな特典を得たい。そのステータス性に惹かれる。それはきわめてもっともな感覚だと私は思います。ただし私がホテルに求めているものとは違うように思いました。そこで今年は原点に帰りたいと思うのです。端的にそれは…なんとなく泊まりたくなった、という気持ちを大切にすることです。
旅行好きな方は首を傾げるかもしれません。当たり前ではないか、と。なんとなく旅に出たくなったから旅に出る。それ以上でもそれ以下でもないではないか、と。しかし私はホテルステイに対するそんな気持ちをどこか忘れていた気がするのです。上級会員資格を維持すること、それを口実とすること…あるいはポイントの還元率云々…どれも大切だけれど、私にとってそれほど大切ではないこと。だからこそ改めて…なんとなく泊まりたくなった!という気持ちに戻りたいと強く思ったのです。またそういうふうに思った瞬間になんだか色々なものから解放されたような気がしました。不思議なものですね。
私の体験は普遍化できませんし、ホテルの上級会員資格取得を考える方に有益とは思えないことですが、なんとなく私のホテルライフの現時点の想いとして書いておきたくなりました。さて、そんなわけで今年は思い立ったときにホテルに泊まろう(あるいは食事やお茶やスパなどに出かけよう)と思うのです。あ、でも、気に入っているホテルの上級会員資格は最低限維持したいと思っています。
せっかくだから今年になってから泊まった記憶に残る景色を振り返って、今回の記事を閉じることにしましょう。
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ホテル虎ノ門ヒルズ
ユニークな客室の照明の向こうに東京タワーが見える。このホテルは去年もっとも多く泊まったホテルであり、今年もたくさん泊まりたいと思っている大好きな場所。もしハイアットじゃなかったとしてもつい泊まりに行きたくなってしまう魅力があります。それは夜のきらきら輝くビルの光や朝焼けに照らされた虎ノ門の静けさであり、季節を感じながらすごす朝食の瞬間であり、そしてなにより、私の好みをしっかり覚えてくれていてあたたかくもてなしてくれるスタッフのホスピタリティであるのです。
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キャノピーbyヒルトン大阪梅田
部屋の冷蔵庫や色合いがかわいいなって思いましたが、ロビーの雰囲気やカフェやバーのユニークさなども面白かったのです。ヒルトンというと万人受けのホテルの強さという印象が強くありましたが、ここはいい意味で若々しいホスピタリティと全体的なデザインの面白さで、そうしたわたしの固定化されたヒルトン観を変えてくれました。
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ANAクラウンプラザホテル岡山
瀬戸内海からも遠くない岡山の街。交通の要衝である駅前にあるなにげないけれど私にとっては大切なホテルのひとつ。華やかさはないけれどついつい泊まりたくなってしまうのです。この季節の薄明の街並みは切ない美しさ。それをスクリーンのような横長の窓越しに見ているのが好きなのです。
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エースホテル京都
ここもまた何度泊まっても素晴らしい。古都という静けさを連想させる言葉からはほど遠い賑やかさが楽しく、また開放的な現代性が心地良いといつも思います。
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リッツカールトン京都
ダイナミックな景色や快適な客室はもちろんですが、感心したのはスタッフの対応。ここ最近私が泊まったリッツカールトンでは惹きつけられるようなあたたかいホスピタリティに触れられることが多くて、まさにリッツカールトンマジック。ピエール・エルメと京都の組み合わせの朝食の組み合わせも素晴らしい。チェックアウトした瞬間にまた来たくなる、そういうホテルですね。
さてこのあとじつは前々から渋谷を訪れるたびに気になっていた宮下公園にあるsequence MIYASHITA PARKにも泊まったのですが、その体験については、またいずれ。