【2021年版】ハイアットリージェンシー京都宿泊記・このホテルの過去と現在を振り返る

久々にハイアットリージェンシー京都に宿泊してきました。パークハイアット京都が開業してからというもの、軽い食事で訪ねたことはあったものの、滞在したのは久々でした。元を辿れば、私がハイアットの魅力に目覚めたホテルのひとつでもあり、よく京都周辺での仕事の折にひとりステイをしていた場所でもありました。

今回のホテルリポートは、過去の記事を振り返りつつ、再構成しながら、2021年現在のこのホテルについての想いなどに触れてみたいと思います。

(※したがって、記事の一部は現在のホテルの状況に対応しない部分があるかもしれません。その部分には注釈を入れておきますが、ご注意ください)

チェックイン

我々が京都に辿り着いたのは、陽もほとんど傾いたころ。京都駅八条口側のMKタクシー乗り場から、片道無料の送迎サービスを利用して、今日の滞在先であるハイアットリージェンシー京都に向かいました。

周辺の人通りがまばらだったのに加えて、いつもならもっとたくさんの人で賑わっているロビーも閑散としていました。もともとこの時期はさほど人が多くないのかもしれませんが、時節も反映しているのかもしれません。特徴的な木組みの天井に灯る間接照明がどこか物寂しく感じました。

チェックインのスタッフはてきぱきとしていました。ただなんとなく淡々としていて冷たいような印象(おそらくこれは完全に主観的な問題です)も受けました。

グローバリスト特典について

ハイアットリージェンシー京都のグローバリスト特典ですが、ハイアットの標準である16時までのレイトチェックアウトや客室アップグレードなどの基本的な特典がついてきます。ただし気をつけるべき点がいくつかあります。

まずこちらのホテルは、World of Hyattの特典である「スタンダードスイートへのアップグレード」の対象でありません。というより、スタンダードスイートがないホテルなのです。とはいえ以前に、運が良かったのか、ご厚意でスイートルームにアップグレードされたことはあります。こちらのホテルのスイートルームは檜風呂が備え付けられた優雅なバスルームや、和室形式のリビングルームが特徴的で、低層階のために抜けるような眺望はありませんが、中庭の枯山水をはじめとした京都らしい風情を感じさせる部屋でした。

それからこのホテルにはリージェンシークラブラウンジがありません。その代わりとして、館内のどのレストランやバーでも利用可能なワンドリンクサービスがあります。このホテルのレストランには以下のようなものがあります。

ハイアットリージェンシー京都のレストラン・バー

  • ザ・グリル(ステーキ&シーフードグリル)
  • トラットリア・セッテ(イタリア料理)
  • 東山(日本料理)
  • Touzanバー

グローバリスト特典のワンドリンクサービスは、これらのレストラン・バーで利用することができます。

今回は日本料理の「東山」で夕食を予約していたのですが、以前にひとりで滞在したときなどは、Touzanバーでホテルオリジナルのドリンクを堪能したこともありました。

デラックスバルコニールーム

スタッフにエスコートされて、今日の客室に向かいます。事前に「デラックスバルコニールーム」にアップグレードされたということを伝えられていましたが、このタイプの部屋に泊まるのは今回が初めてです。

エレベーターで最上階の5階までいき、扉を開くと、リビングとベッドスペースがしっかり確保された広い空間が目に入ります。ベッドサイドにはこのホテルらしい和服のタペストリーが配されていて、全体のアクセントになっています。インテリアはスーパーポテト+ハイアットという組み合わせにしては、控えめな雰囲気でしょうか。

この客室を最も特徴づけているのはウェットエリアではないかと思います。ダブルシンクのベイシンが使いやすいのですが、それ以上に特筆すべきは、ゆっくりくつろげる木製のバスタブとそこから眺める空模様でしょう。なおバスアメニティはおなじみのファーマコピア。ただし以前のシトラスの爽やかな香りから、最近の「リージェンシー」共通のより甘い香りのものに変更されていました。

ふと、ここで以前に滞在したスタンダードタイプの「ゲストルーム」のことを思い起こしました。少し時間を遡って、2019年の4月に滞在したときのことを振り返ってみましょう…

2019年のスタンダードルーム滞在について

(※この部分は2019年4月の記事を再構成した部分です。必ずしも現状に対応していない場合がありますので、ご承知おきください)

京都は日本を代表する観光都市のひとつであり、近年ではホテルラッシュに沸いている場所でもあります。外資系の高級ホテルに限定してみても、2014年の「リッツカールトン京都」のオープンを皮切りに、SPG系の「翠嵐ラグジュアリーコレクション京都」や「フォーシーズンズ京都」が続き、2019年冬にはついに「アマン京都」と「パークハイアット京都」が相次いで開業しました。こうした動きはいまもってとどまる所を知りません。

さてこうしたホテル競争の激化よりはるか以前から京都にあって、特異な個性を発揮してきたホテルが「ハイアットリージェンシー京都」です。こちらのホテルの開業は2006年ですから、もう10年以上経っていることになります。私自身はこのホテルに開業してまもなくの頃に宿泊しており、客室は狭いものの、独立したバスルームやシンプルでかっこいい和モダンなインテリアにすっかり魅了されたことを思い出します。

ハイアットリージェンシー東京なども手がけている「スーパーポテト」のデザインらしく、シンプルな中にもどこか洗練された賑やかさが込められているようなインテリアです。配置はホテルの客室の標準形で、あまり広さはありませんが、なかなか優れた個性的な客室だと個人的には思っています。

この客室の最大の特徴がこのベッドの奥にある「和服のタペストリー」でしょう。公式ページの紹介によれば、江戸時代から大正時代くらいの実物の着物の布を使っているようです。またベッドサイドや窓際にあるランプにも和紙が用いられており、非常にセンスの良い和モダンの空間になっています。

そもそもこちらのホテルの建物自体はやや古く1980年に竣工したものです。もともとは京都パークホテルでしたが、業績不振によるクローズとモルガン・スタンレーへの売却を経て、現在のハイアットリージェンシー京都へとリノベーションされたものです。建物の歴史としては東京のハイアットリージェンシー東京と同じだけの歩みをしてきたことになります。

しかしそうした古さをほとんど感じさせることのないインテリアコードはさすがだと思います。

テーブルはこのようになっています。大型テレビがどんと置いてあるのは、ハイアットリージェンシーの共通事項です。また奥の方が円形となっていて、ちょっとしたテーブルとしても使えるようになっています。またラップトップPCでの作業などにも堪えられるものです。

ネスプレッソもケトルもしっかり用意されています。このあたりは高級ホテルには欠かせない設備ですが、標準客室となる「ゲストルーム」であってもしっかりと押さえています。

手前に置いてあるカードはWorld of Hyattのサービス案内などが書かれています。こちらのホテルはハイアットリージェンシー箱根などと同じく「リゾート」に分類されていますが、このようなイラストタッチの案内などが置いてあると、ささやかですが、心が解れるような気がします。

入り口すぐのところにウェットエリアがあります。磨りガラスの向こう側が独立式のバスルームとなっており、シングルシンクではありますが、全体的な使い勝手は良好です。黒石調の床が和風の落ち着きを感じさせます。

深さもしっかりあるバスタブの快適性も高く、またレインシャワーなどはありませんが、水圧は十分にあり快適です。またゆったりとしたバスタイムには欠かせない木製の椅子がある点もポイント高いところです。

全体を通してみて、昨今の超高級外資系ホテルに見られるようなラグジュアリー感には乏しいのですが、シンプルで品の良いインテリアの中で、快適に過ごすことができる客室だと思います。ホテルステイを楽しむという観点からはやや物足りなさを感じることは否めませんが、ホテルでゆっくりと心地よく過ごしたいという要望には高い水準で応えることができると思います。

ホテル全体の印象について

ハイアットリージェンシー京都のオープンは2006年ですから、京都の外資系ホテルとしての存在感はすでに確立したものとなっていると言っていいでしょう。やや時を同じくするウェスティン都ホテル京都が誕生したのは2002年ですが、あちらは「都ホテル」としての歴史があり、やや毛色の違うものという印象です。

オープン当初は非常に洗練された空間に特徴付けられた斬新なホテルであったはずですが、近年、京都には数多くの最高級ホテルが次々にオープンしており、ハイアットリージェンシー京都のほど近くの場所にも「フォーシーズンズ京都」が開業しています。そうするとさすがにこうした設備もやや劣って見えてしまうものです。また実はこの滞在では、何度か、サービス水準について疑問を呈せざるをえないような場面に何度か出くわしました。

私個人としては、翠嵐がオープンしても、リッツカールトンがオープンしても、フォーシーズンズがオープンしても、変わらずこちらのハイアットリージェンシー京都に好んで宿泊してきましたが、これらのホテルの設備の豪華さや洗練された雰囲気に心惹かれるものを強く感じてきました。そして「パークハイアット京都」が開業したのです。

World of Hyattというプログラムがあるからこそ、私はこちらのホテルに泊まっているというのが正直なところです。もちらん悪いホテルではなく、それなりに魅力も高いのですが、単独のホテルとしての評価は、これら外資系の最高級ホテルには及ぶことはありません。また近年では価格面で同じくらいのホテルでも、ハイアットリージェンシー京都の存在価値を脅かすのに十分なホテルも増えてきているように思います。

パークハイアット京都の開業と共に、こちらのホテルへのリピートはほぼなくなったと思います。しかし価格帯も手頃なので、特にホテルステイそれ自体を重視しないような場合であれば、利用価値はあるかもしれません。あるいはパーソナルサービスの水準が全体的に特筆すべきほど高ければ、古くてもまたぜひ来たいと思えるのですが(その好例がホテルオークラ東京)、そこまでの魅力をいまのところは見出すことができませんでした。

やや辛口の評価となってしまいましたが、裏を返せば、それはハイアット系列のホテルの水準の高さへの信頼感が故なのかもしれません。もちろんミドルクラスホテルとしてのアドバンテージは数多くありますので、工夫次第では素敵なホテルとしての確固たる地位を築いていけるのかもしれません。以前のことですが、こちらのホテルでは川床でのディナープランとか、最近でも酵素浴プログラムとか、色々と面白いサービスやプランも提供していました。それらの魅力をもっと前面に打ち出して、磨きのかかったこのホテルの姿を見てみたい。そんなことを考えました。

2021年1月現在のハイアットリージェンシー京都について

…約2年前に滞在したときの印象はこのようなものでした。それからパークハイアット京都の開業があり、それ以外にも個性的なホテルの開業が相次ぎ、さらにハイアットリージェンシー京都がコロナ禍によってしばらく閉館していたこともあって、去年は結構な頻度で京都を訪ねていたけれど、以前に書いた通り、このホテルにリピートすることが全くありませんでした。

今回久々の滞在を通じて、当時の印象そのままの部分もあれば、新たに見出した魅力もありました。

客室タイプは異なりますが、程よく快適に過ごせるということは変わっていません。しかしどうしてもパークハイアットなどと比べてしまうと、全体の質は劣ってしまいます。もっとも価格帯が違うので単純に比較することは避けなければならないでしょう。それからサービス面について。チェックインのときに(主観的にですが)感じた冷たさは、その後の多くのスタッフの方によって完全に払拭させられました。そのあたりのことについても少し触れながら、いまのこのホテルについて考えてみます。

今回のディナーは和食の「東山」で頂くことにしました。予約をしておいたのですが、ほとんどすべてが空席。ここまで店内が閑散として静かなのは初めて見ました。以前はアラカルトもあったのですが、2021年1月現在はコース料理のみ。我々は日本酒の利き酒をしながら、丁寧に作られた一品一品を味わいました。

ちなみに利き酒は、このようなクイズ形式で楽しめるようになっていました。我々はかなりの確信を持って、これだ!という解答を用意したのですが、それらは見事にすべて外れました。不思議と笑みが溢れる瞬間でした。こういうさりげなく楽しめる演出、そして席についてくれたスタッフがとても丁寧であたたかい対応をしてくれたおかげもあって、静かな中でも、とてもリラックスした楽しい夕食となりました。

目が覚めて部屋のバルコニーから外を見渡すと、乾いた寒さを感じる冬の京都の綺麗な青空を眺められました。ちょうど京都国立博物館が正面にあり、また三十三間堂にも隣接している。京都駅からも近い。その立地の良さは改めて評価されていいでしょう。

以前はブッフェ形式でしたが、これも時節を反映して、セットメニューでの提供となっていました。フルーツの盛り合わせやサラダにエッグベネディクト、またアサイーボウルなども選べるようになっています。私はここの窯焼きのレッグハムが大好きでしたが、いまは提供されていません。それは残念ですが、代替のセットメニューは、良い意味で「ホテルらしくない軽さ」があり、十分な満足感を我々にもたらしてくれました。

今回はチェックアウトの前に、スパRIRAKUで鍼灸や指圧のトリートメントを受けてみました。そのようなメニューがあることも素晴らしいと思うのですが、価格帯もさほど高くないのも嬉しいところです。個人的には技術力も高いと感じました。

しばらくぶりのハイアットリージェンシー京都での滞在でしたが、スタンダードルームの快適性や立地の良さ、またサービス水準の向上も見られて、とても好ましい印象を持ちました。

静かなチェックアウト。

冷たい風を受けながらタクシーに乗り込むと、数年の若いスタッフが我々を見送りに外まで出てきてくれました。その姿に心からのエールを送りたくなりました。

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